ローズガーデンへようこそ
※妄想のなかで息子相手にスタンが受けっぽくなります!だめなひとバックしてください。
薔薇の庭園の淑女、学園長たちのお話。
♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡
「本日はお忙しいなかお集まり頂きありがとうございます」
学園長が厳かに茶会の始まりを告げる。春の花々が咲き誇る庭の四阿に集うはいにしえの淑女たち。
ここは学園長バーバラ・ローズの邸宅。そこに長年教職に就いている女性陣が集められていた。
マナー講師のミス・エヴァ。
ダンス教師ミス・ドロテア。
歴史教師ミス・オードリー。
数多の生意気な生徒を屈服させてきたいずれ劣らぬ猛者。鞭などは使わない。目力と迫力、理論でやり込める。口さがない生徒からは「鋼鉄の処女」と呼ばれ恐れられていた。
彼女らは力の及ぶ限り、学園時代のジルベルトとスタンレイを守っていたのである。
礼儀に則りひとしきり庭の花や茶菓子を褒め終えると、最年少のドロテアが先陣を切った。最年少とはいえよんじゅ……、よん、よ、───禁則事項に引っ掛かったようだ。
「まずスタルベは鉄板、でよろしいですか?」
「鉄板、の意味によりますわね」
「まあミス・エヴァ、それはどういう」
「他の組み合わせ絶許かどうかです」
学園長バーバラのまぶたがピクリとする。
「エヴァ先生、あなた学園のふたりをご覧になりましたわよね。婚姻も控えている。それでもそんな戯れ言を仰ると」
「妄想の翼は自由に羽ばたく。他者が妨げることはあってはならない、ですわ」
「……先代会長のお言葉ね」
「自萌え他萎え、それは永遠の課題。だから我々はけして他を否定しない」
バーバラは議会の際にジルベールの婚姻をなんとしても阻止するつもりだった。学生時代から素行不良のプラントを何度も締め上げた経験もある。それどころかあの場にいた貴族は全て彼女の、または父の教え子だ。
自らの地位を擲ってでも……! と固く決意していたのだ。絶妙のタイミングで王子を救う騎士が現れるまでは。
だってスタルベは運命の番、互いに取ってただひとり。
別の相手が入り込む余地なんて! しかし先達の教えを無碍にもできずに内心ハンカチを噛み締める。
自分の妄想が形を取ったあの時、自身の目と頭を疑った。これは夢? それとも天国なの?
ようやく現実と理解しその日は長く神に祈りを捧げた。のちにイチャラブマンガが発売された折には変装して10冊買い求めた。
彼女は満たされていた。世界は煌めいている。変わりない日常が輝いていた。
なのに相手違いカプ!?
不遇の王子を守り抜いた騎士、これ以上のカップルがありますか!
エヴァとはカプ傾向に食い違いがある。バーバラの美形受け男前攻めの概念を打ち破るのだ。
「先に攻め受け問題を話しませんか」
空気を変えるためオードリーが言う。同志で争うのは望ましくない。
みんなが首肯した。
違う茶葉で紅茶を淹れ直し、菓子をいただく。
「先日はアー君で別れましたわね」
「わたくしからすれば受け要素が見えません」
「学園長、いえ、バーバラお姉様の好みはオーソドックスですもの。スタンレイ、アー君、ジョシー、アデルの格好いい系は攻め。美形やちいさい可愛い子は受け」
「……まあ、そうですね」
「私はリヒ様攻め一択ですわ」
「お相手は? エヴァ」
「仲が良いハリーかしら」
「スタンレイです!」
「!!」
「ぎ、義父ですわよ」
「身内の伴侶、義理の父……、障害が想いを募らせるのよ。家でも絡みが多いらしいし」
「家で?」
ひと呼吸置きエヴァが高らかに宣言する。
「私の姪がフォーサイスに侍女として仕えておりますの」
「「「!!!」」」
「無論、忠実な娘ですしそうそう話してはくれません。ですが姪も《《素養》》があるので、毎日が天国のようだと」
誰かがゴクリと喉を鳴らす。明らかにマナーに反するが今はそれどころではない。
「…………」
「───わたくしも若ければ、ッ」
フォーサイス邸の壁になりたい。女史たちの心はひとつになる。
「……ハーラン君はもっと大きくなりますわよ」
「……そうね。手が大きかったわ」
「既にその傾向はありますが数年後に可愛さも残したイケメンになります」
「顔相に詳しいオードリーだものね」
「リヒ様とツーカーですのよ」
「キースとアデルは真っ当に少年だから妄想しにくいわ」
「分かります」
「微笑ましくブロマンスを楽しむべきでは」
「友情からの過ちも善きもの」
「リン君、すごく可愛いのに強者の貫禄があります」
「度々威圧を使いますし」
「あの美形従者が恍惚として見つめていますわ。忠犬です」
「成長を待って判断しますがわたし的に攻め濃厚」
「保留で」
「ジョシー君とルー君が興味深いわ」
「お腹のなかで母親と弟を守ったんですよね……」
ふたりの同意を得てデウスエクス・マキナがマンガを描いた。それまでのキングメイカーたちの苦難の道のりを世に出せばかれらも少し報われるとジョシーが判断したからだ。更には世間が知る事でルーの存在は世界に紐付き、留まるのが容易になると。
ルーは照れたが知ってもらえるのは嬉しいようだった。
母が毒を盛られたのは、同時期に妊娠した本家の子にメイカーが渡る可能性を高めるためだ。
同じようにされ世に出ることなく流れた胎児は他にもいたという。
「……立派な兄君ですわよね」
「感動して萌えは躊躇われましたが、それでもあとからやって来ます」
「それが許されざるわたしたちの宿業……。双子、魂だけのルーを愛してしまう義兄弟、萌えしかなく───神の門で裁きを受ける日まで変わるのは不可能でしてよ」
神は裁きたくないから勝手に通過してどうぞとぶんぶんかぶりを振っている気がするが。
三人の会話を耳にしつつバーバラは考え込んでいた。
スタンレイ受けなど想像もしなかったが、年少にしてあの老獪さを持つリヒト様と……? 前国王は長身である。今現在でスタンレイとほぼ同じと聞く。
『父上、……いえスタンレイ。私はずっとあなたを……』
『だ、だめだリヒト、俺にはルベルが』
『分かっています、けれど!!』
『……命より大事な息子なんだ、それじゃだめか』
『残酷なひとですね。もっと抵抗しないんですか』
『大切なおまえを傷つけられるもんか!』
『───では、そのままで。私は本気です。愛している、スタンレイ』
バーバラの脳内に稲妻が走った。天啓とも言えるそれはあまりに衝撃的で、動揺のあまりティーカップを揺らしてしまう。これはいわばパラダイムシフト、スタン攻めの常識を覆す大転換。
スタンレイの顔面は恐い。だが子どもらを見つめるかれは慈愛に満ちていた。不器用な笑顔は脅迫者のようだが、子は恐れる様子もない。
料理上手な愛情溢れる義父を慕う見目の良い少年たち。
「そんな、いえ、でも……! スタンレイは攻めの筈……、」
「……お姉様?」
「ドロテア、これはきっとあれよ。新しい何かに目覚めたのだわ」
「今までの自分との葛藤と萌えの狭間で呆然としてらっしゃるのね」
「恐くないわお姉様、ただ新たな道が拓けただけ。世界はより彩りを増しますの」
「あの家族は深く愛し合っています。そう、わたくしたちが妄想しても仕方ないほどに。こちらは絶対に知られないようにすれば良いの。ナマモノの掟です」
お姉様、と優しく語りかけるオードリー。
「そんなお姉様に取って置きをプレゼントします。以前侯爵家にお泊まりした際、寝室でスタンレイは子どもたちにくすぐられ気絶したとか」
「「「!!??」」」
「そのまま雑魚寝ですわよ!」
悲鳴にも似た声があがり、ローズ邸を通りすがった妖霊が膨大な生のパワーに跡形もなく消し飛んでいく。
これはオードリーが侯爵夫人と友人であるからこそ聞けたエピソード。長年の友が腐っているなんて知らないドワイエ夫人は心温まる話として、かつてのスタンレイの教師に伝えたのだ。
夫人にばらしたのは息子アデル。笑い話がこんなことになるとは。
オードリーは心温まった。充分過ぎるほど温まり燃え滾るようだ。今なら萌え力でワイバーンくらい倒せそう。
実際、人型をとる魔物がそこにいたら怯えて逃げたことだろう。正体不明の邪念のような純粋な祈りのようなオーラはそれらを恐怖させる。うん十年を清く生きた彼女らは、魔法使いならぬ力強き魔女である。萌えが燃え盛るとき、その出力は最大値となるのだ。
すぐに会報号外で叫びたかったが、スタルベ強火担のバーバラに遠慮していたのだ。
「神よ、ありがとうございます」
「我らにお恵み頂いた萌えに感謝を……」
事ある毎に神を口にする敬虔な淑女たちだが、祈られたほうは困惑するだろう。神は関係してないし。
「───わたくしの考えが凝り固まっていたようね。萌えは突然の嵐のようにやって来る。今日は拒絶していたものが、明日は最萌えとなるかも知れないのよ……」
「バーバラお姉様!」
「萌えは世界を救うのです!」
「ええ、無償の愛ですもの」
「以前の萌えを否定するではなく、愛のかたちが増えるのみ……」
「今日萎え明日萌え、素敵ですわ」
明日の友は今日の敵、のジャ○プみたいなノリで腐を語らないでほしい。だがこの茶会が開かれる場所が、浄化され一時的に聖地化されるのは本当だ。聖地化というか腐地化というか、雑魚魔物は入り込めないし前述の通り消し飛ばされる。
女史たちは自覚なきゴーストバスターズ。
スタンレイが王子と少年の守護者であったように、彼女らもまたスタンレイ(とカップル)を守る守護者だった。
淑女たちの秘密の集まり「ローズガーデン」の歴史は古く、次代へと脈々と継がれ続けていく。
リヒトが急にぶるりと身体を震わせた。
「どうした」
「いえ、すごい悪寒が」
俺もつられたようにぶるっとする。春とはいえまだ寒い。
「鍋にしよー」とルーの提案。ヘルマンさんたちのおかげでうちのご飯のレパートリーが増えている。
割高だがヤマトから色々取り寄せてたら魔族が「リン様の御為に」と、嬉々として使いっ走りとなった。和食も中華も作れるようになりレシピ本を出した。
そのせいで我が国ではヤマトブームが到来中だ。
「俺はあの辛いの!」
「キムチ鍋はアーサーが食べられないから何種類か作ろう」
「我は辛くてよい」
「養父殿、吾輩はスキヤキが」
「えーと、まだいたのか」
四天王をすげなく帰したいが劇場やお化け屋敷で魔族は欠かせなくなっているからなあ。黒魔族ヤマトの宅急便も世話になってる。
寂しさを感じる暇もないくらい食卓はいつも賑やかだ。
「それぞれ好みの銘々鍋にして大鍋をいくつか仕立てよう」
「ぼく鍋焼きうどん」
「あ、僕はトーニュー鍋で」
「おれ魚介類のやつ」
りょーかい。バラバラだな。
「リヒトは風邪気味ならあっさり系がいいだろ。リンと同じ鍋焼きにするか?」
「海老天マシマシで」
二天王とジョシーにリン、アーサーにルー、リヒトは決まり。あとはハリー。ルベルは何かな。
それからうちのペッt……、残りの四天王か。
「父、アデルとキース、来る」
「おっと、あいつらセンサーでもあるのか」
「あっ、副団長も来ると仰ってました」
アーサーが付け足す。祖父でなく役職で呼ぶのは礼儀正しい騎士の鏡だわ。ルベルのおまけも来るだろう……。
「とりあえず食材切り! みんなでやるぞ」
コンロが足りないときは四天王やアーサー、リン、リヒトの出番。アデルは炭化させそうだし。
魔族と人間、勇者と魔王が戦闘ではなく料理に魔法を使い、協力してご飯を作る。
この平和に行き着くまでに少しでも力になれたのが嬉しい。
俺は筋肉量多くて暖かいからリヒトと共寝してやるかな。
「今日は一緒に寝よう」
俺の言葉にコンロ役を務める四男の絶対零度の視線が返される。
「前から思ってましたが私はもう十六です。親と寝るのはおかしくないですか」
「全然。親子になって数年しか経ってないし」
「殿下と間違えられ襲われたくありません」
「そしたら拘束するだろ。てかおまえのがルベルより身長高いし間違えないよ」
「……こっ、拘束プレイ、、げほっ」
不穏な呟きがしたような。振り返っても真顔でニンジーンを飾り切りする堅物侍女バネッサがいるのみ。え、侍女がやらなくていいのに。
俺が率先してやるからか、なんかごめん。
ため息をつきリヒトがその場を離れる。絶対添い寝してやろう。
「ただいま、スタン!」
愛しの王子様のご帰宅だ。
「お帰り。今日は鍋だぞ」
「ただいまー、鍋いいな」
てめえはただいまじゃねえお邪魔しますだ! 激辛鍋でも食ってろ!




