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三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
惹起篇〜このことに気づいていますか
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876.惹起篇:その行動に理由はあるか

 今回は「ルールと理由」についてです。

 小説には守るべき「ルール」があります。一度決めた設定を覆してはならないのです。

 それでも覆さなければならなくなったら。そのときに必要になるのが「理由」です。

その行動に理由はあるか


 主人公にはさまざまな性格や嗜好が設定されます。

 タバコの煙の嫌いな主人公は、タバコを吸うはずがない。

 そんな主人公がタバコを吸う場面(シーン)を書いたらどうなるか。

 読み手から「設定崩壊」だと判断されます。

 一度「設定崩壊」と認識されたら、あなたの小説は読み手にとってとても陳腐なものに成り下がるのです。




設定のルールから逸脱しない

 この主人公は「タバコの煙が嫌い」という設定です。

 その設定を書いた途端、それが「ルール」と化します。

「ルール」が確立すると、小説を通じてそれを守りましょう。

 安易に「ルール」違反してはなりません。

「ルール」を破ると読み手が離れていきます。

 だから一度読み手と共有した「ルール」を破ってはならないのです。

 小説の決まりごとである「ルール」は、守るのが当たり前であり、破ると物語の前提が変わります。

 それでも「ルール」を破らないと物語が先に進めない事態も発生するのです。

 そういうときは「ルール」を破る明確な「理由」を作って書いてください。

「タバコの煙が嫌いな主人公」が「タバコを吸う」必要のある明確な「理由」を書き込むのです。

 たとえば「潜入捜査のため、柄の悪さを強調してヘビースモーカーのフリをしなければならない」とか「砂漠で水がなくなり、訪れたオアシスで水を分けてもらおうとしたが、仲間でなければ分けてくれない。仲間と見なされるにはタバコの回し飲みをするしかない」とか「俳優で引き受けた役柄がタバコを吸うから、演出家の指示に従わなければならない」とか。

 あえて「ルール」を破らせるためには、相応の「理由」が必要なのです。

 たとえ「理由」があろうとも、主人公には葛藤が生まれます。

「俺はこんなことをしたくもないのに、やらなければならない状況にいる。できればやらずに済ませる方法はないものか」

 田中芳樹氏『銀河英雄伝説』の自由惑星同盟側の主人公であるヤン・ウェンリーは大の紅茶党です。しかし戦場に赴くとコーヒーしかありません。彼が「無粋な泥水」と表現するコーヒーを飲まざるをえない状況にいるとき、葛藤があるのです。しかしダスティ・アッテンボローが「コーヒー」と言いつつブランデーの入ったカップを差し出すと、「たまにはいいね」と喜んで飲みます。銀河帝国側の主人公ラインハルト・フォン・ローエングラムとの会談においてコーヒーが差し出されたとき、ヤンは葛藤を抱えながらもコーヒーを飲まざるをえません。しかし「紅茶を飲める自由」についてラインハルトに語ります。

 本当はやりたくないのに、やらざるをえない状況に追い込まれ、「理由」に則ってなんとか遂行するのです。ラインハルトから勧められたコーヒーを無碍(むげ)に断るのは非礼にあたる。だからコーヒーを飲むしかないのです。

 しかしこういうことは本来やるべきではありません。

 一度設定した「ルール」を簡単に破るべきではないのです。

 そこに人物の個性が生まれます。




人物に厚みを持たせる

 どんなに「ルール」のギリギリに立たされても、できうるかぎり「ルール」を遵守させましょう。

 そうすることで人物の判断基準のギリギリが読み手に伝わるため、その方向での厚みが生まれるからです。

 このように「ルール」のギリギリを攻めることで、人物に厚みを持たせられます。

 なにが好きで、なにが嫌いなのか。

 なにができて、なにができないのか。

 なにに興味があって、なにに興味を持てないのか。

 そういった、その人物の「ルール」ギリギリを読ませることで、人物の価値観や能力が明らかとなります。

 あらゆる方向から「ルール」の適用範囲が決まることで、人物が立体的な個性を有するようになるのです。

「小説賞・新人賞」の選評で「人物が薄っぺらい」と言われてしまう方は、「ルール」のギリギリを攻めた「エピソード」を作りましょう。

 つねに「ルール」のギリギリを攻めることで、人物がくっきりと浮かび上がるのです。




物語にもルールがある

 人物についての「ルール」があるように、物語にも「ルール」があります。

 たとえば現実世界の「青春小説」に、巨大隕石が地球へ衝突するという話は通りません。それでは「SF(空想科学)小説」や「パニック小説」になってしまいます。

「青春小説」には若者たちの日常を切り取るという明確な「ルール」があり、これを逸脱しないことが求められるからです。

「ローファンタジー」小説なのに異世界へ赴くのも「ルール」違反になります。ただし逆に異世界から人物や魔物が現実世界へやってくるのは「ルール」のギリギリを攻めていますが範囲内です。なぜなら、たとえ異世界から人物や魔物がやってきても、物語は現実世界を出ていません。だから「ローファンタジー」で通るのです。

「主人公がドラゴンと戦う話」を書きたいと思えば、多くの方が「ハイファンタジー(異世界ファンタジー)」ジャンルを選ぶと思います。

 しかし「ドラゴンが現実世界に現れて、主人公がそれと戦う話」ということになれば「ローファンタジー(現代ファンタジー)」になるのです。当然自衛隊や米軍が立ち向かうことになるでしょう。であれば主人公は自衛隊員ということも考えられます。

 こういった「ルール」の境界線が守られているからこそ、ジャンル分けは意味を持ちます。


 では「現実世界で男女が両片想い。でもそこに宇宙人がやってきた」という話はどのジャンルになるのでしょうか。「現実世界」での恋愛ものだから「現実世界恋愛」かな。それとも「宇宙人」が出てくるから「異世界恋愛」? それとも「SF」かな。いや、でも「現実世界」から出ないのであれば「ローファンタジー」ということもありえるな。

 いろいろ考えられると思います。

「両片想い」は明確な恋愛要素ですから「恋愛」ジャンルですよね。でも「宇宙人」は「SF」ジャンルで登場しますよね。

「異世界恋愛」は「異世界における恋愛もの」のことなので「異世界恋愛」でないことは確かです。

 であれば「現実世界恋愛」かなと思いますよね。でも「宇宙人」が出てくる「現実世界」は存在するのでしょうか。

 空想科学雑誌の受け売りで「宇宙人は地球上に存在するんだ」と思っている方にとっては「現実世界」に「宇宙人」がいても不思議はない。だから「現実世界恋愛」でもよい、ということになります。

 ですが「少なくとも現在宇宙人は地球にいない」と思っている方にとっては、「宇宙人」というフィクションが入っているため「現実世界恋愛」はふさわしくないと思うはずです。

 すると「宇宙人」というフィクションが「SF」なのか「ファンタジー」なのかが問題になります。

 これは正直どちらでもかまいません。

「SF」は「空想科学」であり、地球外や未知のテクノロジーがたくさん出てくるようなら「SF」でしょう。

「ファンタジー」は「空想」「幻想」であり、通常ありえない出来事が起こるジャンルですから、「宇宙人」が出てきても「ファンタジー」だと言えなくもない。とくに今回の設定では「現実世界に宇宙人が登場する」わけですから「ローファンタジー」にしてもかまわないのです。

 でも「SF」にしろ「ファンタジー」にしろ、恋愛要素が目立たないジャンルです。

 それなら「現実世界恋愛」ジャンルにしてキーワード・タグに「宇宙人」と書く手もあります。逆に「SF」「ローファンタジー」ジャンルにして「恋愛」「両片想い」のようなキーワード・タグも設定できます。

 私のオススメは「現実世界恋愛」ジャンルにしてキーワード・タグに「宇宙人」と書く方法です。この小説の売りはあくまでも「恋愛」要素であり、宇宙を感じさせたり不思議を感じさせたりするところにはありません。

 主な要素によってジャンルを決めれば、そのジャンルの読み手に響く作品となって、閲覧数(PV)やブックマークが増えます。もし「SF」「ファンタジー」にしてしまうと、肝心の恋愛要素が響かず、閲覧数(PV)やブックマークもそれほど増えないはずです。

 ジャンルの「ルール」をよく考えてみましょう。





最後に

 今回は「その行動に理由はあるか」について述べました。

 人物に設定したことは「ルール」です。それに反すると読み手から失格を言い渡されます。

 しかし「ルール」に怯えて小さくまとまるより、「ルール」のギリギリを攻めて人物の厚みを出すほうがよいのです。境界線を越えないギリギリのところを書いていきましょう。

 またジャンルにも「ルール」があります。

 その境界線がわかりづらいこともありますが、「主にどんな物語なのか」を最優先にしてジャンル分けしてください。




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