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転生オタクの落第騎士、異世界フリースクールの院長になる  作者: 沓子
第三章

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18/32

3ー4




 ゴミ回収に再び父上がやって来たので教会長と出迎えた。

「やあ、先日ぶり」

「父上、わざわざ来なくても良かったのに。間をおかず往復は疲れるでしょう」

「い、いや。職務だからな」



「スタンレイ、この縛り方は良いな。抵抗すると縄が締まるのが」

「………」

 一応女性にはやってない。ディーは紳士だからな。

 父上、王国騎士団に正式採用とかしないよな?



 罪人たちを馬車に放り込み、改めて俺に向き合う父の眼に明らかな愛情を感じた。こんな落ちこぼれの息子を?

「……スタンは偉いな。いきなりここに押し込めて悪かった」

「いいえ、色々ご迷惑をかけてすみませんでした。俺は楽しくやっています」




「マジ偉い。すごい。ジルベルト殿下からもお礼の言葉を賜った。本も全て読んでいるしレシピも試した。アリーチェに似て多才だしハンサムだしな。きみは優しいから子どもとうまくいくと思ってたよ。良い息子を持って幸せだ、アリーたんに感謝せねば。ああ本当に可愛くて強くて最高だな私のスタンレイたんは」

「「!?!?」」



 なんだなんだ今のは。

「わわわ私は声に出してない!! たしかにスタンレイたんは世界一可愛いかっこいいイケメンで最高だけど!!」

「ち、父上?」



「情報、開示」

 隠れていたハリーとディー、教会長が出てきた。

 何故か俺が教えたヒーロー変身ポーズをするハリー。ハキハキしてて分からなかったがさっきの声はハリーだ。

「ハリー、やってしまったのかい」

 諦めの風情でディーがぼやく。

「ん」

「やれやれ。副団長、かれの能力も極秘で」

「読心、か」

「ええ。姿が見えなくても読めます。もちろん100%とはいきませんが」

 普段あまり話さないのは、読み出すと口が勝手に動き疲れてしまうから。

「そしてその範囲は、───大体ここから王都までの距離」

「え?」

「!!」

 教会長も範囲までは知らなかったようだ。




 知られればありとあらゆる者が欲しがるから隠していたのに。しかしあれを能力披露に選ぶか……。

「ハリーはどこにもやらん、好きな道に進ませる。父上、約束して下さい。王家にも神殿にも、誰にも言わないと」

「私の前で言う事ではないですねえ」

 一応口を挟んでくるが、教会長はまだ俗世どっぷりだ。てか正式に出家してねえだろこれ。



 しかしそれなら。

 ハリーは俺とスタンの事も知っている?



 ハリーとディーに部屋に戻るよう教会長が促すと、父上が勇気を振り絞るように聞いてきた。



「スタンレイ、その。」

「はい」

「な、撫でていい、か」

「……どうぞ」



 何年振りかに頭を撫でられる。

「もう私より背が高いんだな」



「副団長の妻子への溺愛は騎士団で有名ですよ。なんでも寝室には肖像画だらけだとか」

「ヘルマン様、絵だけじゃなくぬいぐるみもあります」

 キリッ! じゃないよね父上。まさかそれ店に注文したの?

「俺は、てっきり呆れられてるかと」

「どうしてだ。スタンの起こしたという問題も門限破りも全て裏を取っている。私や殿下の名誉のための怒りだ。それにやたくさん善行をしているじゃないか。チンピラが絡んでくるのは事故だ。アリーもよく頭のおかしな令嬢に絡まれたものだ。あとの事例は若気の至りだろう」

 えっ、息子のストーカー父!?



「とは言えここへ送ったのは、スタンが騎士にならねばと気を張りすぎて空回りしていたからだよ。そして少年たちの心を開いてくれると信じたから。あと、今の王族のもと騎士になるには、君のように真っ直ぐすぎる子は難しい。仕える相手によっては特にね。息子を潰されたくなかった」

「……そう、だったんですか」

 自惚れではなくスタンは強い。普通に騎士になっていればルベルの護衛にはなれず弟王子に付けられたはずだ。

 絶対に腐ってやる気を無くしていただろう。



「父上、今は騎士に拘りはありません。こうやって子どもと関わる仕事が天職の気がします」

 そうか、と温かな声が返ってくる。

「おまえは世界一の息子だ」

 胸の奥の蟠りが溶けていく。



「父上、スタン……俺の願いは、父上に誇れる息子でありたい、でした。だから立派な騎士になりたかった」

 父上が、優しい笑顔を向けて断言した。

「産まれてくれた時からずっと、スタンは私の誇りだよ」



 見捨てられてなどいなかった。

 ぎこちなく温かな手が頭を撫でる。認めて欲しいひとがちゃんと見てくれる、なんて幸福なことだろう。

「父上……、父さん。───ありがとう」




 スタンの欠けた部分、無くしたと思っていた欠片が心の穴を埋める。多分だけど、こういったのが全部解消されたら俺とスタンは完全に同一化するんじゃないか。

 





「なあ、提案がある」

 あの事件から半月ほど経った日、集会室にみんなを集めた。



「キースとアデルには帰る場所がある。キースはやっと後見人がついたんだよな」

 王妃は一旦手を引いた。誘拐が失敗し叔父夫妻は使えないコマと見做された模様。

「はい。母方の伯父で信頼できる方です」

 寂しいが二人は俺がいなくても大丈夫。ちゃんと手を離してやらないと。

 実際別れる時は多分泣くけどさ。

「良かったな。それでだ、おまえたちの中で先のプランがない……院を出たあと行き場所に悩んでる奴がいれば、だ」



「俺の養子にならないか」

「なる」

「ぼくも」

「早! ハリーは家があるだろ、いいのか」

「スタン、ばか、だか。」

「へ?」

 このタイミングで突然のディス。

「補足よろしいですか」



「編集長は、自分を利用しようと思わないお人好しのバカだからと言いたいんですよ」

「───」

「所で養子は私でも可能ですか」

「いいけどディー、」

「自由に生きたい。そう考えるようになりました。それにはヘルマン伯父上のように離籍しかない」

 おっと。さり気なくカミングアウトか。

「おじっ!? 離籍っ、ディー、おま、いや貴方は……!!」

 普段貴族らしくはないがさすが侯爵令息アデル、理解が早い。

「今更か」と平然としてるキースのが一枚上だが。

「キースおまえ知って──、」

「無論」

「アデル、どうか畏まらないでください」




 他は話についてってないな。

「ディーから切り出したからもういいだろ。皆、聞くだけ聞いて後は気にするな。かれはディートリヒト殿下。先王の庶子にあたる」

「えっ」

「高貴な感じしてたしな」

 あっさりと感想を述べるギル。

 唖然としてるのはアデルとアーサーくらいだ。ハリーは知ってたろう。リンはきょとんとしている。

「しょし?」

「ああ悪い。結婚してない男女の間の子どもだよリン」

「なあディー、王様になりたい?」

 唐突にギルが聞いている。なんだ?

「人の話聞いてますか。自由になりたいんですよ、王になんかなるもんですか。そもそも私は公的には存在せず継承権はないんです」

「継承権はなんとかなるけど、だよなーなりたくはないよなー、そうすっと一択かあ」

「ギル? 何の話だ」

「気にすんなセンセー。候補の……、いやこれ以上は話せねえ」 

 キングメイカー関連か。

 ディーなら完璧王になってノイローゼになるな。




「私は使えるコマです。一応は父であるあの人の為に動くのは嫌ですが、引き取ってくださるならその分は働きますよ」

「利用する目的で養子にするもんか、護りたいんだ。おまえらの心も身体も、未来も」

「何故?」

 不思議そうにするおまえが不思議なんだが。

「そりゃおまえたちが好きだから。いや、軽いな。愛してるからだ」



 きょとんとした後、眉根を寄せて距離を取ろうとする。

「……訴えておいた方がよかったですか?」

「誤解だ誤解! そっちじゃねえ!」

「ディー、清いセンセーだから」

「茶化すなアデル!」

「すぐ愛を口にする男には注意しろと父が従姉妹に言ってたな」

 キースまで!




「まあいいでしょう。熱意は認めます」

 あっはい。ありがとう……ございます?

「父は腐っても王であった人です。説得は大変ですよ」

「分かった。息子の王冠に圧縮かけんぞって嚇してサインさせるか」

「やりませんよ!?」キースが叫ぶ。

 子どもたちが笑う。そうだ、俺が前世で同人やってたのは、俺の本で人が笑顔になるのが好きだったから。

 教師になりたかったのも、学童保育のバイトでの子どもたちの笑顔が忘れられなかったからだ。

 




「ギル。ルーと話し合いしてもいいぞ」

「俺はなってやってもいい。治療してルーを消すとか言わないなら」

「もちろん。だってルーは別人格じゃなく双子の兄だろ、生きては産まれられなくともお兄ちゃんだ」

 俺の言葉にギル以外が驚いていた。

「………」

「ルーの気が済むまでいればいい。生まれ変わりはあるんだよ、またこの世に来たくなったら来ればいい」

 俺という証拠があるからな。



「ぼ……、僕は」

「うん、アーサー」

「一度、孤児院に挨拶に行きたくて。それが済んだら、あの、」

「いいよ。いっそみんなで行くか」

「しかしあなたは益々縁遠くなりますね、いきなり五人の子持ちですよ」

「ルーを入れたら六人だな! 別に構わないさ。独身万歳だ」

 魔法使いは慣れてるよ!




 手続き前ではありますが、とディーが居住まいを正し新しい呼び方で俺を呼ぶ。

「よろしくお願いします、父上」

「と、父さん? よろしくお願いします」

「おとうさん、うれしい」

「父、よろ」

「俺らを食わす為にしっかり稼げよマヌケ」

「父親じゃないの混ざってたんだが!」

 九つ、十一歳、十三歳、十四歳二人(ルー含め)に十五歳。あ、ギルたちはもう十五か。しっかり稼ごう。レシピ出して怪談本もまた書こう。



 俺の口座が大変な事になっていたのを、のちに驚愕と共に知ることとなる。マンガも手刷りじゃなく怪談の出版社任せになり、冊数を確認していなかった。

 最初の王国史に算数本のマンガも出版社行きとなり、怪談が重版出来を重ねていたのもレシピが大売れしていたのも。




「なんかオレも養子行きたくなった」

「アデルにはちゃんと家族がいるだろう」

「あー、けど兄貴も姉さんも口うるさいんだよなあ」

「家族にはならないけど、親戚のつもりで遊びに来ます。先生は兄代わりという事で」

「キースはいいのかよ」

「うん、俺の父は一人だけだから。父様と母様の、あの屋敷を守らないと」

 キースの言葉で良い親だったのが分かる。立派な息子だな。

 アデルも仲間外れが嫌なだけで家族に愛情があるのは知ってるぞ。

 



 しかしそうすんなりとは行かない。

 なんせ俺の子どもらはキングメイカー、前王の庶子、魔族とのハーフ、読心能力者、そしてドラゴンスレイヤーの勇者。

 魔力量膨大な子に反則技スキルの持ち主まで俺に懐いてくれている。国盗りを疑われても仕方ない面子だ。

 ディーとハリーの親は説得が難しい。

 ギルは変わらず狙われるし、ハリーとリンの秘密は死守しなければいけない。

 称号がばれたらアーサーには横槍が入りまくるだろう。孤児の勇者を養子にしたがる貴族なんてごまんといる。

 問題は山積みだが、やるべきをやってくだけだ。マンガ描こう。



 決意を新たにしベッドに入ろうとした時、コンコンと部屋の窓を叩く音がした。この気配は。

「……ルベル!?」

「スタン、逃げて」

 俺が窓を開けるや否や、真剣な顔でルベルがいきなり切り出した。

「いきなりどうした。危険ならおまえも一緒に」

「あたしは大丈夫。危ないのはギルよ」

「あいつは元から狙われてるが」

「少し事態が変わったの」




「ガーランドと組んで王妃が方針を変えた。あたしが立太子してもギルの指名でどうでもなるから。だからギルを誘拐して洗脳なりなんなりして弟を指名させるつもりよ」

「……なんだそれ。今すぐギルにおまえを指名させるのは駄目なのか」

「何か決まりがあるの。あたしもよくは知らない。何より、ギルがメイカーとして覚醒する必要がある」

 覚醒?

「ガーランドに加えて第二、第三王子派がギルの敵に回る。ギルの人質になり得る人も危ないわ。どんな手を使ってくるやら。修学院に立て篭もるのはやめた方がいい。散々対策してる筈だから」

「───俺らが出るのはいいが教会長たちは」

「彼らは大丈夫。王兄と元宰相には手出しできない。いくら王妃でも無理」



「……ガーランドは王妃を陽動に使うのか」

「そう。だからあえて彼女側にギルがメイカーだと打ち明けた」

 厄介だ。

 王妃派はギルの確保を、ガーランドは変わらずギルの暗殺を狙う。手は組んでも方針は違う。〝キングメイカーを手に入れる〟、同じ言葉で違う意味、けど王妃たちはガーランドの目的を知らない。




「少し早いが、アーサーの故郷に行くか」

「できるだけ早く。ガーランドは手を組んだ相手を出し抜くためギルの暗殺を急ぐわ」

「報せてくれて感謝する。おまえも気をつけてな、今日は泊まってくか」

 俺の提案にかぶりを振る。

「ううん、抜け出して来たから帰らないと」

「そうか。転移なら大丈夫だろうが警戒は怠るなよ」

「ありがとう、あなたたちも」

「またな」

「……お休みなさい」



 この時の俺は知らなかった。またね、とは返さなかったルベルの無茶苦茶な選択を。それが、俺たちを助けるためだったことも。






「ごめんスタンレイ、少しだけ嘘をついた。またアイアンクローされちゃうな。もしもまた会えたら、だけど」

 新しく付いた護衛騎士を置き去りにしてしまったが仕方ない。まだ味方かどうか不明なのだから。

 とにかくこれで、かれの大事な生徒の内ふたりは大丈夫。あとはギルさえ守り切ってくれればいい。かれらなら可能だ。





「君たちだけは無事に、どうか───、」




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