67.中級篇:奇抜な出来事を生み出す
どうも自分の作る出来事は平凡で他の書き手と差別化できない。
どうすればいいのでしょうか。
奇抜な出来事を生み出す
どうも自分の書いている小説は出来事が平凡すぎる。なんとか他人と差別化できなければ「小説賞・新人賞」は狙えない。
かといって早々に差別化できるような出来事なんて思いつかない。どうにかして他の人とは違う出来事は作れないものか。
小説を書き慣れてくる頃に誰でも陥るこの問題を、どう解決すればよいでしょうか。
奇抜な出来事とは
「他の人とは違う出来事」をここでは「奇抜な出来事」と呼びます。
「奇抜な出来事」は他の書き手では作り出せない、あなたが独自に考え出した出来事のことです。
ですが単にこれだけのことを書かれても「いや、それはわかっているんだけど、どう考えても『奇抜な出来事』にならないんだけど」となりますよね。その気持ち、痛いほどわかります。
私の小説も出来事が平凡すぎて読み手をうまく楽しませられていません。どうすれば「奇抜な出来事」が見つかり、編み出すことができるでしょうか。
さまざまなノウハウ本を読んでみて気づいた点を以下に記します。
前提条件を変えて掛け合わせる
どうしても「奇抜な出来事」は思い浮かばない。それなら発想を転換してみましょう。
「奇抜な出来事」を起こしたいのなら、どうすればその「奇抜な出来事」が起きるのか起こせるのかについて考えるのです。
つまり出来事へ到達するまでに発生する前提条件を変えます。主人公と「対になる存在」による駆け引きを「奇抜な出来事」にしたいのなら、そこに誰かの意志が影響を与えるようにするのです。
そうすれば主人公と「対になる存在」の二者対峙というとてもありふれている出来事も「奇抜な出来事」になりえます。
バトルものだと
バトルものなら主人公と「対になる存在」との間で戦闘が行なわれます。
主人公は仲間を揃え、「対になる存在」は「立ちはだかる存在」として四天王なり八部衆なりを揃えて主人公を待ち構えるのです。
しかし単純に主人公パーティーが四天王の一人と戦うだけではあまりにも展開がありきたりではないでしょうか。しかも四天王を一人ずつ倒していくだけの展開ならなおさらです。
そんな展開でもなんらかの理由で直前に主人公パーティーの仲間が減ったり、「立ちはだかる存在」である四天王の側がなにがしかの戦って勝たざるをえない理由を持っていたとしたらどうでしょう。
これを掛け合わせてみてください。
主人公側は戦力ダウンになって不安が募りますし、「立ちはだかる存在」である四天王にも心にかけるなにかがあって死を賭しても戦わざるをえない。そしてお互いが負けることの許されない戦いに挑むのです。
単に主人公パーティーと四天王が順繰りと戦うだけよりも状況は複雑になっていませんか。
かなり危機感を持った者同士が戦うのです。緊迫しないわけがありません。ハラハラした展開になると思いますよね。
単純な出来事とは異なる「奇抜な出来事」になったはずです。
さらに前提条件をあれこれと掛け合わせることで、他の書き手ではできないような書き手独自の「奇抜な出来事」は必ず生まれます。
もちろん主人公側が不利になるような出来事ばかりではありません。
マンガの鳥山明氏『DRAGON BALL』ではナメック星で主人公の孫悟空は悪の帝王フリーザに苦しめられます。しかし孫悟空は窮地に陥って「超サイヤ人」へと覚醒します。
これは出来事が起きていったん不利に陥るも、主人公が一発逆転して勝利するという「沈み込み」を生かした「平凡な出来事」です。そこにベジータや孫悟飯、クリリンなどがさまざまな思いを孫悟空に託した末に生まれました。
この思いの複雑さが「超サイヤ人覚醒」を「奇抜な出来事」へと変貌させています。
恋愛ものだと
恋愛ものなら主人公と「対になる存在」の二人で臨む出来事が必ずあると思います。直接対峙はかなりの見せ場になるはずです。
しかし二人だけで駆け引きを行なっただけでは「文学小説」の型にハマりすぎていてありふれています。そんな小説があふれているのも「文学小説」の壁でしょう。
そんな状況でも事前に「対になる存在」の母親から横槍が入ったり、主人公の友人が「対になる存在」に恋心を芽生えさせたりしたらどうでしょう。
まぁこの二つはそれ単体ではありふれているパターンです。でもこれを掛け合わせてみてください。そうすれば複雑な状況が生まれます。
「対になる存在」の母親から横槍が入りつつ、主人公の友人が「対になる存在」に恋心を芽生えさせる。そのうえで二人だけの出来事に入ります。
するとどうなるでしょうか。「対になる存在」の母親から影響を受けた「対になる存在」と、自分の友人が「対になる存在」を好きになった主人公との直接対峙です。双方が複雑な心境で向き合います。
かなり緊迫した空気感で行なわれる会話のやりとりは、単純な出来事とは異なる「奇抜な出来事」になっているはずです。
こちらもバトルもの同様さまざまな前提条件を掛け合わせることで、他の書き手ではできないような書き手独自の「奇抜な出来事」を起こせます。
恋愛ものとしては渡航氏『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』が大ヒットしていますので、そちらを丹念に読み込んでどのような状況下で出来事が起きているのかを確認してみてください。
現在ライトノベルでウケている出来事を知ることは、必ずあなたの血肉になると思います。
たいていの出来事は出尽くしている
文言一致体が始まった明治時代から今日に至るまで何千万冊、何億冊の小説が世に流通しています。当然既発の小説で出来事のパターンも出尽くしており、今や「奇抜な出来事」など無いのかもしれません。
それでも読み手にとって目新しい「奇抜な出来事」を創ろうと思えば、よくある出来事を掛け合わせるのです。それも二つではなく三つも四つも掛け合わせましょう。
そうすればかなりの確率で「あなた自身の発想による奇抜な出来事」が誕生します。
シチュエーションが違う、対峙する人数が違う。それだけ絞ってもなお既発の小説で掛け合わされたものと同等になる可能性があります。そこへキャラの関係性も掛け合わせれば独自の出来事に仕上がるのです。
キャラのタイプまでまったく同じ小説というのはまずありませんからね。
最後に
今回は「奇抜な出来事」について述べてみました。
この世の中にはすでにたくさんの小説があります。その中で「奇抜な出来事」なんて作れるわけがありません。
作れるとしたら、読み手がまったく興味を持たない出来事ではないでしょうか。
読み手がまったく興味を持たないのがわかっているから、既存の書き手はそれを避けてきた。ただそれだけかもしれません。
でもいつ何がブレイクするかわからないので「これはダメかな」と諦める前に「箱書き」を書いて保存しておきましょう。
読み手が興味を持ちそうな出来事はすでに出尽くした感があります。その中でも「奇抜さ」を出そうとするなら「出来事の掛け合わせ」と「キャラの関係性」を考えましょう。
その組み合わせで読み手が「これは新しい」と思わせるのです。
マンガの青山剛昌氏『名探偵コナン』はこの方法で毎回新しい話を作っています。
プロがやっていることをプロを目指す人がやってはいけないなどという不文律はありません。ぜひ積極的に活用してください。