元ヒッキーな魔王の場合
今日は魔王城まで出掛ける事になった、全く人使いが荒いと思わん?
「来たぞ〜」
魔の森を抜け、ミスリルの採掘で有名なモリア鉱山を経由して魔王領へと到る。
んで、領境で魔王から貰った魔王領パスポートとかいうふざけたネーミングの
指輪をかざせば魔王城までテレポートって訳で…
「いらっしゃい」
鍵なんか無視してドアを開ければ布団から黒光りした腕が生えてる。
「一応ハイラント王国の使者が表敬訪問してんだけど?」
「え〜」
ヒラヒラ振られる腕にムカついて、掛け布団の端を掴むと捲り上げた。
まさか来世も引き籠り道を貫く所!と初志貫徹すべく、魔王に成り上がる前の
一介の魔族の子供として転生したコイツは魑魅魍魎所じゃ無い魔獣やら
魔人が跋扈する魔界の中心で惰眠を貪り続けていたのを
俺が偶々見掛けて、気紛れに不死の呪いを掛けたw
そう遠くない未来に魔獣に喰われるか同じ魔人の力の糧として倒され吸収されるか
解りきったつまらん先なんぞ興味無いんで、コイツを魔王に仕立ててみたら?
って好奇心と暇を持て余して、某ポケットに入れられる魔獣育成ゲームのノリで
やらかした成れの果てがコイツ。
「いい加減起きねぇとこの触手付きスライムで貴様をノクターン行きにしてやんぞ」
手にした皮袋からウネウネ動くゼリー状の塊を掴み出し、布団の中へ押し込…
「起きます!」
俺は有言実行だってのを身に染みて知ってるからか速攻布団から這い出してきやがる。
最近反応がつまらんなぁ(笑)
「取り敢えずウチからの信書」
「うへ〜い」
「それと今月の分、出しな」
コイツが魔王に化けて得したのは、魔王の快適な引き籠もり生活を堪能したいって
モチベーションからくるヘンテコスキルの開花によって、地球の日本文化製品を
精製入手出来るようになった事だ、でなきゃ魔界と交易するなんて
面倒な提案なんかしないしさ、これで用は済んだから帰るかな。