思い出す
――あれは何だろう?
子どものガイル・ラテーシアは宙に浮かぶ金色の球体を見つけた。
球体は大きな水たまりの上に浮いている。
水たまりの前でファウが立ち尽くしていた。水たまりの中に入ろうとするが、怖くて足が動かないようだ。
「キョウが……!」
ガイルに気づいたファウがそう言った。
「キョウ?」
ガイルは目を凝らすと、キョウがいた。
キョウは、球体の中、膝を抱えるような姿勢で頭を下にまるで浮いてるような姿勢だった。
キョウは目を閉じぴくりとも動かない。
――まさか、死んでる!?
ガイルの脳裏にそんな危惧がよぎった。
駆け寄ろうとすると、足が水に浸かった。
――なんでこんなに大量の水が?
砂の地面のはずが、ぽっかり大きな水たまりがあった。
膝まで水に浸かり、ガイルは躊躇した。
が、次の瞬間には駆けだしていた。
キョウを包んでいた球体がゆっくり遠ざかって行くのだ。
バシャバシャ水を蹴り上げ進む。
ほんのわずかな距離なのに、ガイルにはすごく遠くに感じられた。
球体は宙をゆらゆら漂っている。
背伸びしても届かない。
ジャンプしてみる。
球体の中から、キョウの手をつかみ引っ張り出した。
意識のないキョウの体が落ちて来た。
「うわ!」
ガイルは尻餅をついた。
キョウの金色の髪が水面に広がり揺れる。太陽の光の反射で輝いていた。
ガイルは金色の花畑にいるかのような錯覚を覚えた。
それと同時に、キョウがどこか遠くへ行ってしまうようで怖くなった。
腕の中にキョウをしっかり抱きしめる。
「キョウ」
名前を呼んでも返事はない。
ガイルの腕の中、キョウは眠っていた。
上に浮かんでるはずの球体はいつしか見えなくなっていた。
キョウはガイルの腕の中にいる。その事実に少しだけ安心していた――