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三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
回帰篇〜あきらめないで書きましょう
785/1500

785.回帰篇:知らないことは書けない

 今回は「知らないことは書けない」ことについてです。

 知らなければ調べましょう。体験できることは体験しましょう。

 でも反社会的つまり犯罪行為は絶対に体験しないでください。そういったものは調べればたいてい体験談が見つかります。薬物中毒者だった方が書いた著書というものは世の中に結構出回っています。最近では元プロ野球選手の方の著書が発売されましたね。そういうものを読めばいいのです。

知らないことは書けない


 とても当たり前のことを書きました。

 しかしこれをわきまえていない書き手が殊のほか多いのです。

 最近「オッサン」「辺境」「スローライフ」が流行っているから。という理由で、都会で暮らすバリバリのキャリアウーマンが「オッサンの辺境スローライフ」小説を書こうとします。

 もちろん女性の書き手に「オッサン」の心理がわかろうはずもなく、都会暮らしを送っている人は「辺境」の雰囲気なんて知りもしない。時間に追われる生活をしながら「スローライフ」がどんなものかもわからないのです。

 そんな書き手の書いた「オッサン」「辺境」「スローライフ」な小説が多くの読み手の心をつかめるでしょうか。

 まず無理ですよね。

 書き手が知りもしないことを小説に書いても、読めばすぐにバレます。現実味(リアリティー)に欠けるからです。

 長編小説くらいなら妄想だけでなんとかしてしまう剛の者もいます。

 たとえばこれまで身内に不幸のなかった書き手が、小説の中では両親を戦争で失った若者の気持ちなんてわかりません。それこそ「もし私の両親が戦争で失われたら、どう感じるのだろうか」を妄想して答えを探す以外にないのです。三百枚・十万字の長編小説ならこれで乗り切れます。ですが連載小説は続けていくにつれ、妄想だけではどうにもできなくなるときがやって来るのです。

 やはり「知らないことは書けない」ときが来ます。




知らないことは調べよう

 では書き手が「知らない」ことを小説で書くにはどうすればよいのでしょうか。

「知らない」ことを「わかる」ようになるまで調べるのです。つまり「調査」と「取材」をしてください。

 たとえば「デイトレーダー」を小説に出したいとします。「デイトレーダー」ってどんなことをしている人かすぐにわかるでしょうか。多くの方は名称は知っているけど、具体的にどういうことをしているのか漠然としているはずです。

 そういうときは「デイトレード」に関する情報を集めて読み込んで理解してください。

 入門書から読み始め、それが理解できたら少しずつ難しい書籍を読んでいって専門用語を憶えていくとよいでしょう。

 どの程度まで調べればよいのか。とくにこのレベルというものはありません。ただし現実味(リアリティー)を追求するなら、実際に証券口座を開設して、株式を売り買いしてみるくらいはすべきです。実体験すれば、わからなかったものが「わかる」ようになります。

 株式会社の経営に関する小説が書きたい場合なども、実際に株式を売買してみると、投資家が株式会社にどのような影響を与えるのかわかるのです

「ロックバンド」の物語を書きたいのなら、音楽の資料を集めて「楽器が弾けるようになる」「作詞できるようになる」「作曲できるようになる」といったところまで「調査」すれば十全でしょう。さらに深く知りたい場合は実際に「ロックバンド」を結成して活動するのも「あり」です。人間関係を維持する、良くする、悪くなるといった局面を実体験できます。

 現実味(リアリティー)の追求のためには、「入門書」からスタートして実際に行なってみるくらいの努力は必要です。

「調査」「取材」はこういうときに役立ちます。だからこそ現在の小説投稿サイトでは、そういった現実味(リアリティー)の必要ないファンタジー小説がよく書かれていて大勢の読み手にウケているのです。

 芥川龍之介賞を授かったお笑い芸人ピースの又吉直樹氏『火花』は、お笑いコンビが主人公の物語です。これは又吉直樹氏にとっては「知っている」情報だからこそ現実味(リアリティー)を伴って大勢の読み手に受け入れられたのです。

 ポプラ社小説大賞で大賞を射止めた齋藤智裕(水嶋ヒロ)氏『KAGEROU』の主人公は会社の営業マンでしたが、リストラされて多額の借金を背負ってから始まる話です。果たして水嶋ヒロ氏は「リストラされた営業マン」の心境を知っていたのでしょうか。芸能畑を歩いてきた彼はおそらく知らないはずです。妄想だけで書いた小説であることは読み手の誰が見ても明らかでした。文章の拙さも相まって、『KAGEROU』は多くの読み手から大バッシングを食らいました。「賞金一千万円に値しない小説」だと。以後水嶋ヒロ氏は小説を書いていません。彼は創作活動のために芸能界を引退したはずなのに、小説を書くことなく芸能界へ復帰してしまったのです。ポプラ社小説大賞へ応募していた人たちは「じゃあ一千万円返せよ」と言いたくなることでしょう。(水嶋ヒロ氏は副賞の一千万円は辞退したそうです)。

 このくらい「知っている」ことは有利なのです。「知らない」ことを妄想だけで書ききれるのは長編小説まで。連載小説では、人物の経歴を掘り下げて多くのスキルを知っている必要があります。




体験してはいけないもの

 人物が「密売人」だった場合、「調査」「取材」なんてまずできません。「薬物中毒者」特有の感覚を体験したくて薬物に手を出すのも絶対にやってはいけない禁忌です。昭和の巨匠の中には、そういったものを実際にやって書いたと豪語する方もいらっしゃいます。

 でも現在では「やってはいけない」ことです。絶対に手をつけないでください。

 連続レイプ犯や殺人犯の気持ちを知るために犯罪に手を染めてはなりません。

 こういった触法行為は、過去そうだった方がカミングアウトした書籍が手に入ることもあるので、書籍の「調査」を中心に行ないましょう。薬物中毒者は更生プログラムの一環として講演をすることがありますので、それを「取材」に行く手もあるのです。

 しかしオープンに話せる犯罪は、たいてい書籍に書いてあります。多くの講演者は、自著を携えて講演を行なうものだからです。




連載小説の限界

「知らない」ことは書けません。

 当たり前のことを改めて書きました。

 性体験の経験のない、または少ない書き手が「妄想」で成人小説を書くこともできはします。

 しかし過激な性描写を得意とする書き手が、実際に過激な性行為を行なっているわけではないのです。

 これも至極当たり前のこと。

 ここに連載小説の限界を感じます。連載小説には「深い知識」が求められるのです。

 人物の履歴書を作り込んでいれば、どのような知識が必要かは執筆する前にわかります。あらすじを作りながら履歴書を作成し、連載に耐えられるだけの情報を用意しておくべきです。

 ではそういったものを矛盾なく書くにはどうすればよいのか。よろしくない知識を実際に体験するのもどうかと思います。ここはやはり書籍を「調べる」のです。調べて得た情報に書き手の「妄想」を混ぜ合わせて「たぶんこんなものだろうな」と納得させて書くしかありません。

 現実味(リアリティー)は出ませんが、詳しい描写が必要だと思う場所だけでも、「妄想」は役に立つでしょう。

 しかし「真実は小説よりも奇なり」と言います。

 いくら書籍を数多く読み込んだとしても、実際に体験したことには敵いません。

 それを自覚したうえで、それでも触法行為は「調査」「取材」だけにして「妄想」だけで書くべきです。絶対に手を染めてはなりません。

 昭和の巨匠のような挑戦者魂なんて今の世の中には必要ないものです。





最後に

 今回は「知らないことは書けない」ことについて述べました。

「妄想」だけで書けるのは長編小説までです。連載小説では「深い知識」が要求されます。

「知識」を得るには「調査」と「取材」、それに「実体験」です。とくに「実体験」は「知識」に現実味(リアリティー)を与えます。

『小説家になろう』で「評価」は「ストーリー評価」と「文章評価」に分かれています。「知識」に裏打ちされた現実味(リアリティー)は「ストーリー評価」へプラスに働くのです。

 あなたが書いている小説で「ストーリー評価」が低いのは、「知識」が追いつかず現実味(リアリティー)が足りないからかもしれません。




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