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転生オタクの落第騎士、異世界フリースクールの院長になる  作者: 沓子
第三章

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息子たちの現在





 ガーランドと王妃のその後について語っておこう。

 ガーランド本家は取り潰され財産も没収され、調べうる限りだが殺された分家筋のメイカーの遺族への補償に回された。殺人については繋がる証拠がないので、そちらでは裁けない。

 無念だが神の言葉は証拠にはならん。これらは全てルベル指導のもと。



 逆恨みした刻印者がジョシーの襲撃計画を立てただけで雷が落ちた。顔半分、刻印のない方が焼け爛れたそうだ。

 恐れ慄いた残党はひっそり暮らそうとしているが、神を怒らせた刻印者のことは周知されている。分家からの恨みも買ってるしどうなるやらだ。公的な監視はしばらく外れない。

 直接手を下そうかと当事者のジョシーたちに尋ねると「必要ない」と返ってきた。

 どのみち悲惨な末路だと神に言われたらしい。



「マヌケ父様が手を汚す価値なんか奴らにはねえから」

「そうそう。それより親父は清い体を卒業すんのガンバレー」

「おまえなあ」

 ルーとジョシーのふたりがこうして交互に話せるようになったのは、みんながルーを別人と扱い出したからだという。

 まだしばらくはここに留まるみたいだし。



 本当に疑問だが、ガーランド本家はジョシーを養子にするなり出来なかったのか。そう口にすれば居合わせた奴らに生温かい目で見られた。

「世界全てスタンなら平和なのに」

「スタンレイさんは貴族向きではないですね」

「本家の面子が潰れると考えるんです、普通のプライドの高い貴族はね。殺すのは浅慮に過ぎますが」

 ルベル、デーデ、リヒトとロイヤル連中に流れるように言われる。デーデも魔王族の血を引くらしい。

 前世庶民なもんでね。



 王妃派の主要な手駒に次々と不祥事が発覚した。だいたいハリーの助けを得たリヒトと俺の暗躍による。

 俺に任せろと言ったが、「兄嫁なんですよねアレ…」と疲れたように返すのみ。身内の始末はするという事なんだろう。

 例のパーティー参加予定者は徹底的に潰した、と言いたいがほぼ魔国お持ち帰りとなった。子爵がべらべら吐いたんだろう。子や孫を、親族を殺された者たちがありとあらゆる責め苦を与えていて死なせてはもらえない。

 俺が遺族なら同じことをしている。



 俺の担当は元同級生だ。未遂だからあまり無体な真似はできないが、それなりの報復はさせて貰う。

 ルベルにしようとした事は許せる訳ない。

 手始めに「子爵のパーティーに参加予定だった」と噂を流した。どのパーティーとは明言しない。

 今なら人々の頭にはあの虐殺集会が浮かぶ。言い訳してもならなんの集まりだとなる。

 まさか王太子となるルベルを弄ぶ会だと言える筈もない。

 半狂乱になった親に半殺しにされたり貴族社会からハブられているが序の口だ。



 あの一件で王兄、王弟リヒト、前宰相、勇者、ついでに超人気マンガ作家までが第一王子派を表明した格好になった。キングメイカーが王太子に指名したのが決定打となり立太子はもはや確実で譲位も近い。大勢の中で現王は紛い物と言われてしまったしな。

 まあ王妃が失脚したんで急ぐ必要はないんだが、王が使いものになってないし早い方がいいだろう。




 王子二人はやはり王の胤ではないと判明した。ルベルの異母弟ですらない赤の他人だ。

 ジョシーの言葉通り、実父の家系には男子のみに伝わる特殊な遺伝病があり第二と第三どちらも遺伝しているそうだ。

 血友病みたいなものか。

 国は大騒ぎとなった。



 王妃は病気療養と称した幽閉生活に入っている。時を置いて毒杯を賜るのだ。

 簒奪を企てた罪は軽くない。実家の侯爵家は取り潰され父である侯爵は斬首刑。楽な死に方に納得はいかないが、元王子たちには真実を伝え遡って除籍ののち修道院か辺境警備を選ばせた。実の父親は既に処分されている。

 今の王子はルベルのみだ。 



 自らは偽りの王だと指摘され王妃の裏切りもあり、王は憔悴しきっているそうだ。

 俺からしたらザマァとしか言えない。息子の現状から目を逸らし続け苦しめて今更自分可哀想かよ、アホか。

 自分より兄の方が王に相応しいと昔から悩んでいたらしいが、なら辞退すればよかった。現王の選出では王妃の実家がガーランドと結託したと見ている。

 ルベルとの関係も微妙だと聞いた。父親を恨んではいないが、親らしく守ってもらった記憶もほぼない。王にも自覚はあるらしく、ぎこちない態度だという。

 波風立てず弟を王位に就ける心算をしていたのは明らかだ。タチの悪いことに、あの王妃を愛してたらしいんだよな。趣味悪りぃ。

 



 余談だが、弟王子に付き纏われてた乙女ゲームヒロインぽい少女はストーキングに閉口していたらしい。文官目指して入学したのに勉強の邪魔ばかりされた、と。気の毒に。

 王子が消え取り巻きも別人のように萎れているそうだ。



 そうそう、怪談が実話だと予定してたメンツにバラしてやった。覗きは良くない。

 ネットの話だから真偽不明だがな!

「え、異世界の話だけでなく全部……?」

「こちら風にアレンジはした」

 青くなるアデルにキース。ジョシーは平気そうにしてたが後からルーに聞いた。夜中のトイレはルーに頼んでるって。

 ハリーはぽつりと「生きてる、ほうが、怖」。ほんとそれな。

 前も言ってたが、若くして人の闇を知るハリーの言は重い。

 後でリヒトが俺を睨みながら藁人形みたいなの持ってたのが気になる。執筆中の怪談本2にある呪いネタだけど何するの? 俺のブラシを持ってくのはなぜ? あ、髪を取ってキレイにしてくれんのねありがとう。

 恐い。



 うちの息子に求婚が止まないのが頭痛の種だ。特に勇者アーサーは引っ張りだこ。

 だが残念、既に売約済みだ。

 アーサーはエレーナと文通やデートをしている。勇者と知る前から想いを寄せていた彼女には俺も好感しかない。

 奥手なアーサーも自覚はしてるし、ドワイエ家はふたりの関係を大歓迎している。アデルと義理の兄弟になる日もそう遠くない。

 あと自分こそ勇者の生みの親! って親親詐欺大量発生。面倒なので神様に「親どうしてるか教えて」とダメ元で祈ればあっさり判明した。

 孤児院に記録あった。旅の商人で野盗に襲われて亡くなっていた。子に覆い被さり守っていたと思しきご遺体だったという。アーサーの名前は二歳にも満たなかったかれ自身の言による。とても身綺麗にしており栄養充分な愛らしい幼児だったという。

「あなたは愛されていたんですよ」

 シスターはかれが成長したら話そうとしていたからアーサーにも初耳で、話を聞き涙していた。

 親に愛されていたと思えるのは大きな財産だ。



 キースはもうじき家に戻る。一見憂いを秘めた美少年、いやもう青年か、は実に普通の健全男子だ。ちゃっかり出版関係の女性と付き合っていて俺にも挨拶に来た。これも姉さん女房カップルだな。

「マンガの師匠で剣の先生で恩人。兄みたいな存在」と紹介され涙目になる。彼女は彼女で「マンガの神にお会いでき光栄です!」と感激してくれた。

 嬉しいけど畏れ多いからその呼び方はやめて下さい。

 有能そうなキリリとした人で、タ◯ラヅカなら男性役の花形っぽい素敵な女性だった。流麗な美形と端正な美形でとてもお似合いだったよ。

 背丈も同じくらいなので、俺のなかで攻め受けの概念が混乱しそうだったのは黙っておこう。

 一段と精度を増した圧縮は領地整備に役立っている。平和的に使えるのはキースも嬉しいだろう。正しい力の使い方だ。

 キースについては何も心配することはない。地に足のついた、リヒトとは違うタイプのしっかりさんだ。




 リヒトは変わらず売れっ子マンガ家。ポッポー原作劇の演出まで手を出している。やる事なす事当たる金の手の持ち主だ。過労死するなよー。

「王族は重労働に耐える血が継がれるので」とかもう、バブル世代のリーマンじゃないんだからやめてくれ。

 宰相相談役のマイヤーさんにリクルート的猛アタックを受けている。

「私が筆を置いたらあなたが恨まれますが? あなたも定期購読していますよね?」ととりつく島もない。

 藁人形で俺の不能一カ月を呪ったらしいが、気づかなかった。

「……殿下とデートしてますよね?」

「健全なお付き合いですが何か」



 驚愕しているが忘れたか。王族には婚姻まで貞節だか純潔の縛りがかかってるだろ。離籍したら関係ないが。

「種を撒く場合のみですそれ」

「ええ!??」

「男同士で意味ないでしょ……父上はもう少し思考する習慣を身につけて下さい」

 そうですね。しっかり者すぎて父さん心配だよ。



「もっと子どもらしく甘えろリヒト。ハグさせて」

 両手を広げさあ! と構える。

「………」

「キモ」

 無の表情が板についてんなー。ジョシーなんかゴミクズ見る目を向けてきてるのに。

 寂しいから飯で釣ろう。

「ジョシー、ルー、飯のリクエスト受けるからハグさせてくれ」

「ハンバーグ温玉乗せにチョコケーキ」

「おれはヒラメのムニエル、レモンバターソース!」

 魚高いけどいいよー。ギュッとすると肉がついたのが分かる。細かったよなあ。

「僕! もハグ! 交換! 条件」

「オムライス追加な。ハリー、おいで」

「ポトト!!!」はいはい。

 リンがとことこやって来た。人間と違い成長が遅いからまだちびっ子可愛い。よっしゃ来い! アーサー! リヒト引っ張ってきて! プリンアラモード付けるから! 今日は突発パーティーだ!

 アデルとキースは避難している。後で可愛がってやるぜヒヒヒ!



「……やっぱり親子か……」

 四男の呟きなんか聞こえないぞ。





 ハリーは食べ歩きを覚えた。結果、グルメレポ爆誕。間に入る四コマと料理や店のイラストは手がめっちゃ早いポッポー先生だ。必然ふたりで食べに行ってる。

「王都ぶらり食べ歩き」は大人気となり、旅行者必携ガイド本となっている。各領地からうちのもお願い! と懇願されてるので、今度みんなで出掛けよう。

 かなり普通に話すようになったが、リヒトのお願いの後は以前に逆戻りするのですぐ判る。ルベルの助けになる情報も多いのであまり注意できんが……。

 この二人は結びつきが強いから互いには無理をさせないだろうと思いたい。

 どんなに美味しい店に行っても一番好きなのは俺の手料理のままらしい。泣かせる。

 俺の記憶の最後のピースを解いてくれた恩人でもある。



「なあハリー、あれどうやったんだ」

「んー、見えた。壁? 塊? やわい。触るとボロッ」

 新しい能力なのかはまだ不明。ハリーは俺の何を壊したのだろうか。

「おまえを返せって親が来た。一応聞くが戻りたいか」

「スタン、は知らない。僕、家の、道具だった」

「望めば潰してくるぞどうだハリー」

 首を横に振る。ちっ、仕返ししたかった。

「ご飯おいしい。リヒトとは対等。食べ歩き楽しい。みんないる」

 そうだな。今が一番だ、忘れちまおう。ハリーの場合、まずマイヤーさん紹介のノームコア公爵家に籍を移しそれから俺にという手順。ハリーの家の寄り親に当たるので黙らせるためだ。

 グルメレポの大ファンでハリーの個性的な性格と賢さも気に入ったと言い、苗字を残して欲しいと懇願された。

 名前長くなるけどいいよなハリー。

 ハーラン・ノームコア・フォーサイス。いい名前じゃないか。



 ぐしゃぐしゃになるくらい撫でると、迷惑そうなちょっぴり嬉しそうな顔があった。

「触った。ご飯リクエスト。カツカレー、ポトト、ハンバーグ」

 嬉しそうなのはそれで? ちょい悲しい。お触り即払いのキャバクラかな? そんなんないけど。




 魔王リンは魔国ではもはや神にして揺るぎなきトップアイドル。

 各家庭にはオタク的祭壇が作られている。目眩がしそうだが本当なんだ。前世で見たアレまんま。

 四天王の三人が側近の座を巡り頻繁にデーデに挑んでくるせいで顔見知りになった。

 会うと五体投地するのでリンは嫌な顔で叱るが、それすら愉悦だという。

 魔国大丈夫か。



 それがどっこい、国はこれまでにない程に安定し繁栄している。人間との交易も盛んになった。

 ルベルの戴冠式で友好を築く調印式をするそうで、その時に魔王の名乗りをあげるらしい。恋人と息子の晴れ舞台にドキドキが止まらない。

 どうも魔王の気性がそのときどきの国民性と密接に関わるらしい。加えて絶対強者に支配される喜びにより、労働効率が劇的に上がるとデーデ。

「リン様の養父、、なんと羨ま憎たらしい。全身ハゲて胸毛一本になればいい」

「毎朝毎晩、その幸運に対しリン様に感謝を捧げ奉り讃えよ。我が祭壇を築いてやろう」

「リン様、わたくしあやつめそっくりになれます。廃棄してよいですか」

 といった頭のおかしな事を言われるが、すぐにリンがしばく。彼らにはご褒美です。

「リン、幸せか」

「うん! お父さん」

 うっ、かわ、かわ、きゃわわわ! わーやだホントに親父の血だこれ!

 好き放題リンをハグしてると妬み怨みの念が飛んできた。唇噛み締めて血が出てるぞお笑い四天王。つか二名は魔国ハウス! 帰らんとしばくぞ、勇者が。

 うちで飼ってるのはおとぼけ従者犬と元ホームレスメイドだけです。うん、増えた。




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