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G.S 星降る街の冒険者  作者: 柳雅
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プロローグ

更新はまったりになるかと思います。

プロローグ以外はだいたい6000-10000字を目安に投稿させていただきますので

無理をせず、空いた時間の片隅で

グランディアという世界を楽しんでください

☆星の降る夜☆



 空から幾千もの小さな光が降り注ぎ、辺りを青白い輝きで満たしていた。


 グラシア地方には四つの大きな地域に分けることが出来る。

 人の往来が多く、多くの街や村が発展している西部。

 グランディア大陸の北部を支配する大帝国に面するが、白狼山を始めとする嶮しい山脈が伸びているために人の寄り付かない北部。

 凹凸が少なく、見渡す限り一面に広がる平野の南部。

 最後に自分たちが入り込んでいる、人の腰ほどに育ちのび太草に身を隠しながらも、その不思議な光景を目にして呆然としている地域、そのほとんどを森林で埋め尽くす東部。


 人の背丈の何倍もの高さを持つ樹木が至る所に生えており、その幹から生えた枝が茂らす木の葉によって日中であっても光が届かないとされる南部の大森林。

 だが、目の前に映るのは、まるで神話に出てくる巨人が両の掌で地面ごと掬い上げたかのような異質な窪地。


 小さな町が一つ入ってしまうほどに広大な敷地には、周囲とは不釣り合いな植物が繁茂していた。

 星たちの光を吸収して淡い光を放つ首を曲げて頭を垂らした白い花に血よりも赤い雫を垂らす金色の果肉。風を受けて歌う様に葉を擦り、音を鳴らす色無き緑の絨毯。

 そして、その中心に身体を丸めながら横たわる白銀の毛皮を持つ一匹の巨狼。

 すでに陽が堕ちてから時間も経つが、そこはまるで日中のような明るさであった。


 空から降り注ぐ星々の輝きが、幻想的な花々を乗り付ける皿のような形をしている窪地に堕ちて地面に触れると小さく跳ね返り、数秒の点滅を繰り返した後にはスゥッと草花の中に吸い込まれているかのように消えていく。


 だが辺りが光で満ちている理由は、それだけではない。


 白銀の毛皮を持つ巨狼。白狼自体が淡い光を放っているのだ。

 魔法を行使する際に触れる魔力の輝きに似ている力を感じるが、意識することで腕の中に発生するそれが轟々と音を立てて燃え盛る炎の如き存在だとするならば、白狼から感じる物は静かな湖畔にゆっくりと広がっては陸にぶつかり消えていく波紋のような静けさであった。


 輝きは白狼の身体だけではなく、接している面から緩やかな波のように周囲を光によって染め上げている。目測では白狼の体長が五メートルほどあるのに対して、光の範囲はその三倍近くまで及んでいた。



 「ねぇ、ダグラス。あれはもしかして……」


 「シッ!……声をあげるな。まだ身を低くして待っていろ」



 背後から声をかける金髪の頭を試しに魔力を通わせてみた右腕で押さえつけると、小さな反発を感じた後に静かな呻き声と共に大人しくなった。

 背後にはもう一人、金髪の女性がいるのだが、そちらの方は自分の手を煩わせる事はなく、冒険者にとって模範的な対応を少し離れた場所で取っていた。



 「解るだろうが、あれは俺たちが敵うような相手じゃない。いや、人間という種族が決して敵対してはならない相手だ。奴がこの場所に留まっている理由は分からないが、物音を立てずに一晩様子を見て、それでも駄目ならば一度拠点に―」


 「よう、白銀狼さんよ!お休みのところ悪いんだが、一つお手合わせ願えないか?」



 声を潜めながら敵対しないという自分の発言を遮るかのように、聞きなれた声が窪地の中で反響する。


 余りの事にこれ以上もなく目を見開きながら、慌てて声の発生源へと視線を向けると、だいたい百メートルほど右前方に見知った男が自身の得物を肩に乗せながら不敵な笑みを浮かべているのが目に映る。


 その男の名前はゴウダ。

 強靭な身体をもつラガード族の中でもさらに発達した筋肉の鎧を纏う彼の姿は、たとえ離れていたとしても見間違えることはない。

 さらには彼を抑えようとベルトやズボンに手を回して後方へ引っ張ろうとする顔なじみ二人の姿とそれを憮然とした表情で傍観している一人の女性の姿まで見えてしまったのだから。



 「ふふっ。面白い人たちね?」


 「これを面白いと言える貴女の感性が私にはわかりませんがね……」



 いままで頼れる常識人の位置付けであった、金髪の大人の女性であるミアから投げ掛けられたけったいな言葉に身体の力が抜けるのを感じて俯きながら二つの掌で顔を覆う。


 どうして安全かつ確実に生きてきた自分がこのような、引くに引けない事態へと陥れられなければならないのか。

 一変して時刻に相応しい姿へと戻った真っ暗な視界の中でダグラスは事の発端である宿屋の一角で酒を酌み交わした日の事を目の前の現実から逃避するために思い出していた。





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