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別の意味で五月病

 初夏の清々しい風が気分まで気持ちよくしてくれたら嬉しいのだが、連休明けにコンビニの駐車場を掃除させられている俺にとってはゴミを撒き散らす悪風でしかなかった。


「菊原くーん、掃除終わったら今日上がりでいいからね」

「はい、もう終わります」


 パートの吉住さんに声をかけられ、店内に戻ると明らかに機嫌の良さそうな吉住さんが品出しをしていた。


「吉住さん、なんか嬉しそうですね」

「あら、気づいちゃった? 今日は旦那との結婚二十年目の記念日なのよ~。早く帰ってディナーに行きたいわ」


 そう言って頬を紅潮させ「うふふ」と微笑んだ。


「菊原くんこそ、大学で良い女の子とかと出会ったりしないの?」

「ま、まぁまだ五月ですからね・・・・・・これからですよ。これから!」

「青春しなさいよ、まだまだ若いんだし楽しい事がこれから沢山待ってるんだから! 私も大学生の頃は沢山遊んだの覚えてるわー」

「そうですよね、頑張ります。じゃあ俺はこれで」

「お疲れ様~」


 吉住さんの言う通り青春したいのは山々だが、そんな夢物語は俺には訪れないよな、なんて落胆しながら私服に着替えてタイムカードを切った。世間では連休明けに会社や学校に行きたくないと鬱になる事を『五月病』と呼ぶが、今の俺は別の意味で五月病状態になっていた。


 入学から1ヶ月が経ち、運命的な出会いもなく、時だけが過ぎて気付けばゴールデンウィークも終わっていた。何度か講義内のグループワークで女子と話す機会はあれど、そのから連絡先交換などの進展はできず今に至る。


 家に着くなり着替えもせずベットに倒れ込み、ミンスタをチェックすると高校時代から親友の中村がバスケサークルの新1年生でバーベキューに行っていた。ちなみに中村は入学早々告白され今は彼女持ちである。


「中村の野郎、ちゃっかり大学デビュー達成しやがって」


 受験期には共に支え合いながら、勉強をしていたのに気付けば雲の上の存在となっていた。それに比べると自分の行動力の無さに不甲斐なくなる。

 そんな気持ちを押さえつけながらミンスタを意味もなくスクロールしていると、とある広告を目にした。


「『holder』・・・・・・? あー、前に中村が言ってた出会い系アプリか」


 『holder』とは流行りのマッチングアプリで、かなり高確率でちゃんとした出会いが出来るらしい。最近では同じ趣味を持つ友達を探せるということもあり、出会い系だけでなく友達探しツールとしても有名になっている。

 そんなholderを気付けばインストールしていた俺は、簡単に名前や年齢、趣味などを書き入れていく。因みに顔写真は加工アプリで盛りに盛った入学式の日に撮った写真である。


「よし、これでおっけーかな」


 そして設定から僅か3分後に事件は起きた。


「なんだなんだ」

 

 ピロンっという着信音と共に届いたのは1軒のメッセージだった。


『菊原さん。初めまして大森です、晴れ恋が好きな方珍しいので目に留まりました。是非会ってお話してみたいです』


「晴れ恋って30年くらい前の超マイナーな漫画だぞ・・・・・・部屋にあったから適当に趣味欄に書いただけであんまりよく知らないんだけどな」


 とか言いつつもちゃっかり知ってるていで返信すると2日後に池袋駅出会うことになった。それが運命の出会いになるとこの時はまだ知らない──と信じたい。


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