3ー9
静寂。
歪みを産んだ元凶たちが周囲から睨まれている。危うく国を滅ぼしかけた奴らだ。
不思議と疑う声は上がらない。キングメイカーの威容は何も知らない人間にも伝わっている。
『あと俺が次のメイカー指名すっから、神様と一緒に。そーいう仕組みになったんで。俺死んだらメイカー不在、よろしく~。もう暗殺者は送り込むなよガーランド』
「ふ、ふざけるな!! 何がキングメイカーだ、おかしな魔法で惑わしただけだ! ジルは私と結婚するのだ、そうだろうみんな!」
豚が言葉を話し出した。変態仲間が曖昧に賛同する気配を見せている。もう斬るか。
「みなさーん、注目! 私、魔族の四天王ヴィヴィアンです⭐︎」
「「「「「!!!!」」」」」
四天王だって!? 宙に浮かんでいきなり割って入ったセクシーな女は人間に見えるが、二本の巻き角がある。なんでまたそんな大物が。
もう何に驚けばいいのか判らず戸惑いと魔族四天王への恐怖で議場は大混乱だ。
「そいつねー、私たちの仲間を拉致して散々いたぶって何人も殺してるの。だからうちに引き渡してくれる?」
「出鱈目だ!!」
「往生際が悪いな。我らには見えるぞ、貴様
に取り憑く同志の怨念が」
デーデが吐き捨て魔法を発動する。
『真実のみ答えよ、彼らに何をした』
「バケモノをどうしようが勝手だ! っ!? お、オスもメスも見目だけは良いから愉しめたぞ! 隷属させ弄び最後は同士討ちさせてやったわ、親が子を、夫が妻を泣き叫びながら殺したのはいい見ものだった!!──な、何故だ! 嘘だ嘘だ!!」
「……なんてことを、悍ましい……」
「奴こそ本当に人間か?」
「狂ってる」
「───それを一緒に楽しんだ者が、この中にいるのか?」
「気持ち悪い。誰なんだ」
「今すぐわしの剣の錆にしてくれよう……相手が魔族とはいえ非道すぎるぞ」
不快を表しながら周囲を見回す人々。
「お聞きの通りですわ。豚、全て話してもらうわよ。一緒にいた連中の名前もね」
所々から小さな悲鳴や息を飲む音がしてくる。
「王、いいですわね? 魔族の怒りの矛先が国全体に向かうのはお嫌でしょう」
存在感が全くなかった王にヴィヴィアンが問い掛けた。
「……自白があり証人が大勢いるからな」
「陛下! 王が魔族ごときに従うなど」
会議前まで上機嫌だったろうクソ王妃が往生際悪く喚く。
「う、うむ。それもそうだ。人は人が裁くべきでは、四天王殿」
あんたはこれだから信用できないんだよ!
「ガタガタうっせーなあ。偽りの王様に不義の子を産んだ女」
王の言葉を遮りギルが言い放つ。俺たちは聞いていたから驚きはないが、議場の人々は呆気に取られていた。
「「!!?」」
「今回は緊急事態だから神様が全部伝えてきてんだよ。あんたの息子二人は王の血なんざこれっぽっちも流れてねえし器でもねえ。調べてみな、父親の持つ家系由来の疾患が遺伝してっから。即位したら簒奪だし国はすぐ傾く。偽りの王から適性者が産まれて国が助かったんだぞ、ジルに感謝しな王様」
「……王妃」
「な、う、嘘よ嘘よ!! わたしの子が王になるのよ!!」
現王にも資格がないと暴露したな、俺もそう思う。悪い人じゃないが意思が弱い。器じゃないんだ。本来は王兄のヘルマンさんだった筈。
恐ろしいくらい静かだ。いつの間にかヴィヴィアンと子爵が消えていた。
手を下せないのは残念だが、俺よりよほど復讐の権利がある。苛烈な罰が待っているに違いない。
「王よ、今日はこれで解散とするべきでは。色々あり過ぎてみなが混乱しています」
「……兄上」
教会長の格好をやめたヘルマンさんが国王に進言している。錯乱した王妃が騎士に囲まれて退場していった。
場内に騒めきが戻ってくる。俺たちも今のうちに逃げよう。
「あ……、ポッポー先生、さ、サイン」
「勇者に挨拶を!」
「キングメイカーはどこだ!? もっと詳しく話を聞きたい」
「ジルベルト殿下が王太子で決定なんだな?」
俺やキースの名前もちらほら聞こえてくる。やばいな。ハリーとリンはこれ以上人目に晒したくない。
「ルベル、行けるか」
「……人数が多いけど、とりあえず近くなら」
「じゃ予定通りうちのタウンハウスに」
「リン様は私にお任せを」
アデルとデーデの言葉に頷く。
「私は知ってたよ。だって君の養成所と騎士見習いの時のケンカって三十六件中、二十七件が殿下絡みだもの。決闘は五回のうち三回。私への陰口は聞き流す事も多かったって話だけど、殿下のは全部拾っていたようだねー」
出た、俺が把握してない内訳まで知るストーカー親父。しかも拗ねている? 馬で追いかけて来たのはさすが副騎士団長なのか、ストーカー乙なのか。
ヘルマンさんと元宰相も一緒だ。なんかシュバルツまで追ってきたのか。野郎しかいない。むさ苦しい。
ドワイエ家は突然やって来たVIP含む大人数の客に困惑しつつ迎えてくれた。王子に公爵、元宰相だもんな。彼らはまだ知らないが、加えて腹違いの王弟、勇者、有名マンガ家勢揃い。
ドワイエ夫人が「終わったらとりあえずうちに来てください」とあらかじめ手筈は整えてくれていたが、面子がな。
一連の騒ぎの内容が伝われば屋敷を取り囲まれかねない。
「しっかし疲れた。延々パズルみたいなんやらされてたんだよ、覚醒の為に」
ギルが長椅子を占領しへたっている。
「パズル?」
「それが解けないとリストへ辿り着かない。リストが見れないとメイカーとしては認められないし正しい王を選べない」
パズルの詳細は言えないし、既に記憶から薄れているらしい。
「おまえの名前、本名に戻そう。ジョシーって呼んでいいか」
「いーよ。父上にもそう呼ばれてた」
「ルーもお疲れ」
「オレは応援だけだよー。手出ししちゃダメなんだってさ。パズルで覚醒とか訳分かんないね」
「それでもお疲れさん、心強かった筈だ」
「ほんとほんと。ルーありがとな!」
ギル改めジョシーが果実水を一気飲みしまた話し出す。
「昔はきちんとやってたんだよ奴ら。でもある時に庶子に渡って、その子を本妻が怒りで殺めたのが始まり。殺したら自分の息子に発現しちゃって味を占めた」
「問題しかないシステムじゃないか」
「ほんとにな。本家にもメイカーが生まれたり、たまたま正しい王を選んでたりしたのが救いだね。それが無けりゃこの国は今頃」
言いながら手でバッテンを作る。
「ギリギリで助かったんだねえ」
「……私たちの役割はこれでしたか」
ヘルマンさんと、元宰相……名前が喉まで出かかってるんだが。
と、リンが挙手したので「どうした?」と問い掛ける。
「あのね、ぼく魔王になった」
「は? まお?」




