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三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
中級篇〜少しわかってきたら、ちょっと意識してみましょう
61/1500

61.中級篇:誰もあなたの小説に期待していない

 今回は刺激的なタイトルを付けてみました。

 この状態からフォロワーを生むための小技集となっております。

誰もあなたの小説に期待していない


 読み手が読みたい小説を選ぶ際、あなたの小説がワクワク・ハラハラ・ドキドキする作品であるか期待していない状態で探しています。前回の連載が好評で、次作を楽しみにしていた読み手が新作を探している場合は別ですが。

 だから小説投稿サイトでは「あらすじ」「キャプション」で煽れるだけ煽っておくのです。「この小説はワクワク・ハラハラ・ドキドキしますよ」と。

 そうすることでようやく読み手が「読んでみるか」と思ってくれます。

 そうしてクリックされて閲覧数が増えるのです。そこで「あらすじ」「キャプション」の全文を読んでくれます。




あらすじ・キャプション全文でさらに煽る

『カクヨム』では作品に「キャッチコピー」を付けられます。検索結果でも新着欄でもまず目に入るのがカラフルな「キャッチコピー」なのです。ここでいかにして読み手にアピールできるか。『カクヨム』攻略の足がかりがまず「キャッチコピー」で煽れるかなのです。

「あらすじ」「キャプション」冒頭だけが魅力的なのか、「あらすじ」「キャプション」全文を読んでもなお魅力的なのか。大きな差です。

 いくら「あらすじ」「キャプション」の出だしだけをすぐれたものとしても、「あらすじ」「キャプション」全文が読み手のワクワクを誘発してくれなければ、本文は読まれません。よって閲覧数が上がりこそすれいいねもブックマークも増えないのです。

 せっかく苦労して書いた三百枚が本文を読まれることなく切り捨てられる。苦労して書いた意味がありません。

 そのため「あらすじ」「キャプション」全文の質を高めることに重点を置いてください。

 まず検索されたときに表示される文字数内で読み手の期待を煽ってクリックさせます。

 そして「あらすじ」「キャプション」全文で、三百枚の魅力を存分に書くのです。ここで手を抜いてはいけません。

「あらすじ」「キャプション」全文がさらに読み手の期待を煽ってくれるから、読み手は「この小説面白そうじゃん」と思ってくれるのです。

 そのあとは本文冒頭の出来次第。本文冒頭でしっかりと読み手の心を掴み「これは面白いかもしれない」と思わせます。これができて初めてその小説のフォロワーが生まれるのです。

「あらすじ・キャプションなんて適当でいいや」と思っているようなら、いつまで経ってもあなたのフォロワーは増えません。本文の質そのものが高いのは当たり前です。

 しかしその本文を読ませる導入部である「あらすじ」「キャプション」で手抜きをしていいわけではありません。原稿用紙三百枚にフォロワーがつかなければどんな名作も意味をなさないのです。




本文冒頭で読み手の心を掴む

 満足のいく「あらすじ」「キャプション」(『カクヨム』はキャッチコピーを含む)が書けた。であれば閲覧数は確実に増えていきます。

 でも評価やブックマークなどのフォロワーが伸びない。なぜでしょうか。本文冒頭で読み手の心をガッチリとつかめていないからです。

 どうすれば本文冒頭で読み手の心を掴めるのでしょうか。

 ずばり「本文冒頭から主人公は出来事の渦中にいる」ようにするのです。

 主人公が出来事に直面してどう対処しようとしているのか、または主人公が出来事を起こして何をしようとしているのか。これが最も有効な「読み手の心のつかみ方」です。

 これは小説界では「鉄板」の展開で使い古されてもいます。それでいて今でも最も効果が高いのです。使わない手はありませんよね。

「本文冒頭から主人公は出来事の渦中にいる」ことで読み手はいきなりハラハラ・ドキドキした状況に放り出されます。ハラハラ・ドキドキする出来事が書いてあるから、読み手は先を読みたくてたまらなくなるのです。

 そして読み手がハラハラ・ドキドキしている間に、先の文章を読みたくてワクワクする気持ちにさせましょう。

 読み手の心にワクワクが生じさせることができたら上出来と言えます。




最悪の書き出しパターン

 小説の文章は大きく二つに分かれます。説明や描写といった「()の文」と、会話や心の声といった「会話文」です。

 そして文には説明・描写・会話・心の声の四パターンがあると憶えておいてください。擬音語・擬声語・擬態語などのいわゆるオノマトペは描写に含まれます。

 書き出しにも当然この四パターンが用いられるのですが、小説の書き出しとしては最悪なパターンがあります。説明とくに「情景説明」です。

 書き出しの「冒頭から情景説明」が書いてあると、それだけ主人公の登場が後れます。

 とくに舞台設定に凝る書き手は舞台設定を開示したいがために「冒頭から情景説明」を長々と書いてしまいがちになるのです。

 本コラムで再三言っていますが、小説は「主人公がどうなりたい」から始まって出来事を通じて成長し「主人公がどうなった」で終わります。それなのに肝心の主人公がいつまで経っても登場しない。これでは読み手は何のために小説を読んでいるのかわかりません。

 どんな主人公なのかいっこうにわからない。だから読み手は冒頭で主人公が出てこない小説を一見で切ります。書き出しに「冒頭から情景説明」をするのはやめたほうがよいでしょう。

 とはいえ手持ちの「紙の書籍化」された小説の冒頭を読んでいると「冒頭から情景説明」をしているものが目立ちますよね。これは「紙の書籍化されるほど人気のある小説」だからできることです。

 たとえばライトノベル黎明期に出版された水野良氏『ロードス島戦記』は「冒頭から情景説明」を始めています。『ロードス島戦記』がよくてなんで私の小説では「冒頭から情景説明」してはダメなのか。と言われれば「作品の認知度が高くないから」としか答えようがありません。

『ロードス島戦記』は『コンプティーク』というパソコンゲーム雑誌でTRPG『Dungeons & Dragons』のリプレイ(ゲームをしている様子を文章におこしたもの)として始まっています。つまり紙の小説として販売される以前から『ロードス島戦記』には固定ファンがいたのです。

 これならいくら「冒頭から情景説明」を凝らしても固定ファンは待っていられます。これが「作品の認知度の高さ」です。

 あなたの書いた小説には固定ファンがどれだけいるでのしょうか。これが「冒頭から情景説明」をできるかできないかの境目になります。

 フォロワーさえたくさんいれば「冒頭から情景説明」をしようとフォロワーはいくらでも待ってくれるわけです。でもこのコラムをご覧の方は、おそらく「フォロワーがあまりいない書き手」だと思います。であれば「冒頭から情景説明」はしないほうがよいのです。




冒頭から主人公は出来事(イベント)の渦中にいる

「冒頭から情景説明」を長々とするよりも、最初から主人公を本文に登場させてください。そしていきなり出来事(イベント)の渦中に放り込んで主人公がどう対処するかを見せるのです。

 それだけで読み手は主人公の「人となり」をすぐに把握できます。これを「俺は義理堅い」などと始めても読み手は「あ、そ」で終わってしまうのです。

 精神的特徴は「出来事(イベント)にどう対処するか」を見せて読み手に知らせるほうがいい。その出来事を描くなかで舞台設定を所々に挟んでいけば、創り込んだ舞台設定も少しずつ読み手に伝わるのです。

 これは読み手が最も素直に納得できる演出になります。


 太宰治氏『走れメロス』の書き出しは「メロスは激怒した。」です。いきなり感情を露骨に説明しています。今これをやると「野暮ったいよね」と言われます。

 ではなぜ太宰治氏は「メロスは激怒した。」で書き始めても賞賛されたのか。

 夏目漱石氏に後れていますが、太宰治氏は明治終盤に生まれて「言文一致体」の模索のさなかにいました。だから感情をそのまま書いてみたのです。

 まだ誰も正しい感情の示し方を知らなかったので仕方がありません。でも今はおびただしい数の話し言葉で書かれた小説たちが世にあふれています。

 その結果「感情をそのまま書いてしまうと野暮ったいよね」という共通認識が進みました。




冒頭で主人公像を示す意義

 冒頭から主人公がどういう人物かわかること。「この主人公が活躍するなら読んでもいいな」と思うか「この主人公は興味を惹かれないな」と思うかは読み手次第です。

 ライトノベルであれば「親近感」と「憧れ」を同時に持てる主人公像がウケます。

 主人公が読み手である自分と同じところがあると「親近感」を覚えます。ライトノベルの主人公が高校生であるのもライトノベルの主要読者層が中高生だからです。

 そして自分よりも良いところを見つけると「憧れ」を抱きます。「憧れ」があまりに多すぎると「親近感」が薄れるので、基本的に「憧れ」は二つまでにしておきましょう。

「親近感」を覚えて「憧れ」を抱くと、読み手は深く感情移入していきます。

 冒頭で主人公に「親近感」を覚えられないと読み手は一見で切るのです。だから最近のライトノベルは「異世界転生」ものの作品が多くなります。

 自分たちと同じ年頃の主人公が異世界に飛ばされてまったくわからない世界に放り出される。まぁたいていが「剣と魔法のファンタジー」世界なのですが。だから読み手はさも「自分が異世界に飛ばされた」ように感じて物語にのめり込みます。




理想的な書き出し

 理想的な書き出しというのも実はあります。それは主人公の動作の描写から入るのです。しかも「過去・完了」の「〜た。」で終わるようにしましょう。

 また書き出しに会話文やオノマトペを用いてから、次の文で主人公の動作の描写を「完了形」で入れるパターンもあります。


 冒頭から人物が動いていると、読み手は意識的に「この人物が主人公かな」と受け取ります。それが実はモブキャラですぐに主人公に倒されるような場合は主人公を際だたせる手段として「あり」です。ただ少し主人公のインパクトが薄れてしまいます。


 どちらにせよ、なぜ主人公の動作を「過去・完了」で書くのか。これは「書き出しより前から動作が始まっていた」とすることで、物語の大きさをわずかでも大きくする効果があるからです。

 たとえば冒頭で「くにおは走る。」と書くのと「くにおは走った。」と書くのとではどちらが長時間走っているように感じますか。おそらく「くにおは走った。」のほうが長時間走っている印象を受けるはずです。

「書き出しより前から行動は始まっていた」んだよということを示すには、出だしが「過去・完了」であることが不可欠になります。

 ライトノベルの冒頭で主人公が初登場するシーンを見てください。たいてい「完了形」で書かれていることに気づくはずです。

 読み手はとくに意識せず読んでいますが、書き手は主人公を引き立てるために「完了形」で始める必要があります。これが理想的な書き出しなのです。





最後に

 今回は「誰もあなたの小説に期待していない」という物騒なテーマについて述べてみました。

 期待していないのなら、まず期待させましょう。

 それには「検索画面で表示されるあらすじ・キャプションの冒頭」で惹きつけます。(『カクヨム』では「キャッチコピー」が第一です)。

 ここでいかにこの小説が「ワクワク・ハラハラ・ドキドキする」のかを語るのです。クリックされれば閲覧数が一つ増えます。

 その後読み手は「あらすじ」「キャプション」全文を読むのです。「キャプション」冒頭で惹かれたけど「あらすじ」「キャプション」全文ではそれほどでもないなと思われればそのままページを閉じて別の小説を探し始めます。「あらすじ」「キャプション」全文でさらに読み手を惹きつけたら初めて小説本文を読み始めてくれるのです。

 そして一度捕まえた魚を放さないよう「本文冒頭から主人公は出来事の渦中にいる」ようにします。決して「冒頭から情景説明」などしないことです。

 情景説明は「出来事の渦中にいる」主人公を描く間に都度無理のない形で入れていけばいい。それさえできれば本文冒頭も合格です。

 あとは小説全文での勝負になります。こればかりは書き手の着想力と構想力と描写力だけが問われるので、毎日小説を書いて鍛えていきましょう。

 毎日が無理なら土日だけでも一日一万字とか月曜から木曜まで一日五千字とか、とにかく執筆のペースを作ってください。ペースもなく成り行きに任せて書いているようではせっかく捕まえたフォロワーが逃げてしまいますよ。




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