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⒊精霊は何かを知っている④


国を出るなんて考えたことはあるけど、今は実行する予定はないな。


確かにカンナ嬢に出会うまでは暇でたまらなくて考えてた時期もあるけど。


今はカンナ嬢がいるからね?


カンナ嬢にはしつこいくらいに僕が後継者だと繰り返し言われているし。カンナ嬢が僕が王となることを望んでいるみたいだからね?


期待には答えないとね。


カンナ嬢が望むなら、うるさい隣国くらい簡単に黙らせられちゃうよ?


「今はって何ですか?ダメですよ、クロッカス様は次期国王なんですからね?全く!何度も言ってるじゃないですか。クロッカス様は王になるんです!」


カンナ嬢は全くもうっと頬を膨らませている。その口調は言い聞かせるかのようだね?


ま、何度も言われているからね。期待通り、国政くらいするよ。


心配無用だよ?今だって父様を手伝っているしね?うるさいコバエたちの処理とかいろいろしているからね?


「…………あの日、クロッカス様に私が関わったことで話が変わったようなんです。未来を変えたくて、クロッカス様が学園が楽しいって思えたら、クロッカス様、この国からいなくならないかなって。クロッカス様がいたら、そもそも困難もないでしょう?」


つまり、カンナ嬢と出会ったことで物語が変わったと。


本来なら僕がいなくなるはずだったけど、カンナ嬢は僕が国を出て行かないように関わったってことかな?


にしても、カンナ嬢は当たり前のように言うね?僕が王になったら問題ないってカンナ嬢の中での僕は凄い人らしいね?


まぁ、カンナ嬢の期待には沿わないといけないね?


ただ。


僕が王となるなら、さっきの女生徒が未来のゼフィの妃っていうのは、ね?それは僕も反対するよ?


「彼女をゼフィの妃にするにはそもそも反対するからね?物語通りにはならないよ。」


あの子はダメかな。


もっと無難な子は多くいる。わざわざ困難な子を選ばないでほしいね?


「え?!何でですかぁ〜?クロッカス様が王になるなら、良いじゃないですか!」


頬を膨らませて反論するけどね?彼女じゃ役不足だって理解しているんだろう、カンナ嬢?


僕がいるなら多少下がダメでも良いじゃないかって?


ダメかな。甘やかせる気はないからね?


ほっぺを膨らませておねだりしても、認めないものは認めないよ?何であの子にゼフィが惚れちゃうのかも僕には理解出来ないからね?


なんで良いって言われると思ったんだい?家柄・実力・人望。いろいろ兼ね備えてるならともかく。彼女はダメ。胡散臭さが気に入らない。


「ダメだよ。物語の父様も何で許可したのかな?」


父様なら許可しないと思うけどね。国のためにもっと優れた女性を選ぶべきだと言うと思う。


うーん。そういうとこが現実的ではないよね?やっぱりカンナ嬢の妄想なのかな?


「それは…あっ!!そうです、大変ですよ!死んじゃうんです!!」


うん?


目にたっぷり涙を溜めて僕を見つめるカンナ嬢。さっきまでほほを膨らませて抗議していたのに今は悲しそうに瞳をゆらし、涙を目にいっぱい貯めている。忙しく変化する表情だね。


死ぬって父様がかな?それは重要な事だけど、何で先に話さなかったのかな?先に話すべきじゃないかな?


忘れてたようにもみえるけど。……忘れてたんだね?思い出したように顔をあげたもんね?


……………まぁとりあえずね?カンナ嬢、落ち着こうか?


泣きじゃくってもどうにもならないからね?


「落ち着いて?どういうことだい?」


「流行り病にかかり、倒れちゃうんです!徐々に弱っていってしまって…。そんな中、クロッカス様がおられず落ち込んでいるゼフィランサス様に弱った姿を見せられないと無理に公務に向かった先で、怪我を負ってしまうんです。そうです、そこで事故から王を庇ったライラック様が死んでしまうんです!王の怪我は大したことはないんですが…ライラック様が死んじゃって…長らく王家を守り支えてくれた精霊の喪失に王は自責の念に押しつぶされ…倒れ、そして死んでしまうんです。」


連続して起こる不幸。降りかかる困難。涙を誘う展開だね?小説としてはこれから面白くなるって言うところだ。


ただ、その状況じゃ、もう我が国は滅ぶしかないんじゃないかな?そこから生き残るのは無理じゃないかな?


よほど物語に余程感情移入しているようだね?カンナ嬢の目にはうっすら涙が浮かんでいる。


そんな危機的状況をゼフィが何とか先ほどの女生徒と乗り越えていくと?


無理があると思うけどね?近い将来、国は確実に滅ぶね?あの子達じゃどうにもならないよ?


「どうしましょう、どうしましょう!!」


カンナ嬢にも2人じゃ難しいと思っているみたいだね。パニック寸前の様子だね。


一応、カンナ嬢の話から察するに物語の中じゃ国は滅びずに何とかはなったようだけど。その後はどちらにしろ滅ぶだけだろうからね?


未来を思うと混乱する気持ちもわからなくもないけどね?まだ、対策を練ることが可能だろう?


だからね?


落ち着いて、知っていることを話してくれるかな、カンナ嬢?


今まで忘れていたのがウソのような慌てぶりは面白いけど。あちらこちらを見て慌てふためても、ね?…………あ、植え込みに頭をつっこんでしまうよ?


まったく、君は僕を飽きさせないでくれるね?面白いのもいいけど。話を進めようかな?


状況を整理して、対策を講じないといけないだろう?




とりあえず。




カンナ嬢にいろいろ話を聞いた。


カンナ嬢が知る物語を出来るだけ詳しく聞いたりして、今後のことを考えてみたりした。ま、おいおい対策を練っていこう。


今は前世の話を聞いている。


「学園のような場所に私も通ってたんですよ。いや、あんなには大きくはないですけどね?学校終わりに友達と遊びに行く時間が好きでした!映画を見たり、カフェに行ったり!コラボカフェとか好きでよく行ってたんです!」


あぁ本当に楽しかったんだろうなってことがすごい伝わってくるくらい嬉しそうな笑みを浮かべてカンナ嬢は語る。


さっきまで絶望って感じの顔をして涙さえ浮かべていたのにね?こちらまで気持ちがほっこりしてしまうね?


えいがとか、コラボカフェとか。よく分からない単語は出てきているけど。


「精霊って周りに見えるようにしないと見えないんですよ。だからちょっと寂しくて。今、クロッカス様と一緒にいられて幸せです!お茶をしたりする時間も好きです!!」


そう。


カンナ嬢は前世の記憶があるからこそ、人に関わったのかな?


精霊ってあまり団体行動はせずに自由気ままに生きている種族だ。深く他者に関わろうとしない子が多いんだとか。


全く関わらないわけではないようだけど。カンナ嬢はそれが寂しかったようだね。


精霊にとって当たり前だったりするけど。カンナ嬢には当たり前ではないからね。


「そう。僕もカンナ嬢に出会えて日々が楽しいよ。もっと前世の話を聞かせてくれるかぃ?」


「もぅ!!やっぱり、生のクロッカス様、カッコ良すぎです!ぜひ聞いてください!!」


ん?


カンナ嬢?生のって付けないでくれるかぃ?


素直に喜んで良いか分からなくなるだろう?


小説の中の僕はどれだけ嫌な奴だったのか気になってしまうね?


………まぁいいか。今は君の話を楽しもうかな。


聞き終わったら、問題に対処していくかな。カンナ嬢がそれを望んでいるようだし。

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