2話 お母様と話したい!
「お母様!」
「食事中に席を立つものではないわ、座りなさい」
「もう食べ終わってるもん!」
「あらそう、早いわね」
もちろん早いですとも!
お母様とお話ししないといけないからね!
「食べ終わったなら部屋に戻りなさい」
「その前にお母様とお話するから!」
「ヒトミは食べ終わったのかもしれないけれど、私はまだ食べているの。食事の邪魔をしてはいけないわ」
「ぐぬ、そうだけど… 今ぐらいしかお話し出来るタイミングないでしょ?」
「そうかもしれないわね」
1時間ぐらい経ったのに、どうしてお母様はお母様なの?
少しぐらいお話ししてくれてもいいのに、ほんと自分勝手でずるい。
お母様がずるするなら、私もずるするもん!
「私は寮に住みたくないの、どうにかならないのお母様?」
「どうにかって、貴方は寮生でなければいいの?」
ずるい私に観念してお母様がフォークを置くと、すごい目付きで私のこと見てくる…
うぅっ、ここで圧されたら負け、頑張れ私…!
「寮はイヤ!」
「あらそう、困ったわね」
寮に住むってことはお家に帰れない、そうしたらルナに会えない、お母様にも会えない、妹のイブちゃんにも会えない、たまに帰ってくるお父様だって。
クロエお姉様とは一緒になれるけど、それは学園に行ってれば会える、わざわざ寮に入る必要はないもん。
「貴方の友人のカレンも寮生よ?」
「カレンちゃんはー…」
そっか、近くに住んでるカレンちゃんも寮に住むんだ…
でもでもそれはクロエお姉様と一緒、学園に行ったら会える!
「それでも寮はイヤ!」
「そう、ワガママな子ね」
「お母様だってわがまま!」
「本当、誰に似たのかしらね…」
「お母様だよ!お父様は何でも言うこと聞いてくれるもん」
「えぇ、そうね。あの人は甘過ぎるもの」
私のわがままでお母様が少し下を向いて考えている。
今日という今日は私のわがままを聞いてもらうからね!
そしてそのアカツキには頭撫で撫でもしてもらうんだから!
「分かったわ、1ついい案があるわ」
「ホント!?」
「た だ し」
お母様の口調が少し強くなって、心臓がドキッてしちゃった。
びっくりしたぁ…
「いい?学園には何があっても行ってくれるわね?」
「寮に住むことになってもってことー?」
「えぇ、そうよ」
「そんなのヤダ!」
ホントーは、学園には行ってみたい…
楽しそうだし、新しいお友達出来そうだし…
でも寮だけは本当にイヤ!
「でも、寮に住む必要がなくなるかもしれないわ」
「ぐぬぬぬぬ…」
寮に住むのはイヤって頑固なお母様にダダをこねるか、学園に行くのは決めて寮に住まなくていいように頑張るか…
お父様ならまだしも、お母様にダダをこね続けてどうにかなるとは、思えない…
「その、案っていうのはどうするの…?」
「貴方に魔法を覚えてもらうわ」
「魔法!?どんな魔法なの?」
魔法ならお任せ、ござれ。
なぜならわたくしヒトミ、転生者、ですからっ。
慈愛神授の加護、持ってますからっ。
そっかー、魔法でどうにかなっちゃうなら、頑張っちゃった方が早いかも?
「転移魔法よ」
「テンイ魔法って?」
「瞬間移動が出来るようになる魔法ね。例えばここから学園まで瞬間移動が出来るなら、寮に住む必要はないでしょう?」
「ないね!」
朝4時に起きなくても、いい!
「ヒトミは魔法面ではとても優秀だから、もしかしたら覚えれる、かも?しれないわね」
「やるやる!覚える覚える!」
やったー!
面白そうな魔法覚えれそー!
あのね、実はここだけの話、お母様には中級以上の魔法を覚えることを禁止されてるの。
なんかね、子供のうちから危ない魔法を覚えたらいけないってね?
だから瞬間移動の魔法なんて、もー楽しみでしょうがない!
「では、食事を終えたらまた貴方の部屋に伺うわ。そこで転移魔法の資料を渡すから、大人しく部屋で待ってなさい」
「早くしてねー!」
こうなったらね!
もう私の物だよ!
「ヒトミおねーちゃん、もういっちゃうの?」
黙々とご飯を食べていたイブちゃんが話しかけてくる。
ちなみに、イブちゃんは私の6歳の妹で、私のことが大好きで私も大好きな天使ちゃん。
勉強と特訓中以外は、いつもイブちゃんと遊んでるぐらい仲良しなんだ。
「お姉ちゃん精神統一しなきゃだから!」
「何よ、それ」
「ルナに甘やかしてもらうのっ」
お母様に関係ないでしょっ!
「いいなー。イブもいっしょになでなでしたーい」
「イブはまだご飯を食べ終えていないでしょう?先にご飯を食べないとダメよ」
「えー?」
あぁ、我が妹よ…
お姉ちゃんもイブちゃんに撫でられたいよ…
「イブちゃん、ご飯食べ終わったら私の部屋来て?」
「うん!いくー!」
妹の笑顔が眩しくて、さっきまで緊張していた身体がほぐれていくぅ…
「イブに魔法は教えたら怒るわよ?」
「分かってるよっ。それよりお母様こそ資料を持ってこなかったら怒るからね?」
「えぇ、好きになさい。私はそのような失態を冒さないもの」
「じゃあ早くしてね!」
ささっと食堂を出て、ルナに甘やかしパワーを注入してもらうために部屋に急いで戻って…
それにしても、お母様を相手になかなかの成果じゃない!?
寮に行く必要もなくなって、転移魔法(?)も覚えれて、それにお母様にも撫でて…
あれ…?
イブちゃんには撫でてもらえるけど、お母様に甘やかしてもらう約束してなくなくなくなくなくない…?
なくなく過ぎて泣いちゃうかも…
でも、それでも!
本当に成果はいっぱいだよ!
瞬間移動の魔法かー、それを覚えたら学園にも一瞬でいけるしー、お姉様の所にもいけるしー、カレンちゃんの家にもいける!
なにそれっ、すごく楽しみ!
お姉様もカレンちゃんも、瞬間移動で来た私にビックリするんだろうなー。
「えへへ、えへ」
えへっ、楽しみだなー。
「ヒトミちゃん、嬉しそうね〜」
「あっ、ルナ!そうなんだー、嬉しいんだー!そうだっ、またすぐにお部屋で甘やかしてー!」
「いいよ〜、いっぱい甘やかしてあげるね」
よしっ、これで精神統一もばっちり!
後は魔法を覚えて、お母様に甘やかしてもらうだけ!
頑張れ、私!