3ー10
「「「!?!?!????」」」
俺含む大人は絶句してしまう。
ディーが何故か結界を張ると、リンが抑えていたらしい魔力を解放した。
濃密な魔力が渦巻く。なんだこの馬鹿げた魔力は。国が吹っ飛ぶぞ。
傍らにはデーデが膝をつき深くこうべを垂れている。
「リン……」
「でもぼくは魔王の仕事はやらない。何人かけんかをしに来たけどぼくの勝ち。ちゅうせい? をちかうって」
「加勢に行ったらもう終わってたしな」
「い、いつの間に……さっきは魔王と闘うムーブしてたろおまえら」
「その方が盛り上がるだろ」
「違いますアデル。危機感を煽りどさくさで父上の結婚と殿下の継承を認めさせるためです。ギル……、ジョシーの覚醒で不要になりましたが」
「あと俺たちがいないと魔王に勝てないよって脅しだな。アーサーもキースもリヒトも、それからジョシーもいいよなあ、超カッコよく目立ってたじゃん」
アデルが羨ましそうに口を尖らせる。
「心臓バクバクだったよ……」
「アーサー兄さんはさすゆうでしたよ」
みんなで隠してたのか、俺に。お父さん結構ショックなんだが。
「リーンハルト様はさいつよですゆえ」
デーデが立ち上がり綺麗にお辞儀をする。リンに挑んで来たのかこいつ。もしかして四天王の一角?
「ぼくが倒されなければつぎの魔王は生まれないって。誰かあばれたらやっつけに行くからって言っておいた」
「魔族は強い者に心酔します。四天王を瞬時に倒したリーンハルト様は既に尊敬を集めています」
「魔族的にはいいのか。人間界で暴れなくても」
「仕置きを受けたくて直接リン様のもとへ来るでしょうね。我々は強き王を戴くことが何よりの愉悦。ちっぽけな人間に構うより大事なのは王のお心に添うことです。人間と同じく国を作っている、それが魔人というだけの話。あちらは宰相やら前陛下が回すでしょう」
あっ、マイヤーさんが目頭押さえてる。元宰相の名前やっと思い出した。種族は違えど共感と同情を感じるんだな。
「次代の魔王とされていたのに人間のオスを愛し、反対する陛下をぶっ飛ばして半殺しにし出奔した姫様そっくりの強者です、ああ、もう一度あの魔法を食らいたい……」
うっとりとリンを見つめるデーデ。え、母親が魔族だったん? てっきり父かと。
「城を破壊し兄殿下を薙ぎ倒し、我ら四天王を歯牙にも掛けない……ディスティファニー様……よく似ておられる、、このディディエ、誠心誠意リン様にお仕えします」
「デーデはぼくに負けたあと四人で戦ってぼくのとこ来た」
「リン様側仕えの座は私のもの! 奴らが来ればまた血祭りにして差し上げましょう」
呆気に取られるばかりの俺に四男が寄って来た。
「言ったでしょう、大丈夫だと」
なんだこの状況。
「……とりあえずアーサー、大丈夫か」
「───聖剣召喚しそうでむずむずするけど、リンは弟だから」
「アーサーお兄ちゃん、ぼくが魔王できらいになる?」
「まさか! 僕だって勇者だけどリンはいいの?」
「さいつよお兄ちゃんはカッコいい!」
「さいつよはリーンハルト様です!」
「デーデうるさい、どっちもさいつよでぼくはリン」
「大変申し訳ありません!!」
うん、漫才ってより新喜劇かな?
「ぼく、四天王が来たときに家族を守りたいって思ったらさいつよになったよ」
「リンーー!」
「リンくん、健気すぎる……!」
「……!! 本当に細かい所までディスティファニー様にそっくりな……、」
滂沱の涙を流すデーデ。俺も父上も号泣しリンを抱きしめた。大人の熱量に子どもらは押され気味。あ、シュバルツが唖然としてるな。子どもらは冷静だ。
代わる代わるリンを撫でるアーサー、ディー。ジョシーは右手、ルーは左手で撫でている。ハリーはハイタッチだ。大人たちを苦笑で見守るアデルにキース、そして微笑むルベル。
俺の幸せはここにある。
「全力で魔王を、息子を守るぞ!」
えいえいおー、とリン自身が気勢をあげるとまたすごい魔力が漏れデーデが拍手する。
あ、護り不要そう。
「リンくんは凄いねえ。さすがスタンの息子だ。私はおじいちゃんだよー」
「おじいちゃん?」
「だよだよ~。お膝においで。可愛いなあペロペロしたい」
なあ父上、魔王ってとこにもっとリアクション欲しい。あとキモ。
「ジジイきもい。あっち行けハゲ。ルーが刺していいか聞いてる」
「さすがにダメだぞ、ルー」
「禿げてないよージョシー君は照れ屋さんで可愛いねえ。ルー君にも会いたいなー。おいでおいで、ハーランも。みんなにクッキーあげよう。アーサー君にディーも。キース君もアデル君も!」
「ありがと」
「ん。じじ。」
「じじだよー!」
「クッキーはキモくない」
「あ、どうも」
「餌付けで甘やかさないで下さい、お祖父様」
「もう一回! もう一回言って!」
「父上」
「なんかすまん」
反射的にディーに謝る。
「いえ、ディディエと紛らわしいので呼び名をリヒトにしてください」
「え? なんかコメントないの? アレ」
「……父上とお祖父様は親子だなと」
「!!!」
ショックを受けよろめいた俺をルベルが笑いながら慰めてくれた。
とまあ、いろいろ大変だった。
子どもらを寝かしつけ、ルベルと夜の散歩に出た。明日から超多忙になるだろうし今日はゆっくりさせてやりたい。
魔王と勇者とキングメイカー、すごい能力と才能を持つ子どもたち。俺が父じゃ役者不足だけど譲りたくは無い。
「……後悔してない?」
「おまえこそ」
「夢を見てる気がする。起きたらスタンはいなくて、横にはプラントがいるんじゃないかって。現実だとしてもきみは私に同情して」
「なあルベル」
立ち止まり向かい合い見つめ合う。何を話すのかとまだ不安な眼をしているルベルにそっと触れるだけの口づけをした。
「──────」
「一目惚れだよ、長い片想いだ」
固まったルベルが段々真っ赤になり、やがて涙を溢し始めた。抱き締めて全部受け止める。
おまえの肩にかかる重責は計り知れないけれど、一緒に持てば少しは軽くなるさ。
頼もしさしかない子どもたちもいる。俺の、俺たちの可愛い自慢の息子たちだ。
明日、みんなを集めて話をしよう。異世界から来た俺のみっともなく迷走した半生を。俺が怪談として書いた世界は実在するのだと。今覗き見してる奴らには怪談が全て実話とされているのも教えてやる。早寝の長男と末っ子以外の全員にだ。
うちの人格者は勇者長男に魔王末っ子のツートップです。
今こそ胸を張って言おう。転生し父モリスと母アリーチェの間に産まれたフォーサイス子爵家嫡男、もうすぐ伴侶ができる。マンガと料理、剣を嗜む落第騎士にして元リリサイド修学院院長。
まだ未婚だが六人の可愛い子どもたち、そして弟分ふたりがいて幸せでしかない。
スタンレイ・フォーサイス。それが俺の今世の名前だ。
今の心配はあちらの腐女子さんが電波をキャッチして、俺のことで妄想しないといいな……って長閑なものだ。
いやホント受信止めて!? 彼女が読み専で良かったー。
【第三章 終】
※神が教えた友人たちの記憶はしまわれたままなので、腐女子氏が描き手デビューしたのも覚えていません。南無。




