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三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
事典篇〜剣と魔法のファンタジーの決まりごと
652/1500

652.事典篇:北欧神話:九つの世界

 今回から「北欧神話」に入ります。

 神々や巨人族のことについても触れていきますので、ボリューム満点です。

 ある程度は系統立てていますので、読んでいけば「北欧神話」のことがわかります。

 まずは「世界樹が内包する九つの世界」についてです。

事典【北欧神話:九つの世界】


 今回は「北欧神話」における創世伝をお話致します。

 主神オーディンを頂点とする世界はどのようなものだったのでしょうか。



ユグドラシル

 全世界を体現する巨大な木であり、アーサヘイム、ミッドガルド、ヨトゥンヘイム、ニヴルヘイムなどの九つの世界を内包する存在です。そのため日本では「世界樹」「宇宙樹」とも呼ばれます。

 三つの根が幹を支えており、それぞれアーサヘイム、ヨトゥンヘイム、ニヴルヘイムに通じているのです。

 それぞれの根の先には三つの魔法の泉、ミーミスブルン(ミーミルの泉。ヨトゥンヘイムに存在)、ウルザブルン(ウルズの泉。アーサヘイムに存在)、フヴェルゲルミル(ニヴルヘイムに存在)があります。

 ちなみに名前の由来「ユグ」は主神オーディンの別名、「ドラシル」は馬を指しているので「オーディンの馬」の意です。





第一層

天上の国アーサヘイム

 アース神族の住む世界。王都はアスガルド。アースガルズ、アースガルド、アスガルズ、英語読みでアスガード、ドイツ語読みでアスガルト、またアガルタなどとも読みます。

 アスガルドを囲む壁は巨人とその所有馬であるスヴァジルファリによって建てられました。

 地上のミッドガルドから天上のアスガルドへ行くには、虹の橋ビフレストを渡らなければなりません。虹の橋ビフレストのそばにいるアスガルドの門番はヘイムダルです。

 男性の神々が集まる館をグラズヘイム、女性の神々が集まる館をヴィーンゴールヴと呼びます。

 主神オーディンの宮殿であるヴァルハラはグラズヘイムにあり、ヴァルキュリア(ヴァルキリー、ワルキューレ)によって選別された戦士の魂が集められるのです。館の中では実戦のような模擬戦と饗宴が行なわれ「ラグナロク」に備えます。

 アスガルドの中心にはイザヴェルと呼ばれる平原があり、アース神族は重要な問題や会議があるとそこに集うのです。

 世界樹ユグドラシルの三本に分かれた根のうちアスガルドに向かう根の真下に「ウルズの泉」があります。名前は運命の女神ノルンたちの一柱で三姉妹の長女ウルズに由来するのです。その泉の水は強力な浄化作用を持っています。ノルンたちはユグドラシルが枯れないようこの泉の水と泥を混ぜたものをつねに注いでいるのです。この泉は神聖視され、そこにアース神族の法廷が存在します。神々は毎朝虹の橋ビフレストを渡ってウルズのもとへ赴いたのです。マンガの藤島康介氏『ああっ女神さまっ』に出てくる三姉妹の女神ウルド(運命)、ベルダンディー(現在)、スクルド(未来)はノルン三姉妹に端を発します。



妖精の国アルフヘイム

 光の妖精エルフの住む国。アールヴヘイムとも呼び、その場合妖精はアールヴと呼ばれるのです。

 九つの世界の第一層に存在し、元はヴァン神族でのちにアース神族へ人質として送られたフレイが、彼らの王であるとされています。

 アルフヘイムに住むエルフの鍛冶屋ヴォルンド(英語読みでウェーランド、ドイツ語読みでヴィーラント)が主神オーディンの剣(グラム、バルムンクとも)を打ったのです。

 闇のエルフが住む国は第二層「スヴァルトアルフヘイム」と呼ばれるところにあります。

 エルフは北欧神話では自然と豊かさを司る小神族でした。強力で美しい、人間ほどの大きさの存在として理解されています。一般的に先祖崇拝と同様に豊かさと結びついた半ば神聖な集団として言及されるのです。高位の豊穣神であるヴァン神族に対して、低位の豊穣神とも表されました。



ヴァン神族の国ヴァナヘイム

 ヴァン神族の住む世界。アース神族がヴァナヘイムに侵攻し戦争が始まったとされます。長き抗争の末ついに和睦することとなったのです。そのときヴァナヘイムからはニョルズ、フレイ、フレイヤをアーサヘイムへ送り出したとされています。

 ヴァン神族もヴァナヘイムもやがて神話から名前が消え、「ラグナロク」において住人や国土がどのような運命をたどったかは不明です。アスガルドにいるニョルズが「世界の終わるときにヴァン神族のところへ帰るだろう」と言及されるのみ。

 住人は性に関しておおらかで近親婚も行なわれていたとされています。これは住人の司るのが生殖や豊穣や愛情といったものであるせいです。





第二層

地上の国ミッドガルド

 死すべき定めの人間の世界はミッドガルド(ミズガルズ/中つ国)といわれています。ミッドガルドはユグドラシルの中央にあるとされ、天上のアスガルド、地下のヘルヘイムに挟まれているのです。ミッドガルドの周囲は水や海洋に囲まれており、その外側にヨトゥンヘイムが存在します。巨大な蛇ヨルムンガンドはミッドガルドに収まりきらず海洋の中でミッドガルドをぐるりと取り囲んで己の頭で己の尾をくわえています。



巨人の国ヨトゥンヘイム

「ヨトゥン」と呼ばれる霜の巨人族と丘の巨人族が住む世界です。

 ヨトゥンヘイムは東に位置するとされ、神々の国アーサヘイムと人々の国ミッドガルドの脅威となっているのです。アスガルドとヨトゥンヘイムの間にはイヴィング川が流れています。

 ヨトゥンヘイムを支配するのは霜の巨人の王スリュムです。トールのハンマー「ミョルニル」を盗み出し、自らの元へやってきたロキに交換条件としてフレイヤを娶りたいと要求しました。悩んだ神々はヘイムダルの案でトールを女装させ、ロキはその侍女に化けてスリュムを騙したのです。彼は女装したトールの膝にミョルニルを置いてしまいます。この機にトールがスリュムを殴り殺してしまったのです。トールらに持参金を要求してきたスリュムの姉も同じ運命をたどります。

 主要都市に、ウートガルザ・ロキの治めるウートガルズ、メングラッドの住むガストロープニル、スィアチの住むスリュムヘイムがあります。

 ユグドラシルの三本に分かれた根のうち霜の巨人の国へ伸びた根には「ミーミルの泉」があり、知恵と知識が隠されているのです。賢い巨人ミーミルが所有しています。

 のちに「神秘的」を意味する語に由来する「トロール」と呼ばれた大自然の精霊は「ヨトゥン」の古くからの発想様式の多くを受け継いでいます。つまり「トロール」は「霜の巨人」の末裔なのです。「霜の巨人」はそのまま英訳されて「フロスト・ジャイアント」とも呼ばれています。「丘の巨人」も英訳されて「ヒル・ジャイアント」となったのです。このふたつはTRPGテーブルトーク・ロールプレイングゲーム『Dungeons & Dragons』のモンスターとして登場します。



小人の国ニダヴェリール

 闇の妖精ドヴェルグ(ドワーフ)たちが住むとされている世界。

 ドヴェルグは太古の巨人ユミルの死体から生じました。ウジ虫として産まれて神々の決定により人に似た姿と知性を与えられたのです。その後も地中を好み、岩穴で暮らします。彼らは信仰の対象ではなくしばしば神々と対立する立場として登場しますが、対価に応じて神々の象徴となる魔力のある武器や宝の製作をするすぐれた匠でもあったのです。ドヴェルグは太陽の光を浴びると石になる、もしくは体が弾け飛んで死ぬといわれています。


黒い妖精の国スヴァルトアルフヘイム

 スヴァルトアールヴヘイムとも呼ばれます。スヴァルトアルフ(デックアルフ、ダークエルフ)またはドヴェルグ(ドワーフ)たちが住むとされている世界です。そのためニダヴェリールと同じ場所ではないかといわれています。

 アース神族が狼姿の巨人フェンリルを縛るための足枷グレイプニルを入手するためにフレイの召使いスキールニルをスヴァルトアルフヘイムに送ったのです。





第三層

氷の国ニヴルヘイム

 ギンヌンガ・ガップと呼ばれる亀裂の北方にあります。ロキの娘ヘルが投げ込まれた場所であり、時にヘルヘイムと同一視されることもありますがまったく別の区画です。

 ニヴルヘイムはギンヌンガ・ガップ同様、始まりの巨人ユミルによる天地創造以前から存在しています。

 ニヴルヘイムには世界樹の根のひとつが伸びており、その下には泉「フヴェルゲルミル」があるのです。この泉にはニドヘグ(ニーズヘッグ)という世界樹の根をかじる蛇が住み、フヴェルゲスヴォル、グンスラー、フィヨルム、フィンブルスル、スリーズ、フリーズ、シュルグ(スュルグ)、ユルグ、ヴィーズ、レイプト、ギョッルという十一の川の源とされています。これらの川を総称してエーリヴァーガルと呼び、凍りながら南のギンヌンガ・ガップに至るそうです。

 ギョッル川がニヴルヘイムとヘルヘイムを隔てており、ギャッラルブルーという黄金の橋が架かっていてモーズグズという女巨人が守っているとされています。


地下の国ヘルヘイム

 ロキの娘ヘルが治め、ユグドラシルの地下にあるといわれる死者の国。ニヴルヘイムと同一視されることもありますがまったく別の区画です。



炎の国ムスペルヘイム

 ギンヌンガ・ガップの南の果てにある灼熱の国。ムスペルと呼ばれる炎の巨人が住み、スルトというさらに大きな巨人が入口を守っているのです。世界の創めから存在し、あまりの暑さにムスペルヘイムで生まれたもの以外はムスペルヘイムでは暮らせないとされています。



空虚な裂け目ギンヌンガ・ガップ

 世界創造の前より存在していており、北からはニヴルヘイムの激しい寒気が、南からはムスペルヘイムの耐え難い熱気が吹きつけています。世界の始まりの時において、寒気と熱気がギンヌンガ・ガップで衝突したのです。熱気が霜に当たると霜から垂れた滴が毒気となり、その毒気は巨人ユミルと牝牛アウズンブラに変じました。

 生まれたばかりのユミルはアウズンブラから流れ出る乳を飲んで生き延びたのです。のちにユミルはすべての霜の巨人たちの父となります。

 そのアウズンブラは毒氷を舐め、舐めた部分から最初の神ブーリが生まれたのです。主神オーディンはブーリの孫にあたります。

 のちにオーディンらによってユミルが殺されたとき、ギンヌンガ・ガップはユミルの血で満たされ、彼の肉体によって世界が形作られることとなったのです。





最後に

 今回は「北欧神話:九つの世界」についてです。

 世界樹ユグドラシルの中には「九つの世界」があります。

 また、ファンタジー小説に出てくる鉄板の存在であるエルフとドワーフ、ダークエルフの初出もご覧いただいたように北欧神話です。

 J.R.R.トールキン氏が北欧神話や各地の民間伝承を集めて『ホビットの冒険』や『指輪物語』が生まれました。ですので、エルフやドワーフが出てきても不思議ではないんですね。

 またトロールやフロスト・ジャイアント、ヒル・ジャイアントも初出は北欧神話となります。

 当初存在していた世界は、第三層のニヴルヘイム、ムスペルヘイム、そしてギンヌンガ・ガップだけです。

 ギンヌンガ・ガップに始まりの巨人と牝牛が生まれてから、北欧神話の創世伝が始まります。




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