前にやった
「被害の状況は?」
「ここの泉と畑に砂が降ってしまいました。水の方はため池に備えがあるのですぐには心配ないですが、畑の方が問題です」
ミンの問いに、ランズが説明した。
この地は各家庭にため池があり、数日間の水は確保している。
泉の方は急がなくても大丈夫そうだが、だが早くに砂を除去するに越したことはない。
「泉の方はこれから私どもで砂を除去します。ですが私一人では手に負えないので、一旦、出直して来ます」
「わかりました。あ、導師様ー」
ミンが立ち去ろうとすると、ランズが大声を出す。
ランズが見てる方向に、銀髪の魔導師がいた。
レファイ家に雇われてる魔導師クスナ・ク・ガイルである。
ミンは動揺した。なるべくなら会いたくない人物だった。
クスナは簡易の祭壇を持ち、ミンと同じように泉の祈祷をしている途中だった。
ランズに指さされてることに気づいたクスナが近づいて来る。
「何かありました?」
クスナは護衛の兵士と一緒だった。
「いえ、何も……」
とミンが言うが、ランズが説明しはじめる。
「あ…導師様。砂嵐で泉も畑も砂に埋まってしまって…‥」
「砂嵐?」
クスナは聞き返した。
「女神ルウの加護でこの地には風は吹いても砂嵐などは来ないとされているんだけど、たまにこうなってしまう。作業は止まるし、下手すりゃ畑は全滅、泉も砂だらけだから生活にも支障が来ちまう……」
ランズはうんざり気味に言った。
「そうでしたか」
外から来たクスナにはまだわからないことがあった。
「戻って魔法使いを集めてきます。もう少し待っていただけ……」と、ミン。
「なあ、あんた、前にやった魔法でぱぱっとやっちゃってよ」
と、ランズがクスナに言った。
「え? 前にやった?」
思わずミンが聞き返す。
それに、気安く『あんた』なんて呼んでる。案外、親密なのか?
「前に怪我したの魔法で治してもらったんだ」
と、ランズがミンに言う。
ミンがクスナを見れば、クスナはさっと目をそらし目を合わせないようにしている。