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三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
創作篇〜創作の手順を再確認しよう
836/1500

836.創作篇:読みにくい小説は嫌われる

 今回は「読みにくい小説」についてです。

 あなたは「読みにくい小説」を読みたいですか。

 私は御免こうむります。文字がびっしりと詰まった小説に魅力を感じません。

 疲れるだけだとわかっているからです。

読みにくい小説は嫌われる


 あなたの小説が晴れて閲覧数(PV)を増やしました。おめでとうございます。

 しかし、最初の投稿ぶんだけで、二回目以降がとんと伸びない。よくあることです。

 その多くはあなたの作品が「読みにくい」からではないでしょうか。




読みにくいと疲れる

 まず認識していただきたいのは「読みにくい作品を読むと疲れる」ということです。

 たとえば「走ることができます。」という述語があったとしましょう。

 この述語、読みにくく感じませんか。心へ素直に入ってこないのです。

 そこで読みやすく変換してみましょう。

「走れます。」

 これならすんなり納得できます。

「走ることができます。」は日本語の文法として間違っているわけではありません。

(「間違っているわけではありません。」も読みにくいと思います。読みやすくすると「間違っていません。」です)。

 読みにくいと感じるのは、迂遠な表現のせいです。

「走れます。」と書けるのに「走ることができます。」と書く。では実際陸上部のコーチに「まだ走ることができます。」と答えるでしょうか。答えませんよね。「まだ走れます。」と答える方がほとんどではないでしょうか。

 ここに読み疲れを引き起こす原因があります。




「こと」「ようになる」は論文向けの助詞・助動詞

 上にあげた「走ることができます、」は、実は論文向けの書き方なのです。

「私は走る」ことができます。のように、「私は走る」という定義を引用する際に、定義部分に手をつけず活用させるときは、「ことができます。」のような表現をするのです。

 同じ「こと」はその点でとても便利に使えます。

「伝えることができる。」は「伝えられる。」に、「時系列が乱れることはありません。」は「時系列は乱れません。」に、「断定することで読み手を物語に没入させることができます。」は「断定すると読み手を物語に没入させられます」に、「他人に対しては容赦なくバッシングすることができます。」は「他人には容赦なくバッシングできます。」に、「教訓を得ることができます。」は「教訓を得られます。」(これは「教訓を得られることができます。」と書く方いらっしゃいますが、可能動詞の重複表現ですので誤りです)にそれぞれ置き換えられます。というより、小説ではそう書くのが当たり前なのです。

 あなたの小説で「こと」はどれほど使われているのでしょうか。


「こと」の他に「ようになる」も論文向けの書き方です。

「良い批評(レビュー)が書けるようになれば、」は「良い批評(レビュー)が書ければ、」で意味が通ります。このような回りくどい表現が、読みにくさにつながっているのです。


 さらに「〜ている。」の活用も読みにくさを醸し出します。

「伝わっている。」なら「伝わる。」に、「伝えられている。」なら「伝えられる。」に置き換えてもほとんど意味は同じです。ニュアンスが若干違いますが、迂遠なニュアンスを読むと疲れます。


 これらの迂遠な言いまわしは、書き手として分量が水増しできるため多用しがちです。しかしたいていは最短距離で表現したほうが読み手も疲れません。

 読み疲れない文章は、いつまでも読んでいられます。

 読み疲れる文章は、すぐに読むのをあきらめるでしょう。




誤字脱字にもイライラする

 あなたは誤字脱字のある小説を読んだことがありますか。

 私は自分でも書いてしまうほどの「誤字脱字王」を自負していますが、まったく喜ばしくないのです。

 誤字脱字はないほうがよい。誤字脱字をなくすために原稿を何日か寝かせて、そのうえで推敲することである程度解消することはできます。

 それでも誤字脱字が後を絶たないのは、PC画面を見て推敲をしているからです。

 面倒くさくても「紙に縦書きで印刷して赤ペンで修正していく」ようにするだけでも、驚くほど誤字脱字は減ります。

「紙に縦書きで印刷する」ことでPC画面の横書きテキストでは気づかなかった誤字脱字が、浮かんで見えるのです。PC画面の三倍から五倍くらいは見つけやすくなります。

 とくに連載小説は、一度読み手をイライラさせてしまうと、次話を読んでもらえなくなります。連載小説で成り上がりたい方は、「絶対に誤字脱字をしないよう」心がけてください。




冒頭から設定だけを書いていませんか

 小説の「書き出し」で、主人公を放っておいて、世界観の説明に費やしていませんか。

 とくに群像劇にありがちですが、主人公がひとりの一人称視点の小説でも陥りやすいミスです。

「いつになったら主人公が活躍するんだよ」と読み手はイライラしてきます。

 物語の世界観を読み手に伝えること自体はたいせつです。しかし「書き出し」から書き連ねてはなりません。

 まず主人公が出来事(イベント)に放り込まれてそれに対処するさまを書き、その行動によって世界が広がります。広がった世界を都度説明していくようにすれば、読み手をイライラさせません。「書き出し」から設定を絨毯(じゅうたん)爆撃しては、読み手から呆れられて当然です。

 そもそも主人公が見聞きしていない設定をあれこれ書くのは、読み手としては興醒めもよいところ。

「主人公には知らされていない情報を、読み手にだけは知らせる」『秘密』というテクニックがあります。

「秘密」は物語を盛り上げる手段として有効に働きますが、「書き出し」の段階で「秘密」を書いたとしても、読み手にはなんの効果もないのです。




ページを淡くする

 あなたは経済学の専門書籍を読了できますか。私はあきらめが早い(たち)なので、なかなか読了できません。

 とにかく「説明のない専門用語の多用」と「ページにびっしりと並ぶ文字列」を見ただけで、その書籍を棚に戻してしまうほどです。

「ページが濃い」というだけで、嫌われます。

 とくにライトノベルであれば、できるだけ「ページは淡い」ほうがよいのです。

 お手軽に読めるから「ライトノベル」なのですから、小難しい論文を嬉々として読める人はまずいません。

 漢字を開く(ひらがなにする)、意味のまとまりを意識して改行する、一文を適度に短くする。

 そうするだけで「ページは淡く」なります。

「ページが淡い」と「簡単に読めそう」と意欲的に読み進めてくれます。




会話文だらけで舞台の説明がない

「書き出し」から舞台の説明を延々と続けるのは駄目です。しかし物語が進んでいるのに舞台の説明をいっさいしていないのは、それはそれで問題があります。

 主人公や登場人物はどこにいるのか、それはいつのことか、天候はどんなか。そういったものを書かなければ、暗闇で街灯を頼りに演技している人物の姿しか思い浮かべられないのです。

 だから「書き出し」以外では、じゅうぶんに舞台を説明するように努めてください。





最後に

 今回は「読みにくい小説は嫌われる」ことについて述べました。

 せっかく貴重な時間を利用して小説を書いたのに、嫌われたらたまりませんよね。

 嫌われる要素をいくつか挙げました。

 どれかひとつでも該当すれば、あなたの作品は読み手から嫌われてしまいます。

 嫌われない作品を書くには、文法も含めさまざまなアプローチを検討しましょう。




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