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三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
構成篇〜執筆のロジックを知ろう
825/1500

825.構成篇:ジャンル2:愛情・友情

 今回は引き続きブレイク・スナイダー氏『SAVE THE CAT!』の10ジャンルをまとめました。

「愛情小説」「友情小説」は誰もが通る人生の出来事ですね。

ジャンル2:愛情・友情


 愛の物語(ラブストーリー)以上に本能的なものはありません。誰かと一緒になりたいという気持ち以上に、人間の心を直撃するものは存在しないのです。

 でも愛の物語(ラブストーリー)といっても、ロマンスの話とは限りません。確かに、ほとんどのロマンス小説はこの枠に収まりますが、『SAVE THE CAT!』式の「愛情・友情」ジャンルは、ロマンスにとどまりません。友情からペットに注ぐ愛情に至るまで、愛と言ったらなんでも含みます。

 このジャンルを「愛情・友情」と呼ぶのは、主人公がもうひとりの誰かによって変わることが、その手の物語の本質だからです。どんな物語でも主人公の変容について描かれるものです。

 なにかのきっかけやイベントが原因でプロットが転がり始め、主人公を究極的な変容に導いていきますよね。この「愛情・友情」の物語の場合は、主人公に変化を促すプロットを転がすのが、イベントではなくて「誰か」の存在なのです。


 だから「愛情・友情」ジャンルの物語の「4.打破」は、ほとんど間違いなく誰かと出会います。この誰かという存在は恋愛対象でも新しい友達、ペット、またはモノですらありえますが、その誰かが入ってきたおかげで、主人公の人生は永遠に変わってしまうのです。

「誰か」がどんな存在であっても、「愛情・友情」の物語は必ず同じような流れ方をします。

「愛情・友情」の物語とは、補完の物語です。ある人が、もうひとりのおかげで満たされます。そこまでいかなくても、主人公が必要としていた変化を、誰かがもたらしてくれる物語です。

 誰がキスしてもしなくても、基本的にはどれも同じ話なのです。

 仮に主人公と「誰か」が一緒にならない場合でも、ふたりはお互いが変われるように助け合います。

「ラブストーリー」ではありますが言葉に惑わされないでください。物語に恋愛要素が入ってくるからといって、「愛情・友情」の仲間入りとは限りません。書く小説が「愛情・友情」ジャンルの物語かどうかは、あなたが「表の物語」と「裏の物語」をどのように扱うかにかかってきます。


「表の物語」は主要な物語の軸。外側で起こっている物事です。あなたの小説の「売り」で、プロットを前に進める力になります。

 一方「裏の物語」は、横道または裏道の物語です。主人公のたどる魂の旅路を具現する人物(キャラクター)(ひとりまたは複数)のことになります。

「愛情・友情」ジャンルの小説の場合、ラブストーリーが「表の物語」です。その小説の「売り」そのものと言えます。

 一方で「愛情・友情」ジャンル以外の物語では、愛情や友情の話は通常「裏の物語」になります。愛情や友情はそのような小説のプロットの焦点ではないということです。


 あなたが書いている小説が「愛情・友情」の物語かどうかは、「4.打破」セクションを見ればわかります。もうひとりの主役が現れたということだけで、主人公の変化が始まるようなら、あなたが書いているのは「愛情・友情」の物語といって間違いありません。




愛情・友情物語の三要素

「愛情・友情」の物語を書くなら、欠かせない三要素があります。

「未完成の主人公」「片割れ」「厄介な事情」の三つです。


 まずは「未完成の主人公」から順に見ていきましょう。まず、その小説は誰の物語なのか考えます。

「愛情・友情」の物語はもともとふたりの物語ではあるのですが、ふたりのうちの片方が、自分の人生を軌道に乗せるためにより頑張らないといけないのが一般です。それが、ふたりの中でいちばん大きく変わっていくまたモノになります。変わらなければ困る、そして最後には必ず変わる人です。

 今度「愛情・友情」の小説を読むときには、その物語が語っているのが誰か考えてみてください。

 例外ももちろんあります。ふたりの主人公が双方ともお互いの存在によって同じように変わる場合、主人公はふたりということになります。これを「二人芝居」と呼びます。この場合、書き手はふたりで物語を語ってバランスをとります。


 語り手が誰でも何人いても同じことです。どの物語にも、人生を変えないと困る「未完成の主人公」が、変化を促してくれる「誰か」の到来を待っています。その「誰か」が「愛情・友情」で大事な第二の要素「片割れ」です。

 これは世界中でただひとり、主人公の人生を完成形にしてあげられる「誰か」。主人公が渇望している変化を持ってきてくれる「誰か」です。

 ちょっと独自の世界を持った変わり者であることが多いのが、この「片割れ」つまり「誰か」の特徴になります。この人が新しく登場したから主人公の人生がかき乱されるわけで、普通でもつまらない人でもダメなのです。なにしろひとりで「打破」セクションを背負うのですから。この「片割れ」が注入されたことで、主人公は「停滞=死の瞬間」の泥沼から一気に引きずり出されて第二幕「非日常」に飛び込まされるのです。


 不可欠な最後の要素は「厄介な事情」です。これがあるから、「誰か」は(少なくともしばらくは)一緒になれません。厄介な事情は三角関係を引き起こす第三者の可能性もあります。その場合は「三人芝居」になりますね。「厄介な事情」は、三角関係を引き起こす第三者でもあり得ます。

 あなたが書く小説の「誰か」たちに降りかかる「厄介な事情」がなんであっても、それは物語の主な対立要素、つまりとても重要な障害物になるのです。ちゃんとした「厄介な事情」がなんであっても、それは物語の対立要素、つまり障害物になりますから、とても重要です。

 ちゃんとした「厄介な事情」がなかったら。邪魔が入らないのなら、愛するふたりは最初の10ページで永遠に結ばれて夕日に向かって消えてしまえばよいはずですよね。それが三百枚・十万字の小説になれるのでしょうか。





最後に

 今回は「恋愛」「友情」ジャンルについて掘り下げました。

「未完成の主人公」「片割れ」「厄介な事情」の三要素で成り立っています。

 そして「未完成な主人公」を変える力があるのは「片割れ」の存在だけです。

 変わるきっかけが「厄介な事情」になります。これがとてつもなく硬く高い壁としてそびえ立つのです。ですがこれを越えない限り、主人公が変わることはできません。

 基本的には恋愛小説や友情物語はすべてこのジャンルに収まります。




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