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52話 戦いの幕開け

 日は変わり、翌日。

 館の玄関には、今回の作戦に従事する人が集まっていた。

 特進クラス五人と一般クラス四十人、それにセリア先生を筆頭に先生が五人。

 これが今日の作戦に参加する全人数のようだ。

 理事長でもあるセリア先生が、教師を代表して皆に声をかける。


「一般クラスの皆さんは十人を一グループとしてチームを組んでもらい、教師が一人つく形になります。ただし、授業ではないので教師陣も皆さんのことを必要以上に守ったりは出来ません。それを胸に刻んでください。そして……必ず、無事に帰ってきてください」

「はいっ!」


 先生は皆の前での挨拶を終えると、わたしたちのところにやってきた。


「あなたたち五人は私についてきてもらいます。戦闘能力だけならあなたたちは他の教師陣を超えるくらいのものをもっていますから。それでも、生徒を一番危険なところに連れて行くのは気が引けるのですが……」

「お主の気持ちはわかっておるのじゃ。妾たちのことは一旦頭から外して、自分の安全のこともちぃっとは考えるのじゃぞ?」

「そうですわ。無事に帰ってきたら……たくさんいいこと、してあげますから。ね?」

「全力で頑張りますっ!」


 先生が今までで一番の張り切りを見せてる……。

 理由が不純すぎるけど、先生の方は心配なさそうだ。


「よーっし、わたしたちで原因の魔物を倒しちゃおー!」

「ついでにモンスタースポットもボクたちで全部壊しちゃおうか。確認できた限りでは五十個って話だから……うん、一人十個だね」

「そのくらいなら余裕ですわね。お茶の子さいさいですわ」

「眠りながらでもできるのじゃ」

「本当調子いいわねあんたたち。……でも、そういうの嫌いじゃないわ」


 わたしたちは顔を見合わせ笑いあう。

 武者震いみたいに身体が震えた。身体中に力が溢れてきている気がする。

 この五人に、先生もついてるんだ。とても負ける気がしない、そう思った。




 出発を目前にして、セリア先生が声を張り上げる。


「いいですか、皆さん! 洋館の外には魔物が蠢いています。魔力に誘われたその数はすでに数百を超えていると思われます。ここを突破するのが最初にして最大の関門かもしれません。……ですのでここはドカンと一発、各々の最大火力をお見舞いしてやりましょう!」


 それに数十人が応える。洋館全体が地鳴りのように打ち震えた。


 そして、扉は開け放たれる。

 それと同時に個々人が思い思いの魔法や剣を振るって行く。

 目の前には無数の魔物、それに臆している者は誰もいない。

 わたしも皆に負けてられないぞーっ!


 むぎゅぎゅぎゅぎゅっと魔力を凝縮し、蠢く魔物たちの中心目掛けて雷魔法を撃ち放つ。

 直撃した魔物たちは一瞬で影も形もなくなり、黒焦げの地面だけが残った。

 数百いた魔物はもう残り数十……わたしの一撃によって、形勢は容易く逆転してしまった。

 周囲がバッとわたしを振り返る。その視線に耐えきれず、わたしはポリポリと頬を掻く。


「あ、あはは……やりすぎちゃった?」

「いいえ、リューネさんは見事な働きをしてくれました! 皆さん、リューネさんに負けないように頑張りましょう!」


 入り口に開いた風穴から、皆が続々と外に出ていく。

 わたしたちも出遅れないよう、それに続いた。






 洋館を囲んでいた魔物たちの元を抜けると待っていたのは、またしても魔物たちだった。

 そこらじゅうにモンスタースポットがあるせいで、恒常的に魔物がわき出ている。

 倒しても倒しても、魔物の数が減らない。


「皆、怪我は大丈夫!?」


 わたしは皆に声をかける。

 戦闘音がそこかしこで聞こえるせいで、大声を出さないと意思の疎通が図れない。

 それもまた地味に体力を奪っていった。

 これ、思ってた以上にきついかも……!




 一時間後。


「よしっ……!」


 湧き出る魔物を道しるべにモンスタースポットの場所を特定し、フィラちゃんが破壊する。


「これで五個めだよね。……ふぅ」

「イヴさん、大丈夫ですか? 休憩をいれましょうか?」

「いや、どんどん行きましょう先生。休んでいる間に魔物に囲まれちゃいますよ」


 イヴは座り込むこともせず、すぐに歩き出す。

 一時間たって、少しは魔物が減ってきたように感じていた。

 モンスタースポットがいくつか破壊されたことで、生み出される魔物の量が減ってきたのだろう。多分ここからは少しずつ楽になっていくはずだ。

 しかし、まだ休む暇があるとはいいがたい状況だ。

 理由は簡単、わたしたちはまだ誰も足を踏み入れていないところを中心に進んでいるからだ。こっちは手負いなのに相手は万全の状態。

 さらに、ここでもしわたしたちが戦闘不可能な状態に追い込まれても、多分洋館からここまでは助けにこれないという心理的なストレスもある。

 わたしはその状況も含めて楽しめるからいいけど、先生以外とリズっち以外の皆は疲れが顔に出てきつつある。

 このままだとあんまり長時間は持たないかもしれない。

 そんなことを感じていた時だった。


「何じゃ、あれは……!」


 リズっちが右を向く。

 つられてそちらを見ると、そちらの方角には木々を超えるほどの体高をした大きな魔物がいた。

 それはどんどんとこちらに近づいてきている。


「もしかして、あれが主なの……?」

「そうじゃろうな……セリア」

「はい。皆さん、私に続いてください。――森の主を、討ち取りに行きます」


 先生の目が鋭くなる。

 魔法騎士、その本気の実力を出そうとしているように見えた。


「グルルルルルララララァァァッ!」


 木々をへし折り、森の主はこちらへやってくる。

 ついに対峙した森の主は、黒い体皮をした巨大な質量の塊だった。

 大きい、とにかく大きい。

 洋館と同じくらいの大きさと幅だ。そして洋館を超える高さと、その大きさはそれだけでわたしたちに威圧感を与える。

 一直線にこっちに来たのは、もしかしてわたしの魔力量に反応したからだろうか?

 ……なら、わたしも本気で迎え撃たなきゃね!


「先生、戦うんですよね!」

「はい、もちろんです! 皆さん、一か所に固まらず、各自散ってくださいっ!」


 先生の言う通りにバラバラになるわたしたち。

 森の主は身体に似合わぬ小さな瞳で、わたしたちが散開するのを見下ろしている。

 そしてやはりというべきか、その瞳が追うのはわたしの姿だった。


「森の主までわたしにメロメロだなんて、困っちゃうなぁもう!」


 わたしはそんなことを口走りながら、魔力を解放する。

 こんな建物みたいな魔物相手に、もちろん手加減はなしだ。

 魔力をむぎゅぎゅっと集めて、さらにぬぬぬ~っと固める。


「グルルルルルゥゥゥゥッッ!」

「やぁぁぁっ!」


 森の主が咆哮と共に放った風魔法とわたしの風魔法がぶつかり合う。

 今この瞬間、森の主とわたしたちの戦いが幕を開けた。

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