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三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
中級篇〜少しわかってきたら、ちょっと意識してみましょう
59/1500

59.中級篇:キャラクターに特徴を(3/3)

 前回から引き続きキャラの「特徴」についてです。

 今回は「精神的特徴」について述べました。

 前回から引き続きキャラの「特徴」についてです。

 今回は「精神的特徴」について述べました。





(前回から続きます)




六.性格・信条・判断基準

 小説が説明文でなく「小説」であるために最も必要なものが「性格・信条・判断基準」といった精神的特徴です。

 このキャラはどんな性格をしていてどんな信条があってそれによりどんな基準で物事を判断しているのか。それを見せていくのが「小説」なのです。

 でも「親譲りの無鉄砲で小供の時からいつも損ばかりしている」のように本人が語ることは、現代の小説ではまずありえません。これは言文一致体が確立しはじめた明治時代に活躍した夏目漱石氏だから書けたのです。

 この頃はまだ「話し言葉をいかにして文章にしていくか」が小説界の大命題とされていました。

 だからこの時代は多くが「神の視点」の小説であり、そこでどうやって性格を書けばいいのかという問いに対する答えを「誰も知らなかった」のです。


 今は違います。小説だけで月間何千冊と出版されており、これまでに書店に並べられた小説だけでも何千万冊あるいはそれを遥かに超えるかすら誰も知らないほどです。

 さまざまな書き手が言文一致体で表現を工夫しながら書き続けた結果「主人公に当人の性格を話させるのは野暮ったいよね」という結論が導き出されました。

 ではどうやって「性格・信条・判断基準」を読み手に伝えればいいのか。


 ずばり「実際に行動させて示せばよい」のです。

 あなたの小説が今、ある人に読まれているとします。

 そのとき()の文でも会話文でも「俺は火事場に出くわすと野次馬になりたいんだよな」などと説明や描写をしてしまったら。読み手は意識的に「あ、そ。このキャラは火事場で野次馬になる人か」と思うかもしれません。

 しかし物語が進行し読了するまでに「火事場」がまったく出てこなかったとしたらどうでしょう。

 あなたが読み手のつもりで考えてください。読み手は「で、火事場になったら野次馬になるこのキャラは、いったいどういう性格なんだろう」と腑に落ちなくなりませんか。

 だからキャラの「性格・信条・判断基準」を読み手に伝えたいなら「実際に行動させて示せばよい」わけです。


 ある出来事(イベント)が起こります。それに気づいたキャラはある反応を示すのです。どんな方法でどんな対処を試みるか。

 それを読んだら「ああこのキャラはこういうときにこういうことをする人なんだ」と読み手は一瞬で理解してくれます。本人に語らせるよりも、直接文章で説明するよりも、効果が高いのです。

 だから「火事場で野次馬になりたがる」性格を表現したいのなら、小説内で実際に火事を起こしてキャラを野次馬にすればいい。それだけで読み手は理解してくれます。

 出来事(イベント)はどんなに短くてもかまいません。わずかな出来事であってもキャラがそれにどう反応するかを読み手に見せるのです。それで読み手の心の中でキャラの「性格・信条・判断基準」が定まっていきます。

 小説は読み手が文章を読んで、頭の中で文脈を解読して、心で感じて内容を理解してもらう表現媒体です。

 この例では「火事場で野次馬になりたがる」を心で感じていなければ、まったく意味のない一文になってしまいます。


「性格・信条・判断基準」を語るうえで大事になるのは「なぜそのような性格・信条・判断基準になったのか」です。

 もし一般人である読み手と異なる「性格・信条・判断基準」をするキャラがいるのなら、なぜそのキャラはそういう「性格・信条・判断基準」をするようになったのか。これを語ることも小説には必要です。

 その「性格・信条・判断基準」をするようになったきっかけは何か。これがしっかりと書けている小説には説得力と厚みが出てきます。

「過去に○○という出来事が起きたので、彼は今こういう判断をするのだ」ということです。でも今キャラが判断して行動したときに、都度過去に戻って「過去に○○という出来事があってね」などと書いていくのは野暮ったい。

 その判断と行動をするより遥か前の段階、ときに物語冒頭まで戻ってもいいので、先に「行動で見せる」べきなのです。「判断し行動する段階」よりも前に「過去の出来事」を「伏線」として出しておきましょう。

「性格・信条・判断基準」にも「伏線」を張る必要があるのです。


 行動を積み重ねることでキャラの「性格・信条・判断基準」が定まっていきます。

 これによりキャラは書き手から一歩ずつ離れていくのです。つまり行動させればさせるほどキャラは独りでに歩きだしていきます。読み手の心の中にキャラが息づいていくとも言えるでしょう。

 そのため読み手の心の中に息づくキャラは、物語が進むに連れてさまざまな体験を通して成長していき、行動にわずかな変化が生じるのはありえます。でもその路線から大きく外れた行動を書き手がうっかり書いてしまったとしたら。

 読み手は「いや、このキャラはそんな行動をとるはずがないんだ!」と憤慨して小説を読むのをやめます。

 書き手はこの事態をとても恐れてください。何十時間とかけてどんなに名作の三百枚を書いたつもりでも、たったひとつの行動が間違っていればすべて台無しです。

 その場面でどうしてもその行動をとらせなければならないのだとしたら。

 その場面以前で「性格・信条・判断基準」が変化する体験をさせるしかありません。

 それまでの「性格・信条・判断基準」と大きく異なっている行動をさせるのであれば、それに見合うだけの「どでかい体験」が必要です。

 実際に「どでかい体験をして性格が屈折した」人を周りで見たことはありませんか。たいていひとりは見たことがあるはずです。とくに幼少期に多く見られます。

 子どものうちは「性格・信条・判断基準」が明確に定まっていません。親や先生がある行動をきつく叱り手放しで褒めてやれば「性格・信条・判断基準」がころっと反転してしまうこともあるのです。




七.名前

 名前を先に決めてからキャラの特徴を作る人もいれば、特徴を決めてしまってからふさわしそうな名前を付ける人もいます。この違いは書き手の性格が最も現れるところです。考えてから書く人と、書きながら考える人の差と言えます。

 私はまず仮の名前をつけて特徴を考えていきます。そして特徴がある程度決まったらそれにふさわしそうな名前を改めて考えるタイプです。

 でも考えるというよりニュースなどをよく観ていろんな名前に触れ、使えそうな名前たとえばかっこいい名前や強そうな名前などがあったらパソコンに溜めています。こうしておくと、名前を決めるときの道標になるのです。

 たとえばバレーボールの木村沙織さんとレスリングの吉田沙保里さんの名前を観たら「さおり」をストックしていくという具合に。

 名前は結構悩むものなので、私のようにネタ帳にストックを作っておくと、あとあと便利に使えていいのではないでしょうか。

 また自分のことを他人に話すときの「一人称」はどうでしょうか。「私・僕・俺・あたし・わし」人によっては自分の名前をそのまま用いるなどありますが、話す相手によって目上には「私」、目下には「俺」のように使い分けている人がほとんどだと思います。

 逆に相手に話しかけるときの「二人称・三人称」も異なってくるでしょう。「君・あなた・あんた、彼・彼女・彼奴」などですね。こちらもTPOに合わせて使い分けている人がほとんどだと思います。

 キャラの個性が現れやすいので、人称に用いる単語を規定しておくと執筆に便利です。




八.経歴

 他にも「経歴」を作り込む人もいます。出生から学生時代の成績や社会人としての実績、結婚や家庭がどうなってなどエトセトラ。そういったものを作ることでキャラの背骨(バックボーン)を強くしてキャラに一本筋を通そうというわけです。

 私は基本的に「経歴」はほとんど作りません。必要になったらそのときに作ります。

 主人公か「対になる存在」か「立ちはだかる存在」くらい物語に影響力が強くても、あらかたの「経歴」はぼんやりとしているのです。

「必要なったら」というのも「文章として書く必要に迫られたら」という意味で、文章にしないのであれば「経歴」なんて作りません。そのくらいざっくりしてよい「特徴」です。

「経歴」をがっちりと決めると小説内で余すところなく書こうとしがちになります。結果読み手から「ムダな情報が多い作品だな」と思われるのです。ならいっそ決めないほうがいいよね。ということになります。

(上級になれば詳しい「経歴」が必要になってくるでしょう。それについてはコラムNo.805「構成篇:氏名、国籍、住所、年齢、経歴、役職」に書いてあります。お急ぎの方はお手数ですが『ピクシブ文芸』『小説家になろう』でご確認くださいませ)。





最後に

 三回にわたり「キャラクターに特徴を」を述べました。

 以上が「個性」になりうる「特徴」です。ほとんどが履歴書に書かれるような内容になります。でも「性格・信条・判断基準」ばかりはさすがの履歴書でも書けませんよね。その履歴書に書かないものを書くのが小説です。

 でも単刀直入に書いてはいけません。お話の形で読ませるのです。




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