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転生オタクの落第騎士、異世界フリースクールの院長になる  作者: 沓子
第三章

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グランドフィナーレ




「おまえから見て弟たちはどうだ」

 たまにはゆっくり親子の語らいをしようとアーサーを呼んだ。

 もうじき十八になるのか、早いもんだ。

 俺はというとルベルが忙しすぎ婚礼がまだ先で、実質婚状態である。

 まあその、実質です! 無事に!

 子どもらが気を遣い父の邸にお泊まり二泊したからその間に。

 ルベルが可愛くて綺麗だったとだけ言っておく。



 帰宅後、ぐったりとするルベルを見てリヒトにケダモノ呼ばわりされた。仕方ないだろ、どれだけ待ったと思うんだよ。

 ニヤケ顔のアデルはアイアンクローしておいた。呼んでないシュバルツがこれまたニヤついてたので腹パンしとく。



 その夜は豪華な食事にしてセルフで祝いを……と思ったら子どもたちがサプライズパーティーをしてくれた。

 リンが三段の美しいケーキを作り、シェフの手を借りたみんなでディナーを用意していた。

〝結婚おめでとう、スタン父様とジルベール父上〟のカードが俺たちの席に。



 泣くのを我慢したが、喉が詰まり声にならない。俯き肩を震わす俺にルベルがそっと寄り添う。

 俺たちの子は最高だな、とかれにだけ聞こえる囁きを落とした。



 プレゼントまであった。竜魔石のお揃いリングに俺たちの肖像画。俺用のエプロンがフリル付きなのは微妙だが。

 無難にペアのカップやシャツ、寝巻きなどなど。一生大事にする。

 遠征中で不参加の父上からは手紙と生前贈与の書類。母上の遺産全てと父上の資産半分だ。

 手紙は出席できない悲しみが半分以上を占めていた。予めジョシーにその日の絵を何枚も発注していたらしい。父上の寝室が魔国の祭壇みたいになってそうで怖い。

 家族連れで海外漫遊してるらしいヘルマンさんとマイヤーさんからも祝いが届いてた。

 なんとヤマトの調味料各種!! と家族全員の浴衣。もちろんアデルたちにも。



 自分で用意してた指輪は間に合わなかったので、子らに散々貶された。魔石リングあって良かった。

 重ね付けするからな。




 話が逸れた。アーサーだ。

 すっかり落ち着いたアーサーはそりゃもうモテる。

 とびきり強くてカッコよく優しく頭もいいんだ、モテない要素がない。多数の推薦により騎士団を受け文句なし合格。イザベルやシュバルツと共に働いている。称号に驕らず気さくで礼儀正しいアーサーは人気者だ。



「養子ではないですが、僕は弟と思ってるアデルとキース」

 うんうん。

「ふたりはとても安心して見ていられます。ムードメーカーですし普通に健全に、親の愛情を受けて育ったんだなあと。アデルたちを見ると安心します。きちんと生き筋が通っている。少し放っておいても何かあっても大丈夫。自分で立ち上がる力があるし家族や恋人が寄り添ってくれる。キースは叙爵したせいかより頼もしくなりました。要領もいい」

「俺も全く同じ意見だ。さすが長男、よく見てる」

 アデルは女を見る目がないかもだから気を付けておくけど。



「リンも心配いりません。最初は引っ込み思案でしたが、今は素直に甘えて拗ねて怒る。甘えるべき時期にたくさん甘えられた子は、しっかりと大人になります。きっと素晴らしい魔王になるでしょう。お祖父さんも健在なようだし……よく養子を承諾しましたね?」

 ほんそれ。

「挨拶に行ったらなんか怪我してたんだよな。怖いから詳しく聞いてない」

 比喩でなく血の悔し涙流してたわ。周りからの殺気はすごいし。リンが視線で抑えててカッコよかったです。

 撫でたらニコニコで、魔族はうっとりするのと嫉みの百面相で忙しそうだった。

「実力行使でしょうか。リンはすごく強いし」

「だろうなあ」

「なのに力に驕らない。見習いたいですね」

「おまえたちが闘う羽目にならないで本当に良かったよ」

「もしそうなってたら、四天王始め魔族が命懸けでリンを守ったでしょう。さすがに勝てる気はしません」

 謙遜だな。リン以外には圧勝と見ている。

 だがそれだけ慕われる魔王を屠るのが正しいのかと、アーサーは考えてしまうだろう。

 アーサーは観察眼が優れている。シスターによると頭も良く勉強を真面目にしていたという。



「ハリー、彼はなんだか一番大人な気がします。とても不思議な弟です。僕は時々、何も話さないで隣に座るんです。そうすると心が落ち着く。凪いだ海のような心地良さがある。なんでしょうあれ」

「それは分かる。すごい奴だよ」

 一周回って悟りを開いちまったのか。いや、食に対する煩悩は人一倍だな。

「この間も俺のプリンが気付けば半分になってたが、なんであんなに盗み食いがうまいんだ」

「気が逸れているのが判るようですよ」



「あと、父さんのを食べてしまうのは甘えてるんですね。構って欲しいんです」

「絶対それだけじゃない」

 兄として一目置くアーサー、盗めば取っ組み合いになりそうなジョシーたち、繋がりの深いリヒト、可愛い弟のリン。

 そんな感じで兄弟からは奪うのが躊躇われるんだと思う。

 あれで割としっかりもしてるから、ある日突然結婚するとか独立すると言い出しそうな気もする。まあまだまだ先だ。



「僕が心配するならリヒトとジョシーです。あのふたりはここを離れないんじゃないかな。ルーはまだ大丈夫だと思うんですが体はひとつだし」

「そうか? リヒトはさっさと独立しそうなんだが」

「承知したらダメですよ。ポーズですから」

「そうなのか?」

「一番父さんを必要としていて、そばにいて欲しいと思ってる」

「え、あのふたりは俺を舐めてるけど」

「愛情の確認です。もしかしたらそれが一生続きそうなので」

 そうなんだろうか。




「素直じゃないので甘えられません。まあ本当に鬱陶しがってる節もありますが、……大人にならざるを得なかったので。子ども時代を残酷に奪われたジョシーとルー、厳しい環境で育ったリヒト。どちらも心の傷は深い場所にあって、そう簡単に口にはできない。父さんが必要なんです」

 自分だって苦労したのに本当に優しい子だよおまえは。もう立派に青年だけど可愛い息子だ。




 元から決めていたが、それが正しいと確信できた。

「おまえには子爵家を継いでほしい。俺に子は望めないがそれだけじゃなくアーサーがいい」

「え!? し、親戚とかの方が」

「先方は構わないと言うが、花婿に爵位はあった方がいいだろ」

 アーサーが真っ赤になる。

 勇者に爵位を与えるのは容易いし反対する者はいないだろうが、王家に縛る形にしたくないと当のルベルが言った。ならばうちを継いでもらおうかと父に相談したのだ。二つ返事だった。




「父上も了承済みだ、フォーサイスを頼む」

「父さん……」

「勇者だからじゃなくおまえが立派な長男だからだ。誇りに思うしご両親に感謝してるよ」



 みんな当分は離れない。キースの恋人ユージェニーには劇場運営を手伝って貰ってる。 

 キャストも依頼してるがキースが難色を示している。ヤキモチだ。本人は興味津々だからキースが折れるのも時間の問題かな。



 気が早いがアーサーたちの新居は敷地内に建てる予定。ふたりの希望でそうなった。

 エレーナが弟たちを猫可愛がりしているが、みんな素直に応じている。ちょいジェラシー。

 母性かなあ。



「忖度もありますよ」ある日ジェラってたらリヒトが言った。

 おまえも読心できんの?

「父上は分かりやすいから。みんな義姉となる方に気を遣っているんです。拗ねないで」




 そんなこんなでフォーサイス家は今日も平和。時々魔族が降って湧くがリンに瞬殺(死なない)されている。アーサーや俺に挑むのもいて良い鍛錬になる。俺はともかくアーサーにとは自殺願望あるのか。殺さないが。

 よく家が壊れるが魔国から貴重素材を持ってこさせ修理代にしている。



「諦めないでくれてありがとう、スタン」

 ルベルも変わらず可愛く愛しい。何か一つ違えば俺たちの道は交わらなかった。王子と子爵の息子なんて、結ばれようはずもない。

 転生し騎士にはなれず、転職し子どもができて生涯の伴侶に恵まれて。

 世は全てこともなし。

 




「父上、いえフォーサイス先生。〆切が半日過ぎました。進捗は」

「えっ」

 忘れてた!!

 誰かアシ頼む!!!




            ~fin~


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