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月色の砂漠~ガイルの事情~  作者: チク


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そんな理由


     *


『そんな理由で?』

 ガイルは若干呆れていた。



『わざわざ髪を銀色に染めて伸ばしてみたら、金色の長髪がいて』

 言うまでもない、キョウのことだ。


『かと思えば、同じ名前の人物もいて……』

 他ならぬガイルのことだ。


 自分が特殊であると見せかけるために咄嗟に男好きのフリを思いついた、とクスナは言った。



『その結果、男から好かれるとは思いもしなかった』

 最高位のケイのことだ。

 結果、長老と深い関係に……というクスナの思い込みを過呼吸になりつつもなんとか否定する。



『そもそも魔導師なんてのも大嘘で、平凡な農民なんですよ、私は』

 平凡な農民にしては魔力が強いような気もするが。


『その平凡な農民がなんでこのルウの地に?』

 なんて疑問も浮かんだ。

 軽い感じのアンドロイドハンターに熱心に勧められたのだという。

 そのハンターの名前に覚えがなかったから、ガイルは一時的に雇った傭兵か用心棒の類いだろうと思った。



『じゃあ異世界から来たってのもウソ?』

『なんですか? それ?』

『異世界から来たとかって噂を聞いたような……?』

『さすがにそんな嘘まではついてませんよ。異世界のエルフに会ったことはありますが』

『へえ、すごいな』


 ガイルは率直にそんなことを思った。

 少し前まで異世界だの胡散臭いと思っていたが、そう言われるくらいの根拠はあるようだ。



     *


 クスナがそうまでしてお金が欲しい理由。大事な人が難病にかかったからだという。

 おそらく、それはクスナが持っているあの写真の女性だろう。



「まあ、頑張れよ」

 ガイルはそんなことを言ってクスナを見送った。

 クスナはやはり来た時と同様、ローブを被り却って目立ちそうな恰好で帰って行った。


 その大事な人が誰かは聞きそびれた。

 おそらく、恋人とかだろう。


 大事な人がいるのに、姉のミンと体の関係になってしまうなんて…… ガイルは気の毒なような申し訳ないような気持ちになっていた。

 幸いにも本人は忘れてしまっている。そのまま思い出さないことを願った。

 そして、その大事な人とやらの病が早く治ることも願っていた。

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