9話
母「グリー?大丈夫?お腹空いてない?」泣いていたのであろうか、顔に涙の跡があった。
グリー「うん、なんとかね…」
母「そう…グリーが好きなパン作ってあるけど食べる?」
グリー「うん…」涙をグッと堪え、パンにかぶりついた。このパンは日持ちせず、その日のうちに食べなければならない。
わざわざ作って待っていてくれたのだろう。
その優しさにさらに涙が登ってきた。
食いつき、食べ終わると母さんが嬉しそうに笑っていた。
グリー「実はね…」カードを出し、母さんに見せる。母さんは顔色ひとつ変えずに笑顔で話す。
母「そう、そういうことだったのね。いいじゃない。魔法が使えなくたって、ちゃんと職業があるんですもの」
グリー「え?」魔法適性しか見ておらず、職業のところをひとつも見ていなかった。
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|グリー・フォンド・アレウス 10|
|魔法適性 無 |
|職業適性 __勇者 |
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グリー「勇者?」
母「勇者って職業は聞いたことないけど、響きはカッコいいじゃない?」
グリー「僕が勇者?でもこの__ってなんだろう?」
母「勇者ってどういう職業か知っているの?」母の笑っていた顔がキョトンとした顔になる。
グリー「勇者って言うのは…言葉にするのは難しいけど、悪者を倒すんだ」
母「騎聖グリオンや武聖ダオリンみたいな?」
グリー「そう…だと思う…」
母「それってとても素晴らしいことじゃない?」母の顔がパッと明るくなる。
グリー「そうなのかな…」
母「心配して損しちゃった!すごいことよ!」
グリー「でも…」
母「武聖ダオリンだって魔法は使えなかったけど魔法使い100人相手に勝利する逸話だってあるのよ?もしかしたらそ
れよりすごいかもしれないんだから!」
グリー「そうかなぁ…」顔を赤らめてしまう。
母「それじゃこんなことしてる暇はないわ!グリーご飯たくさん食べなさい!」
グリー「う、うん!」
昨日作ったものでは無いであろう。わざわざ作って待っていてくれたのだ。全て作り直して。
グリーは涙を堪え全て腹の中へ注ぎ込む。
全部を噛み締る。いつもの料理より少しだけ塩っぱかったのはおそらく気のせいだろう。




