感情
「な...なんで素手喧嘩なんです...?別に空手とか柔道とかあるじゃないですか...」
シグルズは真顔で答える。
「至って簡単、覚えるのが楽じゃから!!!」
マジかこの爺さん。
「て、言うのは嘘じゃよ。実際柔道でも空手でもいいんじゃが冒険者としてモンスターを倒すとしたら腕っ節の方がいいんじゃよ。そもそも人型のモンスターならまだしも普通に原型とどめてない人外モンスターに背負い投げとかできんじゃろ?」
なるほど。確かに筋は通ってる。
「んで...何を教えてくれるんですか?」
「蹴りじゃ」
「蹴り...殴るのかじゃないんですね」
「うむ。蹴りじゃ」
「それで...足のどこを使えばいいんですか?やっぱり...スネとか?」
「つま先」
「つま先?!」
「だって実践になったら鎧も着て身動き取りずらいじゃろ?それでスネまで使って本格的な蹴りなんて相当筋トレや実戦経験ないと無理じゃ。それならまずつま先で蹴る方がいい。鎧もつま先が鋭いやつ選べばいいじゃろ」
シグルズさんって意外とちゃんとした考え持ってる人なんだな。失礼かもしれないけど。
「そうと決まればこの的に向かって思いっきり蹴ってくるんじゃ。あれを折れば今日はおしまいじゃ」
とシグルズは3m先にある木でできた的に指をさして言った。
「わかりました。やってみます」
俺は助走をつけて思いっきり蹴った。
「ミシッ...」
的は軋んだだけで折れてはいない。もう一度思いっきり蹴ってみる。
「ミシミシ...」
やはり軋むだけで折れはしない。何故だ。
「アルガドー!遠心力!遠心力つかうんじゃー!」
シグルズはそう叫んだ。
「遠心力...か...」
俺は的から90度左を向いて思いっきり蹴ってみた。
「バキィィィィィ!」
やった。折ることが出来た。
「やりましたよ!シグルズさん!」
「見事じゃ少年。それじゃあ今日はこれでおしまいじゃ!明日に備えるんじゃぞ」
「そういえば...」
「なんじゃ?」
「感情の奴ら...ってなんですか?」
「...言わなきゃいかんか...?」
「少し気になるんで...」
「...まぁ簡単に言えば四天王みたいな奴らじゃ。4人いての。喜びの感情であるジョイ、楽しみの感情であるファン、怒りの感情であるアングリィ、悲しみの感情であるマァシィがいたんじゃ。」
「...強かったんですか?」
「いやあんまり?」
「そこは強いと言いましょうよ...」
「けど奴らは確かにこの手で倒したし次来たら容赦せんって言ったんじゃがな。誓約書もあるぞ?まっておれ」
シグルズさん強すぎて個人で誓約書結んじゃってるよ。
「またせたの。ホレ」
「今後私達、感情はこのフルバッハ大地に進入しない事を誓います。」
下には感情の4人達の直筆のサインまである。
「けどなんで感情のヤツらって思ったんですか?」
「あいつらの手の刺青やネックレスが十字架だったことを思い出しての。それで思ったんじゃ」
なるほど。それを踏まえると確かに有り得る話だ。
「もしかしたら操られてるっていうことはありますか?」
「それも視野に入れてもいいかもしれん。もしそいつらの討伐がクエストとして張り出されるとしたら...受注出来るのはワシのコネを使ってもCからかの...そもそもCのヤツが勝てる相手じゃ無いけど」
「わかりました。とりあえずまずはランクCに到達できるよう頑張ります!」
「そうしてくれ」
そして俺は転移扉で家に帰った。
「ただいま」
「おかえりなさい。ちゃっちゃとお風呂に入りなさい。今日少し大事な話があるから。」
なんだろう...一体何があるのだろうか。
読んでいただいてありがとうございますm(_ _)m
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あと今回は少し短めになりました...ごめんなさいm(._.)m