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第9話 襲撃

 今の状況を説明しよう。門番は俺目掛けて剣を振り降ろしている。俺は右腕に装備しているPSPでそれを防いでいる。簡単に説明するとこんな感じだ。

「くっ……」

 門番が悔しそうにした。

(どうしよう?)

 この後の事を考えていなかった。コスプレした事により力も増したはずだ。でも、この門番は普通の人間。攻撃してしまったら怪我をするかもしれない。戦いにくい。

「ん?」

 ふと、何かを感じて地面を見た。

(もしかして?)

「じゃあ、俺は行かせてもらうな」

「は? うわっ!?」

 門番の目の前に小さな弾を1つだけ出現させる。それだけで門番は尻餅をついた。

「じゃあな~!」

 その場でジャンプ。そして地面に潜る。あの時、俺は地面が少し柔らかくなったのに気付いたのだ。試しに行動してみるのも悪くない事がわかった瞬間だ。

(急いで人里に行かなきゃ……)

 このままコスプレが変わってしまったら大地に生き埋めになってしまう。早速、人里目指して、俺は泳ぎ始めた。




「な、何なんだ?」

 その頃、門番は放心状態だった。弾を発射してきたと思ったら地面に潜ったのだ。無理もない。

「は、早く、慧音さんに報告をしなくては……」

 そう呟くと門番は走り始めた。この人里に侵入者がいる事を伝えるために――。




「意外と賑わってるな」

 上手く人里に入った俺は適当に歩いていた。目指すのは寺子屋。場所は先ほど、傘を持った緑の髪に紅いチェックのスカートを着た女性に聞いたのだ。

「ここか?」

 周りの家より一回り大きな建物を目の前にして呟いた。中からは子供たちの元気な声が聞こえている。間違いないだろう。

「ん? 誰だ? そこにいるのは?」

 後ろから声が聞こえ、振り返る。そこには四角くて青い帽子に青いロングスカートを着た髪の長い女性がいた。

「いや~慧音って人を探しててここにいるって聞いて」

「私が慧音だが? 君は?」

「俺は音無響。よろしく」

「うむ。よろしく頼む。改めて自己紹介しよう。私は上白沢慧音だ」

 お互い、握手する。

「それで? 私に用とは?」

「ああ、実は――」

 昨日、幻想郷に来た外来人である事。帰れなかった事。仕事と家を探している事を慧音に話した。

「なるほどな。すまないがその事については授業が終わってからでいいか? 子供たちを待たせているのでな。すぐ終わるから中で待っててくれ」

「わかった」

 慧音の後に続き寺子屋に入る俺。部屋まで案内され慧音は授業に戻って行った。

「そうだ」

 PSPの様子を見てみる。ホルスターには切傷が付いてしまったがPSPには何もなかったように傷がない。やはり、紫がPSPの境界を弄って頑丈に。更にバッテリー切れを起こさないようにしたようだ。

「まぁ、いいか。便利だし……」

 俺は気長に慧音を待つ事にした。


「待たせた」

 しばらくすると慧音が帰って来た。

「いや、大丈夫。それより裁縫道具あるか?」

「裁縫道具? あるにはあるが……何を縫うんだ?」

「これ」

 ホルスターを見せる。

「何かあったのか?」

「大した事じゃねーよ。話しながら縫いたいから貸してくれないか?」

「わかった。取ってくる」

 また慧音は部屋を出て行った。

「これでいいか?」

 少しして裁縫道具を持って戻って来た。

「さんきゅ」

 裁縫道具を受け取り早速、縫い始める。

「上手いな」

「慣れているからな」

 手元に注意しつつ、答える。

「なるほど……では、話し合おうか」

「ああ、頼む」

「正直言って、人里にはもうほとんど働き口はないのだ」

「は!? 痛って!!!」

 驚いてしまい、針が指に刺さる。

「大丈夫か!?」

「あ、ああ。で、その理由は?」

「人里は来る者は多いが去る者が少ないのだ。人里の外には妖怪がいるからな。それゆえ、働き口がなくなるのも速い。残っているとしたら……」

 そこで慧音が黙り込む。

「残ってるんだろ? どんな仕事だ?」

「万屋」

 手を止めて、慧音を見る。

「も、もしかして……」

 嫌な予感というものは良く当たる。この予感も例外ではない。

「依頼は主に妖怪退治だ」

「無理だな」

 倒せるかもしれないがコスプレなどしたくない気持ちの方が大きい。

「だろう? だから、働き口がないのだ」

「じゃあ、どうすれ……」

 そこで外から大きな音が聞こえた。

「な、なんだ!? 痛って!!!」

 もう少しで血が出る所だった。

「妖怪だ!」

 慧音は立ち上がって部屋を出て行こうとする。

「よ、妖怪って! この人里は安全じゃないのか!?」

「基本的にはだ! 知能が低い妖怪がたまに襲ってくるのだ!」

 そう言い残して出て行った。

「マジかよ……」

 せっかく、コスプレしなくても暮らしていけそうだったのに。

「仕方ねー」

 ホルスターも丁度、縫い終わった。様子だけでも見よう。そう思い俺も寺子屋を後にした。


「大丈夫そうじゃんか」

 人里はもう落ち着いていた。

「なぁ?」

「ん? なんだい?」

 近くを歩いていたおじさんに状況を聞いた。まだ完全に追い払ったわけではなく人がいない所へ誘導しただけらしい。

「さすが慧音さんだ」

「へ? 慧音が?」

「そうだ」

「そうか……さんきゅ」

 お礼を言い、歩き始めた。確かに襲撃を受けた傷が建物に残っている。

(慧音ってすげー奴だったんだ)


「よ、妖怪だああああ!!!」


 感心していると叫び声が聞こえた。

「またか!?」

 声がした方に向かう。角を曲がると犬のような姿をした生物が暴れている。きっとあれが妖怪だろう。周りを見ると皆、焦っているようだ。慧音は今、戦っている最中。助けに来れない。

「きゃあ!」

 逃げ惑う人の中で運悪く、1人の子どもが転んでしまう。嫌な予感がしてイヤホンを耳に装着する。犬の妖怪の目はギロッとその子供を捕えた。

(まずい!!!)

「お、お前!」

 その時、横から聞き覚えのある声が聞こえた。ちらっと見るとあの門番だった。だが、今はあの子供だ。PSPに手を伸ばしボタンを押し、走り出す。


~妖怪の山 ~ Mysterious Mountain ~


 上は白いシャツに下は黒いスカート。背中には漆黒の翼。あの紫から逃げた時のコスプレだ。変身と同時に低空飛行を始める。どんどんスピードを上げ、人と人の間を通り抜ける。その間にも妖怪は子供を食べようと大きく口を開けている。

(間に合ええええええええ!!!)

 俺は子供に手を伸ばした。


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