847.創作篇:レビューを書いてみよう
今回は「書き手こそレビューを書くべき」についてです。
読んだ小説が面白かったとします。なぜ面白いと感じたのでしょうか。どの部分が面白かったのでしょうか。
また面白くなかったら、なぜ面白くないと思ったのか、どこが面白くないと感じさせるのか。
それがわかれば、書き手としてよいものを自身に取り込んで、悪いものを排除できます。
レビューを書いてみよう
本コラムをご覧の皆様の多くは「小説を書く」側の人間です。
ですが「小説の書き手が、他人の小説を批評してはならない」という法律や規則はありません。
小説投稿サイトは一種の「SNS」です。
良いと思った作品には、どこが良いと思ったのかを書き手に伝えてください。
悪いと思った作品には、遠慮せずにどこが悪いと思ったのかを伝えるのです。
良い批評を書くのは喜ばれるけど、悪い批評を書くのは角が立つだけだから嫌だな。
そう考えたくなるのもわかります。
ですが批評を書くのは相手以上に、あなたにとってよい影響を与えるのです。
つまりあなたの進化のために、あえて他人の批評を書きましょう。
どこが良いと思ったのか
良い批評が書ければ、あなたは小説を書くときに求められる要素がなにか明確に理解できるのです。
つまり「表現が良い」「状況が良い」「キャラが良い」といった点に意識が向くようになります。良い点に意識を向けることで、あなたはひとつ進化できるのです。
その意識で小説を書いてください。相手の良い点を生かした作品に仕上がります。
これはパクリではありません。「良い点がなにか」を明確に理解したうえで、それを活用するわけです。
小説を書くには「引き出しをたくさん持つ」ことが求められます。
引き出しがひとつしかないと、書ける小説もひとつに限られてしまうのです。
「異世界転生ファンタジー」が大好きでそればかり読んでいると、引き出しには「異世界転生ファンタジー」しか残りません。しかもひとつの作品しか読まないようでは、その引き出しにあるのも「たったひとつの異世界転生ファンタジー」だけなのです。
しかし他ジャンルの作品を読むことで「引き出し」の数は確実に増えます。仮に「異世界転生ファンタジー」にしか興味がなくても、さまざまな書き手の「異世界転生ファンタジー」を読めば、その書き手の数だけバリエーションが残るのです。
「引き出しをたくさん持つ」ために、積極的に他の書き手の作品を「批評」をしていきましょう。
どこが悪いと思ったのか
悪い批評が書ければ、あなたは自分で書くときに「こうしてはならない」という教訓を得られます。
つまり「表現が紋切型」「状況が台無し」「キャラの影が薄い」といった点に意識が向くのです。そして「こう書くとせっかくの作品が埋もれてしまうのか」と気づきます。悪い点に意識が向けば、あなたはひとつ進化できるのです。
誰でも他人に対しては容赦なく罵倒できます。他者を否定して自らの価値を高めようとする本能が働くからです。
しかし勘違いしないでください。
悪い批評は相手の成長を促すためにするものであり、罵倒は自分の感情を爆発させているに過ぎません。
そして悪い批評は相手のためでもありますが、批評を書いたあなた自身のためでもあります。
多くの気づきを得るには、どんな文章がどういう作用を引き起こすのか知りましょう。
「他の多くの書き手が書いている『異世界転生ファンタジー』と代わり映えしない」という指摘は、確かに的を射ています。
しかしその程度のことは書き手自身もわかっているのです。わかっていながら凡百の「異世界転生ファンタジー」を書いています。それしか読んでいないから、それしか書けないのか。読み手のパイが大きいから凡百を承知で書いているのか。その狙いを外してしまうと批評は成り立ちません。
だから「異世界転生ファンタジー」だからと片っ端から批評で食ってかからないほうがよろしいのです。
「異世界転生ファンタジー」について批評を書くのなら、書き手が想定していた設定を活かしきれているかどうか。そこを読み解いてください。
「この作品は単なる異世界転生ファンタジーのひとつに過ぎない。そこが最大の魅力ですが、この作品独自のアイデアがうまく活かされていないのではないか。」のように提起するのです。
「村人に転生して成り上がる」とか「ゲーム世界に転生したけどチートスキルで無双」とか、いわゆるテンプレートな作品は山ほどあります。それにいちいち食ってかかるのは当たらないのです。
たとえば「異世界転生ファンタジー」で賢者に転生したとします。それなのに剣を振り回して戦うのであれば「設定が活かされていないよね」と言うことです。
せっかく面白くなりそうなネタが書いてあるのに、それを活かしきれていないというのは追及するに足ります。「こんなにおいしい設定なのに、なぜ活かさないんですか」と批評を書くのです。
それだけで書き手が失念していたことを思い出すかもしれません。そうであれば、いずれかのタイミングで展開がそちらに向く可能性もあります。
もちろん批評を無視されることもあるでしょう。でも指摘はしたのですから、それに耳を傾けないのは相手の責任です。あなたが憤る必要はありません。
積極的に批評を書こう
他人の小説を批評するには、その作品を深く読み込む必要があります。深く読み込んでいれば「なにかが足りない」や「ここがおかしい」を見つけるのは簡単です。しかし辛口批評をするのであれば、良い点を先に書きましょう。
どんな小説にも「良い点」はあるはずです。良い点のまったくない小説であれば、それこそ批評するに当たらないでしょう。しかしなにかひとつでも「良い点」があるのなら、その書き手には未来があります。
どうすれば「良い点」が今よりもっと良くなるのかを指摘するのが良い批評なのです。
たとえば「ハーレム」ものなのに「誰が本命かわからない」のであれば、「本命が誰か匂わせたほうがもっと読み手を惹き込めますよ」と指摘するだけで、見違えるように作品が蘇ります。
そうしたうえで悪い批評を書くのです。
人間、先に悪いことを言われるとカチンときます。先に良いことを言われた後に悪いことを指摘されると、案外素直に聞き入れるものです。「この人は私の才能を理解してくれている。そんな人がダメ出ししているのだからここは直すべき点なんだ」となります。
そして最後に必ず「今後の展開を期待しています。」のように書けば、相手も前向きに奮起してくれるでしょう。
このように、一般的に批評は相手の成長のために書きます。
ですが、批評を書くためには、物語の作り方についてある程度知識が必要です。
積極的に批評することで、あなたの小説の知識が整理されます。整理されれば、あなたが小説を書く際に「以前このようなところでこう批評したことがあったな。言った本人がハマっては駄目だからきちんと丁寧に書こう」と思えるようになるのです。
だからこそ、小説の書き手は積極的に批評するように心がけましょう。
きっとあなたの筆力を大幅に高めてくれますよ。
最後に
今回は「レビューを書いてみよう」ということについて述べました。
「情けは人の為ならず」と言います。
相手に情けをかけるのはその人のためもありますが、巡り巡って自分のためになるのです。
だから積極的に情けをかけてまわりましょう。たくさん批評を書くのです。