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愛を求め過ぎな男爵夫人の場合

人間観察と犬の飼育が趣味と語る俺の兄さんから面白い見世物があると見物に誘われた。

どうも城に爵位返上しに来たのは男爵とその夫人らしいんだけど?

滅多には見られないがエンディングプランに従って名誉爵位を死ぬ前に返上する人間もいない訳では無い。


爵位を返上しなきゃならなくなる程のポカをしたのか、爵位というウチの首輪が嫌になったのか

何にせよ面白そうな理由があるからと足を運んだ。

年若い男爵の煌びやかな式服から授けられたメダル等を外される、その横では豪奢なドレスに身を包んだ

コロネ髪のロココなお姉さんがブルブル震えていて、爵位を持たねば許されない宝飾品を外されていた。


「兄さん、何でまた爵位返上なの?」


まだ年若く世捨て人になるには早い彼が自ら言い出した事なのか、何かやらかしてウチの方から爵位を

返上しろと圧力を掛けたのかと隣に居る兄に問えば面白そうに目を細める。


「あの奥さんを見れば判るさ」


そう言われれば"見る"しか無いじゃないかw


不満一杯何で旦那が爵位を返上しなきゃなんないの!?と此処が城で無ければヒス全開で暴れ回り

隣の旦那に噛み付き引っ掻き引っ叩きたいと憤怒を抱え、隣の元男爵の方は知っていて飄々としている。

何でまた元男爵は奥さんの意見を無視、いや…逆らい爵位を返上するに至ったのかと過去を(笑)


スゲェ!


この嫁のビッチ根性wやらずぶったくり振りに旦那の苦労が察せられるよ。


この嫁キリーは元は貿易商の家の次女で男爵家に嫁ぐ前は普通に一般庶民だった成り上がり美女のようだ。

あのコロネだかドリルな頭だから上昇志向の強いお嬢ちゃんだとは思ってた。

旦那の方は父親が万能薬エリクサーのレシピを開発し王家に献上した事から名誉爵位を授かり

ウェインの名を許され男爵となった家の長男 エリックだ、名誉爵位は三代のみ継がせる事が出来るが…

長男も父のように何かを成して功を挙げたいと野心を抱いているらしい。

だから冒険者として活動はしているが、爵位持ちだからとギルドからは無難な依頼しか紹介して貰えず

危険なフィールドへの立入り許可を出したく無いギルドの意向でランクもC止まりのまま。

本人は完全に爵位が邪魔としか感じていないようだった。


更に国から父親の功績に対する年金と、エリクサーの販売利益からの取り分と金には不自由しないが 

不本意なぬるま湯生活に燻り続ける毎日の中で、エリックの元に縁談が強引に押し込まれた。

父親が冒険者だった頃から素材の融通や採掘した鉱石の買い取りに便宜を図ったりと懇意にしていた

大商人ユキノン商会のドルムの娘 キリーが、ウエディングドレスに身を包み馬車を仕立て

豪華な嫁入り道具と共に男爵邸に乗り込んだのだった。


その頃には既に初代ウェイン男爵は亡く、やり手商人の強引さでドルムは

亡友の息子の為と娘を押し付ける手続きを上手い事進めており、花嫁がエリックの前に立った時には

もう否は言えない状況だった。

キリーはキリーで金持ちの家で蝶よ花よと可愛がられ、侍女や使用人に傅かれる生活を当たり前として育ち

何時かは玉の輿に乗り成り上がる事を夢見ていたので父親の強引な輿入れを喜んで受け入れ押し掛け婚で

既成事実を作る、そうして商人の娘からウェイン男爵夫人と成ったキリーは社交界デビューを果たす。

実家の送金と夫の財産を湯水のように注ぎ、毎月のようにキリーが主催する夜会は最初の頃は

何の伝も無い男爵夫人が社交界への挨拶と顔繋ぎにと頑張っていると大目に見られていたが、

男爵夫人風情が弁えも無く金に飽かせて開かれるそれに良識のある者は眉を顰め

キリーの実家やウェイン家の財産目当てに甘い汁を啜ろうと寄って来るよからぬ者や

享楽に耽る不良貴族等が集まる場となる。


そんな淫らな遊戯の誘いのサロンで金目当てだったりキリー自身の肉感的な肢体目当てに群がる

男達にチヤホヤと持て囃され、様々なラブゲームを楽しんだらしいw

あっちで気を持たせ、こっちで宝石を貢がせ男を侍らせ弄ぶ押し掛け女房の姿に

エリックは何を思ったのだろうねぇ、家ん中にまで逆ハー要員引き連れて乙女ゲームもかくやという

茶番を見せつけられてたんだ、エリックも我慢の限界が来たんだろう。


キリーの父 ドルムが急死し、ユキノン商会代表の跡をキリーの兄が継いだのを契機に

エリックも決心がついたみたいだ(笑)

爵位を返上し冒険者として新たに出発する事と淫蕩な妻と離縁する事を。


キリーにとってエリックは爵位を持つ為のアクセサリー、エリックにとってキリーは

ウェイン男爵家の名を汚すふしだらな妻で何度も恥をかかされた義理で無理矢理押し付けられた女。

こうして爵位を返上しに城に参上するのを王に謁見する為と言いくるめて正装し、連れて来た訳かw

エリックが爵位を返上した時点でキリーはウェイン男爵夫人から、ただの冒険者の女房 キリーとなる。


その上…


「キリー、君と離縁する」


メダルを返上してただの冒険者となったエリックから離婚を告げられ、ヒステリーで頭に昇っていた

血がスッと落ちて青ざめるキリー。


「な、なんでよ?…」


「君の行いを振り返るんだね、邸にまで男を連れて侍らす淫乱夫人を妻にした寝取られ亭主なんて

嗤われるのはもうウンザリなんだよ、それに君は貴族じゃ無い僕に興味は無いだろう?」


やっと厄介払いが出来たとサッパリした表情のエリックは、男爵位の貴族に支給される年金は無くなるが

これからも王家からエリクサーの販売利益の一部は受け取れるからと男爵邸を国に返した後の

屋敷を密かに購入してあるから、そちらへ帰ると待たせていたウェイン家の馬車で一人先に行ってしまった。


「じゃあ私はどうするのよ!?」


豪華なドレス姿だが、涙と叫ぶ度に散る涎で化粧が流れた化け物みたいに成り果てたキリーはその後

城の衛兵に城から放り出され、仕方無く徒歩で男爵邸に戻るが既に邸はウェイン家の物では無く

へたへたと腰を抜かし座り込んだキリーを兄が回収に来るまでそのままだった。


その後キリーは恥知らずの淫乱元男爵夫人と有名になり過ぎた所為で再婚の口も無く、

実家は既に兄の代になり兄嫁を慮ったのか少額の援助しか無いがその僅かな捨て扶持に縋って

田舎の小さな小屋で余生を小さくなって暮らすのが見えた。

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