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転生オタクの落第騎士、異世界フリースクールの院長になる  作者: 沓子
番外篇

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31/32

変わるものと変わらないもの


 


 リリサイド歌劇団で大人気を博した公演が千秋楽を迎えていた。好評につきロングランとなったその演目は男装の女騎士が革命に身を投じ───、はいすみませんパクりです。



 だいぶアレンジはしたよ。圧政を敷く王を操る悪魔(魔族とは異なる)がいてヒロインは死なない。戦いで恋人を失った傷心を抱え、伝説の宝珠を求めひとり旅立つ。仕えてた王妃の子どもを不治の病から救うために。続編狙いだよ!

 恋人は激戦地区で行方不明、推定死亡だった。実は生きてる? って布石をラストで示唆してある。

 王政打倒で終わるのはなんかルベルに悪いし、悪魔を悪者にした。

 



「男装……、そういう路線もあったか」とリヒトが悔しそうにしていたから、ちゃんとパク……、オマージュだよ俺オリジナルじゃないと説明しといた。



 かの漫画の神様はあらゆるジャンルでトップになりたくて色々描いてたんだよな。そういや漫画で男装の騎士はこの方が先駆けだ。

 追悼本によれば、後輩の編み出した手法に嫉妬し意地悪言ってあとから謝ってたとか。

 因みに嫉妬されたのは九人のサイボーグ漫画や某ライダーシリーズの作者。こちらも大作家だ。

 リヒトは異世界のマンガ神になるつもりだろうか。

 


 何故か例の腐沼四天王が通い詰めてるなと思い挨拶をしたら、どうも男装ヒロインを男に脳内変換し萌えてた様子。

 どの世界でも貴腐人の妄想は逞しい。



 大きなイベントが二つ控えている。ルベルの戴冠及び魔国との友好締結、そして長男アーサーの結婚式。新居は完成してるのでふたり仲良く家具やなんかを見繕う毎日。

 新婚旅行をプレゼントしてゆっくり楽しんでもらう予定だ。

 俺とルベルは式はもういいかなと思ってる。子どもたちのやってくれたサプライズパーティーより素晴らしいのなんかないし。



 当事者でもない俺が落ち着かなくてそわそわしっぱなしだ。リン魔王のカミングアウトを人間側に受け入れてもらえるかが心配だったが、無用だったらしい。

 まずリヒト、いやポッポー御大が魔王を主人公にしたマンガをヒットさせた。リンに似た少女魔王、かれの母が主役だ。

 人間と愛し合ったのは好材料である。



 関係各位にマンガ化許可を得て取材すれば父と兄をぶっ飛ばした例の件だけでなく、面白エピ盛り沢山。四天王(真)が語りたがって大変だった。

 マンガでは生きていて玉座に就いた話にすると伝えると、先代魔王に感謝された。

 娘が魔族だけでなく人族にも広く知ってもらえる。生きた証が、ひとの心に残る。それがとても嬉しいのだと。

 会ってみたかったな、リンの母君。



 子に先立たれた悲しみは、想像だけで辛く苦しく耐え難い。その日は先代と飲み明かし、怪談本怖すぎるよと文句言われた。魔国にまで進出してるとは。てか怖いのか。

 第三弾はもっと怖くしますキリッと宣言した。



 そしてもう一つ。

 魔国の祭壇の話がこちらまで届き、食いついた各種オタク(もうこう呼んでいいよな)がその形式を真似始めた。

 祭壇の広がりと共にリンの自慢話を魔族が人間に言いふらしてるので、いつの間にかリン=魔王とかなりの人に周知されていた……。

 もう十四歳だが成長遅めで可愛いルックスに愛くるしい笑顔。アーサーとポッポー御大に続きファンクラブができた。



 もう俺も開き直って魔王様くじ、魔王様ガチャを始めた。特等やシークレットはリンの手作りチャームやミニ肖像画サイン入り。

 ひとり二回までにしたら魔族がずらっと並んだよね。仕方ないから人間用と分けたら人間に化けて買ってるし。人間用だって人気だが、並んでる人数だけで売る前から販売終了はない。

 リンのお言葉入り日めくりカレンダーも受けた。実費以外はリンの収入だ。




 そんな落ち着かない日々に驚きの出来事があった。なんとジョシーとルー、それぞれに彼女ができたという。



「え、どゆこと?」

「デートとかは片っぽが引っ込んで寝てるっつーか」

「そうそう」

 道理で最近、よく出かけてた訳だ。ふたりの服の趣味は異なるのでどちらが出てるかはそれで分かる。

 


 お相手も双子だとか。今どちらが出てきているかちゃんと見極められるらしい。ジョシーたちの事情も理解した上での交際だ。

 紹介してよねと強請ったが「そのうちなー」「機会あれば」と躱された。

 まあ親に紹介は結婚決まったときくらいだもんな。

 つかいつ知り合ったんだろ。




 ふたりはもう十九。キースとアデルも同じく。アーサーが二十歳、リヒト十八、ハリーは十六。リンは前述の通り十四だ。

 リンとハリー以外俺より身長がデカくなってしまった。ハリーはまだ伸びてるからいずれは……。

 そして揃いも揃ってカッコよく育ちました。「顔で選んで養子にしたのか。引き取ったのは淫らな目的なんだろう」と遠回しに言ったオッさん貴族に殺気をぶつけたら失神しやがった。一緒にすんな。

 全員モテるが本人がしっかりしてるから安心だ。

 キースの結婚が決まるのも秒読み段階。



 アデルはドワイエ家がリリサイド歌劇団を後援している関係でよく観劇している。娘役のキャストといい感じらしいが俺には内緒にしている。子どもらから伝わってんだが。

 一時的に養子となったノームコアのお嬢様にモーションかけられているハリー。ツンデレお嬢なので素直じゃないが、周りからは好意が分かりやすい。

 時折食べ歩きに連れてってるからハリーも満更じゃない筈だ。



 離れていくなんて考えられないと思ってたが、幸せならいいと変わってきた。

 リンは四天王ガードが固く浮いた話はまだない。魔族を嫁さんにする可能性もありそもそも若いのでこれからだな。



 気がかりはリヒトさん。

 仕事と結婚する気なのか、ハートマーク飛び交う兄弟を羨ましく見る気配すらない。

 どんな美少女美女にもビジネス対応してるしな。



「ジョシーとルーも結婚となれば家を出るみたいだし、ハリーは話が進めばノームコアが持つ爵位を貰って婿入りだ。ここに残るのはリヒトとリンだけになりそうだな」

「近隣の屋敷を買収してるの知りません?」

「は? 何それ」

「塀を挟んだ裏の物件を押さえてるのがハリー、隣と交渉中なのがジョシーたちです。アデルはドワイエとの中間辺りを狙ってます」

 何故君たちは親に言わないんだね。

「ジル父上には報告済みですよ。マンガや書籍の執筆はここでやるので日中はみんな来ます。それも知らないので?」

 なんでや。仲間外れ良くない。つかハリー結婚する気満々じゃん!



 ルーはニックネームだから名前考えたら? って言うともうあるって。

 ルーファス・ハミルトン・フォーサイス。養子にした書類にちゃんとあった。あの頃は忙しくて朦朧としてたけどさ……。



 頭のいいルーは俺が教えた数独やパズルに夢中になり本を出した。ジョシーのモダンアートっぽい絵が表紙を飾り静かなベストセラーになっている。

 クイズ大会を主催し知識層が楽しんで参加、いや年甲斐もなくマジバトルしていた。初代チャンピオンはなんとモ……、メ、えーとなんだっけ元宰相だ。

 早押しに負け準優勝の王兄ヘルマンさんは地団駄を踏んで悔しがってた。イメージ崩れる。



 三位まである賞品の内訳はポッポー、マキナ生原稿やリリサイド歌劇団新作初日の貴賓席、お化け屋敷一年フリーパス、勇者アーサーサイン入りグッズ、リン手製のお洒落なタイピンなど。

 ウチ的には安上がりというか金かかってないが、参加者は死に物狂いだった。家族にどやされた人も多かったようです。

 参加賞はマンガ作家たちの描いたリーフレットと限定のポッポー作品キャラぬい。大人気だった。



 みんなすごかったよ。ウルトラク◯ズやバラエティ参考に、大きなマルバツ紙を走って破り不正解なら小麦粉やプールにダイブのアレとかパン食い競争してゴールしたら答えられるの。

 貴族はこんなのやらないんじゃって予想を裏切り目がマジなんよ。童心に帰る機会なんてないからかな。

 継続開催を熱望された。



 終わった後は立食パーティーにしたが悔しがったり大会を振り返りつつ大盛り上がり。なんとなく敵対してた貴族同士で意気投合したりと雰囲気はとても良い。

 ヘルマンさんに引き摺られクイズに参加した王も段々とムキになり小麦粉塗れで笑ってたっけ。

 色々あったがルベルの親で義父だ。嫌がらせで「義父上」と呼んだら複雑そうだったので良しとする。



「俺も出たかったよー仕事だから無理でさあ。参加賞くれない? 無理? 今度は身体能力を競う大会にしてよ」



 馴れ馴れしいルベルの護衛騎士が色々なんか言ってたが、身体能力競争ってのだけ聞こえた。

 次は運動会やろうか。

 



 のちに開催された大運動会、エキストラ参加のアーサーが圧勝総合優勝でした。箱根の学連選抜と同じで参考記録だ。

 アデルも出たがプロ騎士や冒険者たちには敵わない。部門ごとにも分けたので入賞はしてた。

 驚いたのはリン。百メートル走だけの参加だが、魔法なしでアーサーに肉薄した。

「リン様が一番!」「リン様最高」うちわでの声援が勇者ファンと拮抗していた。

 「負けちゃったーアーサーお兄ちゃん速い!」とハグするふたりが尊い。

 ……悲鳴を上げてるのは腐沼四天王か。うちの子そんな目で見ないで。



 護衛騎士が参加しやがったので仕事しろと嫌味言ったが、ルベルが快く送り出したそうな。優しいなー俺のルベルは。

 剣部門で飛び入り参加した俺に負けたよねきみ。護衛交代すれば?

「ちくしょう、この〝紅の守護者〟め!」とよく分からない罵倒を大声でされた。



 奴の狙いは後から効いてきた。「あのマンガの?」「うちの出入り商人を助けたあの?」「うちの領地で盗賊団潰してくれたあの?」と噂になり閉口した。

 俺に寄せて描いたんだよポッポー御大。本人だけどさあ。



 エキシビジョンマッチで我が子とガチ対決をした。互いに魔法なし。

 始めは遠慮がちだったアーサーだが、次第に真剣にかかってくる。実力の差は歴然だが、絡め手を使っていなす。実戦経験だけはこっちが上だ。

 ルール無用の荒技でもな!




 体力差もあり最後はこてんぱんに負けはしたがアーサーに「父さんの剣は他の騎士と全然違う……」と息を切らさせたから満足。

 俺とアーサーが交互にリンとハグしハリーやアデル、ジョシーにルーとハイタッチ。

「やっぱり師匠はすごい」とキースに褒められた。

 リヒトがなんかスケッチしてる。

 父上が走ってきて抱き着こうとしたから避けた。たたらを踏んでから何食わぬ顔で振り返り「ふたりともよくやったな」とアーサーをハグしてた。



 腐沼四、あーもう放置。そうそう、イザベルの彼氏が五位だった。同僚ではなく故郷の騎士で幼馴染らしい。

「長年の片思いが実りました」とイケメンが笑っていた。結婚式には家族で是非と頼まれた。気が早い! とイザベルに背中を叩かれ咳き込んでたな。お幸せに。



 俺=紅の守護者が知れ渡り、助けられたという人々が屋敷に来訪し困惑した。

「私の伴侶はかっこいいヒーローだね」

 ルベルが微笑んでキスをくれたからまあいいけど。そのあと無茶苦茶セッ(略



 護衛騎士は訓練と称して毎日のようにしばいたら強くなりやがった。

 お化け屋敷も歌劇団も、専門スタッフが動かすようになり俺とリヒトの負担が減ったのでありがたい。





「また養子を増やすんですか」

 有り余る資産の一部で孤児院を作ればリヒトが呆れた風に言ってきた。

「俺は忙しいしあまり関わらないよ。優秀なスタッフを揃えたし。俺の子どもはおまえたちだけだ」

「ならいいですけど」

 なんだヤキモチか? 可愛いじゃないか。

「リヒト」

 いつものようにハグを要求する構えを取れば素直に近づく。え? うそ。

「───父上」

 手を伸ばし微笑みを見せる四男。

 いや戸惑うわ嬉しいが! どうした!?



「───隙あり、です」

 瞬く間に見事な体落としを決められてしまった。

「ひ、卑怯だぞ!」

「私にかけた時はこう言いましたよ。〝隙を見せたら負け〟」

 だってあれはリヒトが……、とぶつくさ呟いてたら手を差し出された。

「おあいこです」

 


 不意に出会った頃を思い出す。

 まだ小さかった手は今じゃ俺と同じくらい。背丈は追い越された。仲間を思い俺を陥れようとしてた時の幼い背中はもうない。

 マンガを学び一足飛びで超えてった。

 自分の考え無さから孤立して生きていた俺の不足を、いつも助けてくれていた。

 今では表情はずっと豊かになり兄弟とも仲良くやっている。

 気づけば隣にいてツッコミを入れてくる、頼りになる自慢の息子。



「おまえが俺を看取るのかもなあ」

 手を掴み立ち上がれば、珍しくリヒトが面食らっている。

「そこはジルでしょうが」

「俺は二度とあいつを孤独にしない。先に死なない。だからだよ」

「アーサー兄さんが」

「家督を継ぐからな。でも長男には守るべき家族ができる。俺は後回しでいい」

「……私は独り身だと?」

「なんか想像しづらいんだわ、そばにリヒトがいないのは」



 アーサーが言っていた。離れないのはジョシーとリヒトではないかと。

 意外にも双子には恋人ができ、嬉しいながら俺は焦ったのかもしれない。

 ルベルの最優先は国と民。今でも週に二日帰れたらいい方だ。戴冠すればその比ではない。

 ハリーは決めてるっぽいし、リンも魔国へ帰る日が来ないとは言えない。



 ひとりには広すぎる屋敷で、リヒトまで去ったら。近くに住んでも帰る場所は別々。

 情けないが俺は耐えられる気がしない。



「はぁ……。独身決定か」

「いや! 俺の勝手だから無理強いはしてない。ただ、想像がつかないだけで」

 リヒトのぼやきに急いで付け加える。ん、耳がほんのり赤いな。照れてるのか。

「鈍いくせに琴線に触れて揺さぶってくる。父上はタチが悪いです。彼女の気持ちがよく分かりました」

「え、ええ!? か、彼女って?」

「せいぜいジルに振られないように」

 締切があるのでと部屋へ行ってしまう。



 なんだその捨て台詞。照れつつ怒ってるのか? 流れが分からん。看取りなんて言ったから厄介な介護をさせられると思った?

 彼女関係あった? そもそも誰。



 お手紙という名の反省文を書く。以前、何が悪いか把握してから謝れと言われたのできちんとする。

〝よく理解し反省しました。介護は専門を雇います。面倒は押し付けません、もう看取るとか言わない。ごめんなさい〟



 これを渡したらリヒトの機嫌が急降下して口を聞いてくれなくなってしまった。

 反抗期だろうか。子育ては難しいなあとため息をつく俺だった。




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