砂の除去
砂が除去された泉の水がどんどん浄化されている。
水が澄んでいく。
クスナの魔法に寄るものだ。水の中に意識を集中していると、クスナと体を重ねたあの感覚がよみがえってきた。
はっとして隣のクスナを見ると、クスナは目を閉じ呪文を唱え意識は完全に泉の方へと向いていた。
周りのことはまったく眼中にないようだ。
――こんなんじゃ長老も狙いやすかったろう。
そのために祈祷の際に護衛がつくわけでもあるのだが。
ミンは、水が浄化されるのを感じていた。
ほどなくしてクスナは浄化を終えた。
浄化を終えると、クスナは目を開けた。
「やっぱ、あんた、すげーよ」
ランズがクスナを称賛する。
「泉の砂がぜんぶ陸に来ちまった!」
泉のほとりの砂を環境維持ロボが運んでいく。
「お役に立ててよかったです」
クスナは、簡易の祭壇を畳み次の泉の祈祷を向かう準備をし始める。
疲れてる様子はない。その事にもミンは驚いていた。
「導師様、ありがとうございました」
ミンは礼を言う。
「いえ」
「何かお礼をさせて下さい」
「いえ、礼には及びません」
素気ない態度のように思えた。
もしやクスナはあの時のことを思い出した? そんな危惧を抱く。
だが思い出してほしいという思いもわずかながらあった。
祭壇を畳み終わったクスナは次の泉へと向かう。
「導師様、今度、野菜届けるから」
ランズがそう言った。
「いえ……」
ふとクスナは思い出したようにこんなこと言う。
「だったら、コーヒーの苗はありますか? 種でもいいんですが?」
「コーヒー? あぁ、前に話したっけ。植えてみようかと思って仕入れた種があるから今度探して持ってくよ」
「楽しみにしてます」
クスナは一礼し立ち去った。
「コーヒー?」
ミンは眉をひそめる。
「コーヒーの木はきれいな花が咲くんだ。観賞用にも人気がある……」
言いながらランズは、目上の立場であるミンに対して敬語を使うのを忘れてるのに気づいていた。
だが、ミンはそんなことは気にしてないようだった。