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8話…埋葬

 死体を片付ける作業は、夜にかかるまで続いた。


 イヴを助け出したのが、日が傾き始めたくらいのまだ明るい時間帯だったが、人の身を燃やし尽くすための燃料集めと、埋葬するための深さと幅のある縦穴を掘り終えた時点で、既に日は暮れかけていた。燃料の一部にはシンラたちの乗ってきたバイクのガソリンを使った。


 燃えるはずのない人の体が穴の中でシュウシュウと燃えていく。

 煙になって消えていく人の体を、シンラは静かに見送った。

 マナは死んだ人に対して特に思い入れはなく、イヴも人の身が燃えることに対しては興味がなかった。

「また一人…か」

 夜の闇が火に焼かれる。魂はまだこの場所にあるのだろうか。

 人の死は何度も見ているが、その度に不思議な気持ちになる。人はいずれ間違いなく死に、安寧を手にいれる。それにも関わらず自分はどうしてまだ生きているのか。


「なあ…あんたはどうして、生きていたんだ…?」


 理由なら聞いていた。自分を苦しめるためだった。精神が屈折していると思う。

 あるいはこうして考え事に(ふけ)る自分も、屈折しているのだろうか。

「…また、会えたらいいな」

 死後の世界で会えるのだろうか。今日出会ったイヴに聞けば、答えてくれるのかも知れない。そう思いながらも、シンラは答えを確かめるつもりなどなかった。


「そろそろ、いい頃合いか」

 既に炎は消えている。

 ちろちろと、残った熱が時折穴の中を赤く染めている程度。


「…さようなら」

 両手で抱えるようにシャベルを持ち上げる。


 炎の消えた穴の中に、土を掬ってかけていった。

 全てを無かったようにするかのように。

 自分の中に、思い出ごと埋めていくかのように。


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