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三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
文法篇〜一文のたいせつさを知る
904/1500

904.文法篇:断定・推量・伝聞

 今回は「文の種類」についてです。

 日本語は文末によって「断定」「推量」「伝聞」に分けられます。

 他にもありますが、この三つを押さえておけば応用がききます。

断定・推量・伝聞


 日本語の文は大きく分けて三種類あります。

「断定」「推量」「伝聞」です。

 これらは文末に表れます。




断定

「断定」の文末は「〜だ。」「〜である。」の他、用言の終止形で構成されています。

 たとえば「日本語の文は三種類だ。」「断定、推量、伝聞である。」「これらは文末に表れる。」のような文です。

 これに過去形である「〜だった。」「〜であった。」「〜表れた。」のような表現があります。これも「断定」の一種になります。

 小説の文章を支えているのは、間違いなく「断定」です。

 すべてが推量で出来た小説は、どんな世界なのかさっぱりわかりません。主人公の気持ちもわからないのです。

 混沌によって支配され、無秩序状態に陥ります。

 そういう世界観を「狙って」書こうとしないかぎり、「断定」がない小説には一片の価値もないのです。

 小説は一文一文「断定」を積み重ねて成り立っています。




推量

「推量」の文末は「〜だろう。」「〜ようだ。」「〜らしい。」「〜と感じられる。」「〜と思われる。」「〜と考えられる。」のようなものがあります。

 たとえば「あの人は四十代だろう。」「彼は走るようだ。」「彼女は二股をかけているらしい。」「この説明は読み手に伝わったと感じられる。」「十秒の壁を破ったと思われる。」「この論理は破綻していると考えられる。」のような文章です。

 こちらも過去形でも「推量」の一種になります。まず普通に過去形にできるのは「〜ようだった。」「〜らしかった。」「〜と感じられた。」「〜と思われた。」「〜と考えられた。」です。

 気をつけたいのが「〜だろう。」です。これは普通の方なら「〜だっただろう。」、リズムを考えて「〜だったのだろう。」と変換しますが、この文末を現在形に戻すと「〜だだろう。」「〜だのだろう」と「だ」がひとつ増えてしまいます。これではスマートではありません。ではどうするのか。

「〜だろう。」は「だ。」の活用形です。過去形は前述していますが「〜だった。」になります。そこで「〜だった。」を憶測の「う」へ活用します。

 つまり正しい過去形は「〜だったろう。」です。

 よく歌詞で「僕たちは出会い、どのくらい経ったのだろう。」のように歌います。これはあくまでもリズムを重視しているだけです。実際には「僕たちは出会い、どのくらい経ったろう。」が正しい。

「推量」はあくまでも語り手の主観を書いた文ですから、「一人称視点」でなければ使いづらいのです。「三人称一元視点」でも使えますが、「三人称視点」では使えません。

 客観性の強い報告書に「推量」の文を書かないようにしてください。きちんと数字やデータを書いて「客観的に」情報を書かなければ「報告書」にはなりません。




伝聞

「伝聞」の文末は「〜そうだ。」「〜と言われている。」「〜という。」のようなものがあります。

 たとえば「小耳に挟んだ話では、彼はあの娘に惚れているのだそうだ。」「今年は冷夏だと言われている。」「彼は棋士を目指しているのだという。」のような文章です。

「伝聞」は「他人から聞いたことを引用して書く」ことなので、語り手の主観ではないですよという文で用います。

 だから小説で「伝聞」文が多いと、相当自信のない主人公なんだなとの印象を持たれるのです。

 サー・アーサー・コナン・ドイル氏『シャーロック・ホームズの冒険』においてワトソンは、主人公ホームズのセリフを引用する形で「彼が言うには、〜」文が多くなります。これはあくまでもワトソンが語っている二人称視点の設定なので、主人公のホームズについては外見や態度や言葉を受け止めて書く以外に方法がないからです。

 逆に言えば、「二人称視点」は「伝聞」が書けなければ機能しません。

 できるだけ使わないほうがよい場合と、絶対に使わなければならない場合を認識してください。




世界観を築くには断定するしかない

 小説の世界観は「断定」しないかぎり築けません。

 もし世界観や設定などの説明で「この世界には魔法の源であるマナが存在するらしい。」などと書いたらどうなるか。読み手はこの小説世界に「マナ」があるのかないのかわかりませんよね。

「見た者は誰もいないが、この世界には神が住んでいるという。」

 これは「伝聞」ですが、こちらは「伏線」として機能させられます。

「推量」との違いは先ほどの例文を「伝聞」に変えるとはっきりするでしょう。

「この世界には魔法の源であるマナが存在するという。」

「推量」とは明確に異なりますよね。主人公が知らないだけで、世間では「マナがある」という認識があるのです。

 しかし「推量」では「存在が疑わしい」印象を受けませんか。どこか他人事(ひとごと)です。

 ですが「断定」してしまえば世界観が明確に築けます。

「この世界には魔法の源であるマナが存在する。」

 これでこの世界には「マナ」があることが明確になりました。

「断定」するから世界観が築けるのです。

「推量」は疑わしく、「伝聞」は語り手は知らないだけで世間一般には知られていることだと読み手に伝えられます。

 このふたつは似ていますが、「伝わる」機能には違いがあるのです。





最後に

 今回は「断定・推量・伝聞」について述べました。

 小説の基本は「断定」文です。

「この世のどこかにラピュタがあるらしい。」と書けば眉唾もの。なぜなら、語り手本人がそう思っているだけのことだからです。

「この世のどこかにラピュタがあるそうだ。」は知られていないだけであるのだろう。なぜなら、語り手以外の人がそう言っていると聞いたからです。

「推量」と「伝聞」にはこのような違いがあります。

 ですが「推量」「伝聞」の多い小説は、「小説賞・新人賞」にかすりもしないでしょう。




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