思い出した
「……隊長? 隊長殿?」
部下の声に、一番隊隊長ことガイル・ラテーシアはっとした。
あれは子どもの頃の記憶だ。
子ども過ぎていつしか忘れていた。
その後はキョウはけろっとしてたし、ファウも特に口にすることでもなく。この出来事はなんとなく記憶の隅の方へと押しやられていた。
「隊長、どうかしましたか?」
ガイルは、部下とともに見回りをしていたところだった。
場所はキョウの家から南を進んだところ。
今この場にいる場所がまさにあの場所だ。
ルウの地に外れでそこはもう砂漠といってもいいくらいだ。
「あぁ、なんでもない」
ガイルは辺りを見回す。
子どもの頃、あの時あった水たまりはない。
「アンドロイドはいなさそうですね」
部下の声に頷く。
見える範囲にはいないし、怪しい気配はない。
「異常はないな」
「えぇ」
ガイルは見回りを終え、部下とともに引き返そうとした。
ガイルはふと振り返る。
ファウを誘拐した人物が言い残した言葉『キョウが水脈を開いた場所』というのが、唐突に脳裏によみがえった。
そして繋がった。
子どもの時のあの光景は、キョウがまさに水脈を開いた瞬間だったのではないか。
――この近くにあの犯人がいる?
そんな思いを抱き、ガイルは辺りを見回すが。
「ガイル隊長?」
部下が怪訝そうに声を掛ける。
「あぁ、何でもない。戻ろう」
辺りはただ広い砂浜が続くばかりだった。