キスされてました
声のする方を見ると...
転校生の、佐伯 拓水くんが立っていた。
「あの、学校案内してくれる?」
あ...すっかり忘れてた。
「あ、うんっ、いいよ。」
慌てて返事をしてしまった。
軽く笑われたのが、ちょっとムカついた。
それから、無言で学校内を歩き始めた。
「ここが、第一理科室で、あっちが第二理科室ね。私達、一年生は第二理科室を使ってるから、移動の時に間違えないようにしてね。あ、理科の担当の先生は 飯嶋 心葉先生っていう人だよ。優しくて授業も分かりやすい良い先生だよ。」
とまぁ、委員長らしく真面目なフリをしといた。まぁ、根は真面目だからね?
てか、この人、人が説明してんのに、何の反応もねぇーのかよ。相槌だけでもいーから、何か反応示してよね。
ちょっと、イライラしながら、説明を続けていた。
「えと、ここで最後かな。ここが体育館。うちの学校は、体育館の中に更衣室があるからジャージを持って移動するの忘れないでね。それから、あれが体育倉庫ね。今、ドアにガタがきてるみたいで、閉じ込められたりするみたいだから、体育倉庫に入る時は誰かに言ってから行くこと忘れないでね。
えーと...体育の担当の先生は、太田 直哉先生っていって、運動バカの人で本当に体を動かすのが好きな人でさ時々熱くなりすぎてウザいけど、すごく生徒思いな優しい先生だよ。」
まぁ、学校案内はしたし、ついでに担当の先生達の説明もしたし、こんだけすりゃいーだろ。早く帰りたい。
「じゃあ、これで一通り学校案内は終わったし、私は帰るね。また、わかんない所とかあったら言ってね。」
と、だけ告げ...佐伯くんを通り過ぎ帰ろうとしたら、急に腕を捕まれた。
「え...?なに?」
「いや、駅までの道知ってる? 知ってるならそこまで一緒に帰ってくれないかな?」
は?
しばらく沈黙が続いた。
その沈黙を破ったのは、佐伯くんだった。
「えーと、だめ?てか、鈴野さん電車通学じゃない感じ?」
「えっ⁉︎ あ、いや、電車だけど...」
なんか、佐伯くんとは帰りたくない。
てか、私の名前知ってたのか。
「じゃあ、駅までいいかな?」
うわー。なんか、すげぇ困った顔してる。
これは、はぁ、クラス委員長として真面目なとこを見せとこう。
「あ、いいよ。」
と、駅まで案内することになった。
そして、また、無言のまま2人で学校の門をくぐり抜けた。
学校から、駅までたったの15分程度のはず...
その、15分が3年くらいに感じた。
なんで、何も話さないの?この人。って、まぁ、私もだけど。
そんな事をずーっと、頭の中でグルグル考えていたら、佐伯くんが口をひらいた。
「鈴野さんってさ、彼氏いたことないでしょ?(悪意のある笑みに私は見えた。)」
周りから見たら王子スマイル的な感じの微笑み。
「は?なに、いきなり...」
なんだ。こいつ。うぜぇ。
彼氏いないのは事実だけど...
「ん?図星でしょ? 大抵の女子ってさ、俺のこと見ると、ぎゃあぎゃあ騒いでて五月蝿いだろ?でも、クラスで唯一 鈴野さんだけ反応しなかったし、学校案内してる時も、どこか挙動不審だったし...それをバレないように真面目な委員長を装ってたのは可愛かったけど笑 まぁ、これだけで彼氏いないって決めつけるのはアレだけど笑」
と、爽やかな顔で、スラスラと言い放った。
私、こいつ嫌いだわ。
「じゃあ、何でそんなこと言ったの?決めつけってよくないと思う。」
怒りの感情を抑えて言った。
「怒るの我慢してるって感じの顔だね。なんでって言われてもなぁー。まぁ、カンかな?」
私の感情を読み取った上に、カンとかふざけた事ぬかしやがる。
「失礼にも程があると思わないわけ? 黙って聞いてれば、人のことなんだと思ってるの?」
軽く怒鳴ってしまった。
「怒鳴るなよー。ここ、駅の前だよ?人たくさんいるけど笑」
え?
あ、ほんとだ。怒っていたら、いつの間にか、駅についていた。
よし、これで、やっと、こいつと別れらる。
うん、早く家に帰って寝よう!
「あ、じゃあ...私は帰るから。」
と、歩き出した時...腕をぐっと引っ張られた。あ、こんなような出来事さっきもあったな...とかおもった。
その時だった...。
「っ...!」
え、なに、今、何がおきてるの...
私、今、こいつに、キスされてる。
周りからは、やたら視線を感じる。
あ、そうだ、ここ駅の前だった。
私が固まっていると...
いつの間にか口を離した、あいつが
「だからさ、俺が彼氏になってあげる」
って言っていた。