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小説つくーる 〜練習帖なり〜  作者: こさじ
序章 【屁理屈】
1/12

どこまで書けばいいっての?



 私の前に現れた錆びた赤茶のトタン屋根の木造家屋の、その影から顔を覗かせた黒猫は、いやに人懐っこく、私の足にひょろりとした身体を擦り寄せた。別段、好きでもないが嫌いでもないので、右手を猫の腹にさし入れ、意外にもふわふわな腹毛をひと撫でして抱き上げてみれば、黒猫は、みゃあ、と鳴いて目を閉じ、大して居心地もよくない腕に身を委ねた。もう少し先に出会っていれば……と思うも、本当に人馴れしている姿に首を傾げた。どこかで飼われているのかと見渡したところで、ここは十年も前に廃れた農村。人の気配もなく、近隣に別の村があるわけでもなく、猫を捨てるにしても忘れ去られた場所まで二ヶ月も雨風にうたれて来るような酔狂な人間もいないだろうに。それならば、道中いくつでも見当たりそうなものだ。

 しかし、のどを鳴らし、見ず知らずの人間に甘える姿はどうだろう?

 私は、もしかしたらと辺りを歩き回ることにした。

 ザリザリと、人の棲家の残りカスと砂利は耳障りな音でしかなく、十年前の出来事を知っているせいか進むに連れて苦いものが込み上げて来る。

「……無惨なものだ」

 つい出た呟きは、またも吹き始めた風に掻き消された。見上げれば空には呼び覚まされた黒雲が手を伸ばそうとしている。ここ――ファニファン地方の天候は常に不機嫌だとはよく聞くことだが、それにしては酷すぎる。特に、村へ近付けば近付くほどに雨着が弾くのも許さず、「もう一歩も進めん!」と丘の天辺まで来たところで嘘のようにカラッと晴れた。

 だから、村から一歩出た今、ポツリポツリと頬が濡れていくのに確証を得た。

 村はまだ呪われているのだ――

「ああ、タンダ、君の言う通りだったよ」

 さすがに毛が濡れたからか目を開けた猫を無意識にひっしと抱き締め、私は遠い地にいる妻へ告げた。


     ✠


 村の名は、オートムといった。

 肥沃なファニファンの大地の恵みを受け、簡単に訪れることは出来ないが、オートムで作られる果実酒はそれはもう見事だ――と言う他にはないぐらいに美味いものだった。貴族の末端に位置する私が口をつけることが出来たのも奇跡以上であり、その天上の味を確かめられたのは妻のタンダのお陰だった。

 妻は、私には勿体ない人間だ。強力な力を持ち、稀代の魔導師と呼ばれ、幾多の戦を勝利へと導いた戦士だった。

 そんな彼女が領地も持たない貴族の端くれの私の元へ嫁いでくれたのだから、当時の私は常に夢見心地だった。

「あら、ルンったら、よだれのお世話はもう少し後ではなくて?わたくしの好いたお顔が痛ましくってよ」


 ◆◆◆◆◆


 どうも、こさじです。

 これだ――!という書きたいものもなく、でも何か書きたいという想いがよみがえり、しかし、どうせ完結出来ないだろうと諦めの気持ちがありながら、それでも「何か書こう!じゃあ、考えながらやっていこう!」と自分自身の覚え書きのようなものを始めたのであります。

 なら、投稿せずに執筆中小説にでも溜めておけって話なのですが、まあまあ。「そこは投稿の自由ですので( ´∀`)」と言っておく。


 さて、本題に入りまして、どこへ着地したいのか、どんなものを書きたいのか、これこそ見切り発車…いやいや勝手に発車しちゃった物語を書き始めたかというと、とある方のエッセイを読んだからなのです。

 詳しい内容などは伏せますが、ちょっと違うんじゃないの?と否定的な感想を抱いたのですが、「じゃあ自分ならどうだ?」と考えたときに冒頭の言葉が浮かびました。描写ってどこまで詳しく、また、どこまで読者にさらけ出さなければいけないのか?物語の中からうまれる”読者の想像“って、“作者が空気読んで欲しい…て思うこと”ってなんだろうか?と考えたら、登場人物の見たものはどれだけ事細かに書かなければいけないのでしょうか……?


 ということで、【錆びた赤茶のトタン屋根の木造家屋】を書いたわけであります。正直いいますと、これが充分であるのかないのかわからない……【錆びた赤茶の】も【錆びた赤茶色の】にしたらいいのかどうなのかもわかりません。

 ちなみに、まだまだ楽しさを抱いていた頃の私なら【朽ちた家】とか【廃屋】とかで済まそうとしていたでしょう。

 しかし、じゃああれで、前よりも肉付けしたものが充分であるかがわからないのです。【錆びた赤茶のトタン屋根の木造平屋】にでもしたらいいのか――


 次いで、【右手を猫の腹にさし入れ】なのですが、【右手】はいるのか?何手かって必要か?【手を猫の腹にさし入れ】じゃおかしいのか?主人公の利き手がどちらかわかるけれども、利き手がどちらかなんて物語の内容にどれだけ影響及ぼすの!?…まあ、手が後々重要になる話なら別として。

 ……どっちでもいいじゃん。その読んでいる人の利き手でいいじゃん?この際両手でもいいよ、どうせ抱っこするんだから……て不貞腐れる自分がいる。

 だって、そうしたら、主人公が歩き出した――て書いたらその足は何足なの?何足から踏み出したの?って話。


 文章、小説の中に書くものは無駄なものってあると思う。でも、何が無駄で何が必要なのかわからない。何足からかなんて、“主人公が何故歩き出したか”の理由以上に大事なものではないってことはわかる。喜怒哀楽の心理描写、情景描写を作者は読者に与えたいもので、左足か右足かで天国か地獄かということはそういう設定でもない限り【平屋】共々、別に読者の想像任せでいいんじゃないだろうか。

 そして、作者の脳内世界の情報を事細かに並べ立て綴るよりも、場面場面の事柄に絡めて私は書きたい……



次はもうちょっと考える。

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