お手並み拝見
「私、何かしましたっけ?」
クスナはランズに尋ねる。
「ほら、あんたが見せてくれた作物を元気にするやつ。水を操ってるって前に言ってたじゃないか」
ランズの言葉にクスナは思い出した。
「やりましたね~。あの時の苗はどうなりました?」
「それが、ほら」
ランズは畑を指さす。
畑は砂の下に埋まってて、それを見てクスナは落胆したようだ。そして何か考え込む。
「そうですね。……やってみましょう」
クスナのその言葉にミンはぎょっとした。
「やってみるって、御一人でですか?」
「えぇ、まぁ。手伝ってくれます?」
クスナはふと笑った。まるでミンを挑発してるかのようだった。
ミンの中では対抗心のようなものが燃え上がる、自分にできない魔法が使える相手への嫉妬だろうか。
ミンだって、本気を出せばこの魔導師に負けるはずがない。
そうは思ったものの、この導師のいる場で魔法を使うのは避けたかった。
「いえ、お手並み拝見させていただきます」
ミンは見学することにした。
迂闊なことをすれば藪蛇になりかねない。クスナが余計なことを思い出しても厄介だと思ったのだ。
「では」
クスナは簡易の祭壇を広げる。
祈祷用に使う祭壇を何故広げるのか? ミンは疑問だった。
その疑問にクスナは気づいたようでこう説明する。
「自己暗示的なものです。ただ泉に向かって魔法を使うのも集中しづらいので」
*
クスナは題目を唱える。
この題目は祈祷のために唱えるもの。
砂を除去するのにはさほど意味はないはず。
なるほど確かに自己暗示のためのもののようだと、とミンは見ていた。
クスナは気を整え泉と一体になる。精神統一し泉の砂を除去する……。
泉の水が波打つように揺れ、砂をほとりへと押し運んでいるよう。
――これはこの導師の力……?
ミンは改めて驚愕した。
何度か魔法使いが泉の砂を除去する場面を見てきたわけだが、こんなにあざやかに砂を寄せるのは初めて見た。
ミンは意識を泉の中へ集中する。
そこでぞくっとした感覚に襲われる。