風が強かった
* * *
地面にうっすら砂が積もっていた。
キョウの家はルウの地の外れの方にあり、一見砂漠と変わりなさそうに見えるが、砂漠よりは草など生えている。
そのわずかな草を覆うように砂が積もっていた。
――そういえば、昨夜は風が強かったな。
風が強い夜は案外建物が揺れる。結構な強さの風が吹いてたように思われる。
ふと環境維持ロボ数体が同じ方向に走行していくのを見えた。
畑の方に行ってるようだ。
キョウもついて行ってみる。
畑についた。
作物は砂で覆われていた。
ランズ・ルカーはじめ農民たちが、砂を畑から取り除いていた。
その砂を環境維持ロボもせっせと運んでいく。
ランズがキョウに気づくと、仕事の手を止め話しかけて来た。
「参ったよ。畑が砂に埋まってしまって」
キョウの家よりも畑の方が被害が大きかった。
「そこの泉も砂だらけでさ」
「泉が!?」
キョウは思わず聞き返した。
泉から水を引いて生活にも役立てている。砂まみれとなれば一大事だ。
「あー、そっちはもう大丈夫。レファイ家の導師様のお陰で泉はすっかりきれいになったんだ」
「まあ、あの通り環境維持ロボも手伝ってくれるだし、もうじき終わるだろう。てか、今日の作業は明日にだなー」
ぶつぶつ言いながら、ランズは作業に戻った。
ランズたちが畑から出した砂を、環境維持ロボがルウの地の外へと運び出していた。
「うん、じゃあな」
と、キョウはなんとなくそのまま環境維持ロボの後について行った。
環境維持ロボは適当な空き地に砂を置くと、また畑に戻り、砂を運ぶ。何往復かその作業を繰り返してるようだった。
* * *
「長老に会うのはやめてほしい」
祈祷から帰って来たミンは、そうガイルに説明した。
「どうして?」
「長老は黙秘を続けている。たぶん本人が動機を言うことはないでしょう」
腑に落ちない顔のガイルにミンは説明を続ける。
「でも、その部下はだんだん心を開いてきている。長老に不利な処遇をしないことを条件にして話をしているところ」