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三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
構成篇〜執筆のロジックを知ろう
811/1500

811.構成篇:内面の未熟さの克服

 今回は「第三部」である「転」「解」についてです。

 主人公は「内面の未熟さ」を乗り越えなくてはなりません。乗り越えるからこそ成長するのです。

 今回は「第三部」である「転」「解」についてです。

 主人公は「内面の未熟さ」を乗り越えなくてはなりません。乗り越えるからこそ成長するのです。





内面の未熟さの克服


 第三部の主だった役割は「佳境(クライマックス)」へと向けて、さまざまな準備をすることです。

 四部構成の第三部は「転」「解」のように「佳境(クライマックス)」を含めていますが、ここで述べる「第三部」は「佳境(クライマックス)」の直前までの場面を指しています。

佳境(クライマックス)」が物語の華であれば、「第三部」はそのお膳立てをする部分です。「佳境(クライマックス)」に必須の前提条件をすべて揃えることが主たる目的になります。




第三部

 第三部の始めでは第二部までに主人公が集めた情報を組み合わせる作業に入ります。

 第二部までは主人公に出来事が起こったと思いますが、第三部では主人公から出来事を起こすことになるのです。

 しかし一気に逆転のタッチダウンを狙うのではなく、第三部の始めでは探りを入れる程度にとどめましょう。始めから逆転を目指してしまうと、第三部がそこで終わってしまいます。それでは三百枚ももちません。


 第三部の始めではおどおどしたところがありつつ、自信なさげにとりあえず行動を起こしてみるのです。

 推理小説なら、まず第二部までに集めた情報からいくつかの可能性を導き出す作業をします。いわゆる「捜査会議」ですね。しかしそれらが本質を捉えていてはならないのです。ここから可能性をひとつずつ潰していくことで、確度の高い情報が次々と手に入ります。アリバイ潰しをしていくのです。その情報がさらに新たな情報への呼び水となります。探偵や警部がどんどんと真実に迫っていって「気づき」を得るのです。推理小説の醍醐味がこの第三部に詰まっています。

 しかし以前お話ししたように、真犯人と証拠は物語の最初から存在していなければなりません。また読み手には第二部までの間に、推理に必要な情報をすべて開示していることが必要になります。最初はまったく疑いようもない人物が真犯人だと判明するからこそ、「推理」小説なのです。「真犯人はこの中にいない」と言った探偵や警部が過去にいたでしょうか。もし「真犯人は幽霊だ」などと言い出したら、読み手であるあなたは呆れかえることでしょう。物語の最初から少なくとも真犯人の名前や存在が出ていなければなりません。




内面の未熟さとの戦いから成長を見せる

 第三部は第二部のラストで煽った「惹き」と「内面の未熟さ」との戦いからスタートします。それは主人公が「真実」へ向かうための葛藤です。

 人間は本来「真実」を欲しますが、自分の中にある「内面の未熟さ」を否定しきれません。「真実」が見えてくるほど臆病になるのです。

「内面の未熟さ」に起因する臆病さを乗り越えて「真実」に迫っていく過程が主人公の「成長」を表しています。

 小説は本来「主人公の成長物語」なのです。最終的に成長するのかしくじるのかは「結末(エンディング)」を読むまでわかりません。しかし、主人公が出来事を通じて変わらなければ小説を読む意味がないのです。

 そこで主人公は物語のいちばん始めの出来事(イベント)、つまりいきなり「出来事(イベント)の渦中に放り込ま」れたものと再度対峙することになります。

 初回と異なるのは、前回は否応なしに渦中に放り込まれましたが、今回は自ら能動的に出来事(イベント)に参加することです。

 これによって主人公は物語の開始時よりどれだけ「成長」したのかを読み手に知らせなければなりません。


 戦争小説であれば、単なる二等兵として戦いに従事した主人公が、第三部の始めでは伍長となって部下を率いて戦うことになります。自分ひとりが生還できるかという「内面の未熟さ」と、率いている部下とともに生還できるかという「成長」の対比を読ませるのです。しかし「成長」して結果を残したとしても、それが「真実」へ近づくこととは直接結びつきません。「成長」は確かにしていますが、「内面の未熟さ」がまだ払底できていないからです。

 推理小説の例で「可能性をひとつずつ潰していく」状況に似ています。「これが真実だ」と思って捜査するのですが、容易に「真実」へとたどり着けないのです。しかし「真実への可能性」を見つけ出している点が、物語開始当時とは異なります。




内面の未熟さに打ち克つ

「真実」が見えてきた主人公は「内面の未熟さ」との最終対決をします。

 ここは第三部の中でいったん主人公が沈み込む場面です。

「真実」が見えてきた今、もはや「内面の未熟さ」を持ち続ける必然性がありません。

 しかし「内面の未熟さ」は主人公が本来持っていたものですから、容易に断ちがたい。

 ここまで順調に「成長」してきたところで、「対になる存在」や外野から手厳しい反撃を喰らい、「内面の未熟さ」が揺さぶられてしまうのです。

 これにより主人公は「成長」を見せて「真実」を選ぶのか「内面の未熟さ」に屈するのかを迫られます。

 どちらかを選べばなにかを得る代わりになにかを失うのです。

 わかりやすくいえば、金銭を選んで信用を失うのか、信用を選んで金銭を失うか。この二者択一です。

 読み手がハラハラ・ドキドキしてくる場面でしょう。

 そのギリギリのところで、主人公は「内面の未熟さ」に打ち克って「真実」を選びます。

 そうなればもう元の状態には戻れません。「内面の未熟さ」が目立っていた自分を捨て、「真実」を追い求める新たな自分へと変貌します。

 このことは、単に「○○を選んだ。」と一文で書くのではなく、出来事(イベント)場面(シーン)で読ませましょう。

 場面(シーン)で読ませることで、「内面の未熟さ」に打ち克ったことがより際立ちます。


 推理小説では「数々あった可能性を潰し終えて、たった一本の真実への道を見つけ出す」シーンです。可能性を潰す作業は地味で目立ちにくいため物語としては「沈み込み」を感じさせます。しかしそこから「真実」を導き出すことによって、ドラマは「佳境(クライマックス)」を迎えるのです。

「剣と魔法のファンタジー」では、重要な人物が命を賭して「対になる存在」である魔王の「弱点」を勇者パーティーに教えてくれます。それは今の勇者パーティーには手が届かないものでした。勇者パーティーはたいせつなものを失いますが、魔王退治の手がかりを手に入れます。そこで魔王との戦いに必要となるアイテムや魔法や戦術などを取り揃えるのです。そして魔王との対決つまり「佳境(クライマックス)」への扉を開かれます。





最後に

 今回は「内面の未熟さの克服」について述べました。

 物語当初の主人公には「内面の未熟さ」があったのです。ですが、さまざまな出来事を経ることでそれを乗り越えるだけの精神力が身につきます。

 次はいよいよ小説で最も盛り上がる「佳境(クライマックス)」についてです。

 



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