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REDSKULL  作者: 文記佐輝
一章『警察とギャング』
6/6

Episode6『警察』

「レッド・スカルズの連中、なかなか落ちませんね。」

「そりゃそうさ、あそこには『狂人鬼』って呼ばれる女がいんだぜ。

アイツが死なねぇ限り、アイツらが落ちることはねぇ。」

「でもよ、さすがにもう限界だろ?

襲い始めてから、すでに二週間もぶっ通しで襲い続けてんだからよ。」

「正直、もう諦めて降参でもしてくれりゃ一番楽なんだがなぁ〜」

男達は酒を飲みながら、ゲラゲラと笑い合っている。

そこへ、一人の女がやって来た。

「…すみません。例の男はどちらにいるのでしょうか?」

その質問に、一人の男が反応した。

「例の男?

…あぁ〜、アイツなら牢屋の中だろ。…どうした?」

「…いえ、ありがとうございます。」

女はそれだけ聞き、背を向けた。

酔っていた男達は、女に近づいた。

「もしかしてこれから仕事?」

「…はい、命令で…」

「そんな事、後にしてよ…、俺達と楽しまねぇかぁ?」

そう言い、男は女の肩を掴もうとした。

次の瞬間、その男は宙を一回転していた。

「ドゥワッ!??」

ドダンッと大きな音を立て、地面に叩きつけられた。

「…お、お前!?」

「申し訳ないのですが、私は仕事人間ですので。」

何かを言おうとした男を遮り、女はそう言い放つと、スタスタとその場を去っていった。

呆然と女の後ろ姿を見ながら、完全に理解できずにいた。

女は牢屋のある扉の前まで来ると、辺りを見渡した。

周りに人がいないのを確認すると、女は素早くその中へと入った。

階段を慎重に降り、監視役が二人いるのを確認した。

女は一度息を整えると、階段を降りきった。

「お前、ここへ何しに来た?」

「…ミゲルさんの命で、ここを監視することになりました。」

それを聞いた二人は、顔を見合わせると、笑った。

「そうかそうか!」

「じゃ、後は頼んでもいいか?」

二人は嬉しそうにそう聞くと、答えを待たずにその場を駆け足で去っていった。

女は、牢屋にいるその男と二人きりになったのを確認すると、入口の扉にロックをかけた。

そして、その男の牢屋の前まで来ると、女は牢屋の鍵を開けた。

「…なんで捕まってるんですか……キラ先輩。」

女は深々と被っていた帽子をヒョイッと取ると、笑ってみせた。


ーーーキラ、一週間前…

気が付いた時には、すでに牢屋の中に入れられていた。

「お前…、一週間もよく寝てられたな?」

牢屋の外から、そんな事を言われ、俺はそちらに目を向ける。

そこにいたのは、大柄な黒人男性だった。

男は、トレーに乗せた食事を、受け取り口らしきところから差し出してきた。

「…お腹空いてるだろ?

美味くはねぇが、何も食わねぇよりはマシだ…、食いな。」

俺は男からそれを受け取ると、空腹に逆らえず、すぐに食事に手をつけた。

何も考えずにかきこんだせいか、食事が喉につっかえたりしたが、なんとか空腹を満たすことが出来た。

食事を終えた俺に、トレーを返すよう要求した男は、先ほどよりも、少しだけ表情が和らいでいるように見えた。

「……その目はなんだ…?…情けない俺がそんなに面白いか?」

俺は自虐混じりに、そう言った。

男は少し笑うと、受け取ったトレーを近くの机に置き、こっちに向き直り言った。

「そんな無駄口を叩けるんなら、もう平気そうだ。」

安堵したような顔に、俺は質問した。

「……あんた、俺を捕まえた奴らの仲間だろ?

…なんで優しく接するんだ?」

その質問に、苦笑すると男は答えた。

「俺はただの雇われだ。

…金のために仕事をしているのであって、人を傷付けるのは性に合わないんだよ。

自分で言うのも変だが、俺はむしろ、善人な方なんだぜ。」

笑顔でそう答えると、男は時計を確認し、「また来る」とだけ言い残しその場を後にした。

入れ替わりで、二人の男が退屈そうにやって来た。

男達は俺に見向きもせずに、二人で話し合っていた。

俺は再び横になり、次の一手を考えるのだった。


ーーー四日後…

ジョンソンと名乗った、雇われの男は、今日も飽きずに食事を持ってきてくれた。

「どうもジョンソン。」

礼を言いながら食事を受け取ると、ゆっくりと食事を始めた。

「四日前とはまるで別人だな。今は健康的な体になってやがる。」

「アンタのおかげだよ。…いつも飯を貰って、ありがとな。」

「改めてそう言われると、少し照れるな。」

そう言いつつも、まんざらでもなさそうだった。

俺はスプーンを眺めながら、彼に聞いた。

「…どうして警察にならなかったんだ?」

「警察?」

突然の質問に、彼は驚いたような声で聞き返してきた。

「…アンタはどう考えても、こういう仕事には向いてない。

それなのに、どうしてこんな事をしてるのか不思議でな。」

「…最初にも言ったろ?

俺は金のためにここで働いてるんだって…」

目を背けながらそう言う彼に、俺はしっかりと向き合った。

「金なら警察でも稼げる。それに、アンタは能力者だろ?

能力者ならそれなりの役職まで上がれる。

役職が上がれば、その分金だって増える。こんな所でちまちま稼ぐよりも安定するはずだろ?」

その返しに、ジョンソンは黙ったまま頷いた。

「確かに、お前の言う通りだ。

…ここは俺には向いてないし、金だって少ししか稼げない。

だがな坊主。」

彼は真剣な眼差しで、俺を見据える。

「…お前のいた環境がどれだけ恵まれていたのか、お前自身は知らないだけなんだよ。

…俺がいた故郷じゃ、警察なんてクソばっかだった。

平気で賄賂は受け取るわ、平気で犯罪者は見過ごすわで、俺は警察にいい印象がねぇんだ。

…産まれた頃からそんな奴らを数多く見てきた。

だから、俺は警察にはならねぇし、なりたくもないのよ。」

そこまで言うと、涙を流した。

彼はすぐに涙を拭き取ると、再びこちらへ目を向けた。

「…お前も警察には気をつけろ。

俺みたいに、大切なもんを奪われちまうかもしれない。」

「アンタみたいに…?」

彼は「しまった」という表情になり、椅子に座り項垂れた。

俺は食べ終わった食事をどかし、彼に一番近いところまで移動した。

「……話してくれないか、アンタの事。」

彼は躊躇したが、やがて離し始めた。


「…あれは二十年前のことだ。

その日は、妻と子供二人の四人でピクニックに行ってたんだ。

初めはなんの問題もなく、ただ平穏があった。

…そこに、またまた居合わせた警察が、突然拳銃を取り出したんだ。

俺は何事かと思って、そいつに聞いたんだ。

すると、『お前を殺人の容疑で逮捕する』なんて言い出しやがって。

俺はそいつに対して抗議したが、聞く耳を持たなかった。

そいつ腹が立ったのか、いきなり銃声を発砲しだしたんだ。

…弾は全部で六発撃たれたよ。

…そのうち三発が息子と、妻に当たった。

息子は首と胸に弾が当たって、即死だったと思う…。

だが…、妻の方は、お腹に一発当たってたんだ。

…それを見た瞬間、俺は我を失って、銃を撃った警察を殴り殺したんだ。

我に返った時、娘の泣き声が聞こえたんだ。

俺は急いで横たわる妻の元へと駆け寄ったよ…。

…その時、妻は言ったんだ。

『マリーだけは、護ってほしい。』と…

娘の名前はリリーだったから、最初は理解できなかった。

だが、彼女がお腹の穴を必死に手で押さえているのを見て、分かったんだ。

…彼女のお腹には、もう一人、生命いのちがあったんだって。

……それからは何も覚えてない。

気づけば、俺が妻と子を殺した犯人だと言われ、それから17年間刑務所に入れられていたんだ。

…それで分かったんだ。

…警察はとっくに腐っていて、市民を守るはずの裁判所も、警察と同様で腐っているんだって。

………だから俺は、警察になりたくもないし、政府の犬になるのなんかまっぴらごめんだってことだよ…」


彼は言い終えると、大きくため息をついた。

「…悪かった。…俺はただ…、いや…悪い。」

「いいさ、俺もこの事を話すのは初めてだったが、話したら少し楽になった。

聞いてくれてありがとな、キラ。」

ジョンソンは笑い、格子越しから手を差し出した。

その手を、俺は力強く握り返した。

最初よりも晴れやかな表情になった彼は、空になったトレーを持ってその場をあとにするのだった。


ーーーそれから二日後…

今日はジョンソンが姿を現さなかった。

監視役に聞いても、「知らない」としか返ってこなかった。

その代わり、食事を一人の女が運んできた。

「…これ、ジョンソンさんからです。」

そう言って、女は紙袋も一緒に渡してきた。

受け取る時、女が小声で話しかけてきた。

「…明日、ここへ仲間が参ります。

明日のため、今日はすぐにお休みになってください。」

それだけ伝え、彼女は去った。

監視役の男達は、彼女の視線に魅了され、ついて行った。

誰もいなくなったタイミングで、俺は紙袋を開いた。

「…ッ!!」

俺は紙袋の中にあった拳銃を取り出し、一緒に同封されていた手紙を読んだ。


『直接渡せなくて悪いな。

昨日、ボスに頼み込んで、今日と明日は休みをもらうことにした。

お前と話して、俺は肝心なことを忘れていたから、俺はもう一度希望を持ってみることにした。

貯めた貯金は一生分とはいかないが、充分満足いく生活ができるだろうから、これからは真っ当に生きてみるよ。

もう会うことはないかもしれないが、もし会ったときには、お前と酒を飲んでみたいものだ。

最後に、その銃は俺の相棒だ。

お守りと言ってはなんだが、それはお前にくれてやる。

大事に使えよ、キラ。』


『忘れていたこと』、きっと彼の中で決心がついたのだろう。

「…ありがとう、ジョンソン。」

俺は小さく感謝を述べると、俺は食事をパパッと済ませ、明日に備え眠るのだった。


ーーー現在。

「…なんで捕まってるんですか……キラ先輩。」

女は深々と被っていた帽子をヒョイッと取ると、笑った。

「モモ、…遅かったな?」

「これでも早い方です。

…情報が入ったのは昨日の早朝なんですよ?」

モモは俺の足枷を取ると、鞄から服を取り出した。

「…やっぱりお前は、気が利くな。」

「当たり前です。先輩の事は、よく知ってますから。」

得意げにそう言うと、背を向けた。

俺は感謝しながら、その服に着替える。

「モモ、レッド・スカルズの状況はどうだ?」

「あっちは大丈夫でしょう。

狂人鬼なる女性がいるようですし、それに、リリネもついてます。

まず負けることはないでしょう。」

モモはすでに服を着替えており、俺と同じように、レッド・スカルズの服を着ていた。

「……相変わらずの早着替えだな。」

「これでも、元潜入班の部隊長でしたから。」

俺はそうだったと思いつつ、ジョンソンから貰った拳銃を、ホルスターに納めた。

「どうします?もう脱出しちゃいますか?」

その問いに、少し考えた後、俺はある考えを伝えた。

「…確かに、少しリスクはありますが…、それは良い考えだと思います。

すぐにリオさんに連絡をしましょう。」

モモはそう言うと、携帯を取り出し、電話をかけた。

俺はジョンソンからある程度教えてもらったマップを、頭の中で再構築し、奴の居場所を絞った。

「…俺たちに手を出したこと、後悔させてやる。」

ジョンソン

雇われの黒人男性

警察のことを嫌っている。

妻は死に、結局お腹の中にいたマリーも死んだ。

息子は胸に弾が当たった時点で死亡。

娘リリーは消息不明。


前の話で、間違えてミゲルと書いてしまったのですが、

死んだのはミゲルじゃなく、海パンをキラに取られたギルマでした。修正しました。

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