プロローグ
人も獣も活動を終わり寝静まる夜。
空には灰色の薄い雲が広がり、隙間からは大きな満月が顔を覗かせ、淡い光で地上を照らす。
照らす先には半壊した巨大な協会が建っていた。
黒を中心とした色合い、長年放置されていたのか、壁には蔓が絡み合い、おどろおどろしい雰囲気を漂わせていた。
そこは、高い山々のあいだにある、鬱蒼とした木々が生い茂った、濃い霧が立ち込める森の中にあった。
教会の中、広々とした空間、ここを支えていたであろう太い柱が連なり、奥に見えるのは手を組み6枚の翼を生やしたどこか青年にも女性にもみえる石像と側で仕えるように跪いた2体の悪魔の像。
像の前には黒いローブを羽織り、顔まで隠した黒い集団が一つの幾何学模様の黒い光を放つ魔法陣を囲んでいた。
黒い集団は手を組み膝を地につけ何事かを一斉に唱えている。
どこかに潜んでいたのか柱の影の中から一人、音もなく出てくる。
そして、バッと手を上にかざし満月に向かって言い放つ。
「あぁ、神よ、我らの親愛なる神よ、準備は整った、汝の力で我らの願い叶えてくれ! 贄ならば用意した、きっと汝は満足してくれるであろう」
唯一見える目をギラギラと光らせ魔法陣の中を見る。
魔法陣の中に小柄な少女が横たわっていた。
薄緑色の髪を肩までのぼし斜めに切り揃えた前髪、少しつった目にマリンブルーの瞳、小さなぷっくりとした唇、汚れをしらないような純白の肌、少し控えめな胸。
きわめつけが少し長く尖った耳。
そんな少女が手足を縛られ気絶している。
少女の目からは一筋の涙が流れていた......。
過去の夢、そしてある人と出会う夢を見て―――