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三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
惹起篇〜このことに気づいていますか
878/1500

878.惹起篇:小説の会話

 今回は「小説の会話文」についてです。

 あなたの作品で、不自然な「会話文」を書いていませんか。

 不自然な「会話文」は、読んだだけで興醒めしてしまうものです。

 いかに自然らしい「会話文」が書けるのか。それが書き手の技量を左右します。

小説の会話


 小説ではもれなく会話文が書かれています。書かれていなければ叙事散文です。

「小説を書く」ということは「会話文を書く」ということであり、キャラ立てのために会話文を使いこなさなければなりません。

 心の声も会話文です。

 だから会話文のない小説は書けないと思っていただいてよいでしょう。




現実(リアル)の会話

 現実(リアル)で会話を交わすとき、ムダな言葉が多くなります。


 さまざまなものが省かれているのです。

「ご注文はなにになさいますか」と問われて「俺、ビール」とだけ答える。

 この「俺、ビール」は述語がないし、助詞がないしで、これだけ取り出すとまったく意味をなしません。

「俺にはビールを持ってきてね」と書けば過不足なく説明できますが、実際にこんな言い方をする方はいませんよね。現実の会話ではやはり「俺、ビール」なのです。


 また「こそあど」の代名詞も多くなります。

「あれ取ってくれる?」「これは逸品ですね」などですが、なにを指しているのかわかりませんよね。そこで「鍋敷き取ってくれる?」「七宝焼は逸品ですね」のように具体的に言うこともあります。「鍋敷き取ってくれる?」はまだわかります。「七宝焼は逸品ですね」はどの七宝焼が逸品なのかわかりません。七宝焼であればすべて逸品なのか。やはりわかりづらいですよね。


 相槌(あいづち)を打つことが多いのも、現実(リアル)の会話の特徴です。

「昨日これ買ったんだ」「どれどれ?」「じゃ~ん、化粧ポーチだよ」「わ〜、かわいい!」「いくらしたと思う?」「わかんない」「一万五千円よ」「高〜い!」

 一文が短いですし、それに対していちいち相槌(あいづち)を打ちます。

 現実(リアル)の会話では、相槌(あいづち)を打たないかぎり会話が先へ進みません。だから相槌(あいづち)を打ち続けることになるわけです。




小説の会話

 しかしこれらを小説で書いたらどうでしょうか。

「俺、ビール」で読み手に通じるでしょうか。「あれ取ってくれる?」で通じるでしょうか。相槌(あいづち)を打ちまくって会話を進めるべきでしょうか。


 まず省くことについてですが、会話の流れの中で出てくるぶんには意味は通じます。

「俺、ビール」だけでは「俺はビールだ」という意味と誤解します。しかし「ご注文はなにになさいますか」と問われて「俺、ビール」なら意味はわかりますよね。

 だから省くことは、先に前提となる会話を書くことで納得させられるのです。


 では代名詞はどうでしょうか。これは明らかにわかりませんよね。「あれ取ってくれる?」という会話文が書かれていたとして「あれ」とはなにかが書かれていませんから、読み手にはなにを指すのか知る(よし)もないのです。

 この「会話文」を書いた直後に「鍋敷き」という単語を書けば、「あれ」イコール「鍋敷き」でつながって意味が通ります。

 だから代名詞を書いたときは、すぐに補足してください。「鍋敷きでいいの?」と返せば「そう、それ」と書いても通じます。


 最大の問題は相槌(あいづち)です。相槌(あいづち)逐一(ちくいち)書いていては、短い会話文だけが連発されてしまいます。小説の文章がほぼ会話文だけで占められる事態も発生します。

 確かに会話文も小説を構成する文であることは間違いありません。しかしバランスというものがあります。相槌(あいづち)を打ちまくり、延々と会話文が続くようだと感心しません。

 ライトノベルは「会話文」を読ませるジャンルですが、「会話文」偏重では物語の世界観や背景や舞台がさっぱりわからないのです。さらに人物の状況や状態もわかりませんから、なにが起きているのかもさっぱりわかりません。

 だからといって相槌(あいづち)を削って、物語に必要な情報だけを書いてしまうと、「説明している感」が強くなります。


「ウソっぽく感じない程度に、ある程度は現実(リアル)の会話に近い会話を目指しながら、ムダを省く」というバランスをとることがたいせつなのです。




キャラにふさわしい会話文

 老若男女の会話文を書き分けられなければ、キャラが立ちません。

 簡単に老人、青年、女子高生、子どもの書き分けということであれば、一人称を変えることで簡単に区別できます。

「わし」「私」「あたし」「ぼく」と書けば、書き分けられますよね。


 また語尾を変えることで、一人称を使っていない会話文でも書き分けは可能です。

 たとえば「女子高生」なら「〜じゃん」「〜でしょ」のようなフランクな語尾を使うでしょうし、「老人」なら「〜じゃ」「〜しちゃおらんよ」など古くささを感じさせる語尾が合います。

 淑女然とした女性なら「〜かしら」「〜だわ」「〜ですわね」のような語尾がありますが、実際にこんな話し方をする女性はまずいません。創作特有の話し方です。


 きちんと書き分けられているかは、音読してみると如実にわかります。

 声に出してみて、どうにも子どもの言い回しじゃないな、老人の言い回しじゃないなと確認していくのです。淑女として発声してみて、違和感がなければ正しい言い回しだとわかります。

 また実際に会話文だけで文章を書いてみて、後日読み返したときに「これは誰の発言なのか」が区別できれば、書き分けができているとも判断できるのです。




主人公の説明のための会話

 一人称視点では主人公の説明を地の文ですることができません。

 しかし主人公の説明をしないことには、どんな人物なのかが読み手には伝わらないのです。

 ではどうするか。

 他人の口で語らせましょう。

「Twitterでやりとりしていたときは女性だと思っていましたが、まさか男子高校生だったとはね」

 と書けば、主人公が男子高校生であることを説明できます。


 他人の口がなければ、自分で自分のことを考えるか話すしかありません。

 自己紹介の場面があればよいのですが、自己紹介シーンのある小説って読んだことはありますか。一人称視点の小説で「俺は健一。二十七歳のシステムエンジニアだ。」と言っているシーンなんて、あまり読んだことがありません。ないわけではないですが、いかにも説明している感が強くなるのです。

 自分が話せなければ、他人が話すしかありません。

 もしくは「書き出し」のシーンだけ三人称視点で書くか。ですがひとつの小説で一人称視点と三人称視点を混在させるのは、あまり賢いとは言えません。方法のひとつではありますが、「書き出し」が三人称視点になることで主人公への感情移入が弱くなるからです。

 となれば、やはり他人の口で語ってもらうのが最も自然な読ませ方になります。


 たとえば主人公には人には言えない過去や背景を背負っていることがあります。

 それを読み手へ自然に読ませられるのか。これが書き手の筆力を左右するのです。

 人物の過去や背景を読み手に示すとき、それらを地の文で書くととても説明くさくなります。

 地の文で説明を始めると、物語の流れがそこで止まります。そして回想シーンで過去へ行って人には言えない出来事や背景を語り、また現在に戻ってくる。

 物語が流れていかないことには、小説は退屈極まりない。

 また地の文で「〜ことがあったので、〜である。」なんて説明をされたら興醒めもよいところです。

 では会話文で書くべきでしょうか。

 本人が会話で過去や背景を語るのは、現実を考えると不自然ですよね。

 これは自分の情報を語ることが賢くないことに起因します。

 しかし、誰かに話を向けられて、それに答える形で過去や背景を語るということは現実でもあります。

 だから、まず誰かが当事者にボールを投げる必要があるのです。

 ボールが投げられたら当事者がそれに言及します。

 ただし、会話文で延々と説明されると前述したとおり不自然です。

 そこで、ボールを投げられたら当事者は「実は」と言って、地の文に任せ、ボールを投げた人物がそれに合いの手を入れます。そうしてまた当事者が会話文で説明していけばよいのです。

 言葉のキャッチボールをしながら、都度地の文で細かなところを説明していきましょう。これだけで格段にテンポがよくなります。

 またその流れで回想シーンへと場面転換するテクニックもあるのです。





最後に

 今回は「小説の会話」について述べました。

 会話文は、現実のやりとりをそのまま書いただけでは意味不明になります。

 老若男女を書き分けるために、小説として読みやすい会話文を心がけましょう。

 そして主人公の情報を説明するために、他人の口を借りるのです。

 主人公本人が作中で名乗るのは、あまりにもお粗末。

 でも他人の口から情報が発せられれば、読み手は違和感を覚えずに主人公のことがわかります。

 小説の中で書かれる会話文には、さまざまな機能があるのです。




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