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三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
基礎篇〜右も左もわからないときは、まずは基礎から
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7. :キャラは勝手に動き出すのか

 小説家や漫画家の中でよく「キャラが勝手に動く」とおっしゃる方がいますよね。

 小説を書いていて本当に「キャラが勝手に動く」ものか不思議に思っていらっしゃる方もおられるでしょう。「かなり綿密なキャラ設定をしたのにまったく動いてくれないよ」と。

 その行為がそもそもの間違いであるというお話しです。

キャラは勝手に動き出すのか


 よく小説やマンガの大御所が「キャラが勝手に動くんですよ」と言いますが、初心者の書き手は真に受けてはなりません。

 考えなしにキャラが勝手に動くことはないのです。人物(キャラクター)設定だけしてキャラが勝手に動き出すまでじっと待っていてもキャラはいっこうに動く気配を見せません。

 その状態が続くと「大御所だから動くんだな」と思われて結局書くことをあきらめる方もいらっしゃると思います。

 でも人物(キャラクター)設定の要点をしっかり押さえてあればそのうち自然と「キャラは勝手に動く」のです。

 以下は「勝手に動いてもらうための人物(キャラクター)設定のコツ」についてお話しします。




人物(キャラクター)設定の性格はざっくりでいい

 キャラ設定をする際に、まずは「キャラの性格(性向)をざっくりと」決めましょう。

 細かな設定をしてしまうと、それに囚われてしまってキャラの動ける範囲が狭まってしまいます。

 「ざっくりと」決めた性格を元に「出来事(イベント)」を起こしてキャラに対処させます。おおまかな性格が決まっているので、幅はあるけれどある程度の解決方針は見通せますよね。その範囲内から選んでいくのです。

 また「出来事(イベント)」は一つだけでなく、二つ三つと次々と起こしてみましょう。それぞれに「このキャラならこういう対処をするだろうな」と考えながら解決方針を決めていきます。

 これを繰り返していると、大まかに決めていた性格の中から細かな性格が頭の中で削り出されて明確に浮かんでくるのです。そしてあるとき不意に「このキャラならこういうときにこう動くな」ということが考えなしで思い浮かぶようになります。

 この「考えなしで不意に浮かんでくる」状態がまさに「キャラが勝手に動く」ということにほかなりません。

 この状態が発生するには「性格を細かく決めておかない」ことが大前提になります。

 細かく決めてあるとキャラが「出来事(イベント)にどう対処するか」は書き手が当初想定していた域を出ないのです。

 余地を残してあることでキャラはある程度の「思考の自由」と「行動の自由」を得ます。

 そもそも内面や性格は説明ではなく描写で書くべきなのです。「出来事(イベント)にどう対処するか」を記して、読み手にキャラの内面や性格を理解してもらう。小説ではこれが最も自然な書き方です。




キャラの結末までは揺るがさない

 だからといって、やみくもにキャラの自由な振る舞いを許してしまうと、当初想定していたストーリー展開が崩れ去ってしまい、「キャラの結末」が変わってしまいかねません。

「キャラの結末」とくに「主人公の結末」が変わると、物語そのものが変質して、物語が破綻します。

 できるだけ当初想定してあった「キャラの結末」はいじらないこと。キャラが動きたいように動かしてやり、結果として「キャラの結末」にたどり着くように軌道修正する筆力が書き手には求められます。

 そのためにそれまで決めていた「出来事(イベント)にどう対処するか」を見直して「ここをこのような対処に変えたら、問題の場面ではこう動いても不自然はないよね」という見方ができるようになります。今まで書いてきた文章をためらいもなく捨ててしまえるのです。

 だから実際に書き始めるより前の構想段階から「出来事(イベント)にどう対処するか」の道筋を作る作業が必要となります。これが「あらすじ」や「プロット」の必要性なのです。

 書き進めながら同時進行で「出来事(イベント)にどう対処するか」を考えてしまうと、それまで書いてきた労力を考えて今まで書いた文章を破棄するのがもったいなく感じてしまいます。すると物語そのものが破綻するのです。

 初心者の書き手はたいていここでつまずきます。「書き直すのももったいないし、このまま最後まで書きたい。書き終えてから修正すればいいや」という意識が強すぎるのです。

 結果物語が破綻していてもそれに気づかないか、目をつむってしまいます。

 こうして完成した小説は当初想定していた物語とはちぐはぐなものになり「主人公がどうなった」のかという小説の大前提を蔑ろにしてしまうのです。




キャラの生き生きした姿を想起させる

 キャラが動きたいように動いているとき、読み手は「このキャラは生き生きとしているな」と感じてくれます。文章からにじみ出る躍動感を想起できるのですね。

 書き手が初めからキャラの性格をガチガチに固めてしまい、キャラを当初の予定どおりに動かすだけではこうはいきません。だから「キャラ設定」の段階では性格をざっくりと決めるにとどめてほしいのです。


 初心者の書き手の方も「どうせならキャラが生き生きとしている小説を書きたい」と思いますよね。小説の魅力はひとえに「キャラが生き生きしているか」にかかっているのです。生き生きしていれば読み手は登場人物に感情移入しやすくなり、物語の奥深くまで没入してくれるようになります。

 キャラが書き手の定めたレールの上を疑いもなく走るだけの小説は、読み手がすぐに見破ってしまいます。文章の書かれ方・表現の仕方そのものがまったく異なっているのです。「読み手は気づかないだろうから」と思って書きあげても、読み手はすべてお見通しです。このあたりが小説を書くことの難しいに結びついています。


 せっかく三百枚の小説を書いたのに「誰からも評価されない」のはなぜか。それは「キャラが生き生きしていないから」が最大の要因です。

 「キャラが生き生きとしているか」は「キャラが勝手に動いているか」に左右されます。

 そのためにも「キャラ設定」の際に性格をガチガチに固めてしまわないことが大切なのです。





最後に

 今回は「キャラは勝手に動き出すのか」について論じてきました。

 大御所の作るキャラは勝手に動くが、初心者の自分が作るキャラは勝手に動いてくれない。だから私には小説を書く能力がないのだ、などとは考えないでください。

 大御所と初心者の違いは「決めなければならないことは必ず決め、とくに書く必要のないことについてはまったく考えない」ことだと言っていいでしょう。

 初心者ほど詳細な「人物(キャラクター)の履歴書」を書きたくなります。長編一本ならそれでも作れますが、仮にそれが反響を得て超長編の連載小説を書くことになった際に筆が進まなくなります。「書く必要のないこと」まで考えてしまって「履歴書」でがんじがらめにされてしまうからです。

 あまりに細かい性格設定をしてあると、性格と選択との矛盾が浮き彫りになってしまいます。キャラを生かすためにもキャラ設定の際には「性格は大まかに決める」ようにしましょう。

|(No.802「履歴書を作る」の際に「履歴書」をオススメしていますが、そこまで読んで理解してくださった方ならわかる領域の話なので、今は「履歴書」にこだわらないでくださいませ)。




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