口出ししない
「水脈を開けるのは、かつての魔法が使えたキョウとあの導師様……」
ミンは独り言のようにつぶやく。その脳裏にクスナの顔が浮かぶ。
ふと恥ずかしいような感覚に襲われる。
かつての魔法が使えたキョウになら水脈を開けた……その言葉にガイルは落ち込む。
そして、二度とキョウをそんな目に合わすまいと思った。
「長老の犯行を止められてよかった。あの導師様がいなくなればやはりこのルウの地にとって損失が大きいから」
その言葉がガイルには意外に思えた。
魔力の強さでいえば、ガイルやミンよりいささか下のように感じる。
ミンはガイルの考えがわかったようで、
「確かにあの導師様の魔力は弱いけど、水を操る力は相当なものよ」
ミンは、クスナが泉の砂を魔法で除去したことを話した。
*
「すごい魔法だったわ。認めざるを得ない」
「確かにそれはずごいが、大丈夫なのか?」
クスナがすごい魔法使いということは、邪眼をかけられた時のことを思い出す可能性が高い。
「たぶん大丈夫。どうも私を避けてるみたいだし。思い出したとしても口には出しづらいでしょう?」
確かにそうだとガイルは思う。
ただ思い出しておきながら知らないフリをしているんだとしたら、無責任な男のような気もしていた。
だが実の姉のそういう事情なんか関わりたくないのが本音で、ガイルは口を出さないことに決めた。
* * *
その夜――
キョウは環境維持ロボを操っていた。
キョウはランズの畑に行ってみた。
畑の砂はきれいになくなっていた。
土の上に作物があるのが、見えた。
これなら明日には予定通りの作業ができるだろう。
そのことに、キョウはほっとしていた。
――しかしなんでこの砂が積もっていたんだろう?
この地は女神ルウの加護により砂が吹き込むことはないはずだった。
キョウはルウの地の外の方へと進んでみる。
月明かりに照らされ、ぼんやりとそれは見えてきた。