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三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
中級篇〜少しわかってきたら、ちょっと意識してみましょう
56/1500

56.中級篇:立ちはだかる存在

 主人公と「対になる存在」との対決が小説の要ですが、それだけだと単純すぎます。

 そこで「立ちはだかる存在」を設けてみましょう、というお話です。

立ちはだかる存在


 小説には主人公が欠かせません。そして主人公が立ち向かうべき「対になる存在」も不可欠です。それだけで小説を創ることもできますが、もうひとひねりしたほうが物語はさらに面白くなります。




立ちはだかる存在とは

 主人公が「対になる存在」に立ち向かおうとしたとき、どうしても越えなければならないハードルがあります。それが「立ちはだかる存在」です。ちょっとわかりにくい存在かなと思います。

 簡単にいうと「壁」です。




恋愛ものなら

「立ちはだかる存在」は恋愛ものでは単純に恋のライバルだったり異性ハーレムで本命以外のキャラがいっぱいだったり「対になる存在」の親族だったりと人物であることが多いのです。

 マンガの高橋留美子氏『めぞん一刻』では、ヒロインである音無響子を巡って主人公の五代裕作が、恋のライバルであるテニスコーチの三鷹瞬や、ガールフレンドの七尾こずえ、後半から登場する八神いぶきと対峙しなければなりませんでした。そして響子の亡き夫である音無惣一郎も五代の前に立ちはだかっているのです。

 さらに交際が決まって二人が結婚へ向けて歩んでいく中で響子の父が現れて最後の「立ちはだかる存在」となります。一度は解決したかに思われていた「立ちはだかる存在」が結婚を目前にして新たに現れたことにより物語は大団円を迎えました。


 それだけにとどまらず「対になる存在」から交際を検討する条件が提示されることもあります。

「私、学年トップテンの成績の人としか付き合うつもりはないから」と言われれば「学年トップテンの成績」が「立ちはだかる存在」つまり「壁」ということになるのです。主人公は猛勉強して「学年トップテンの成績」を手に入れなければなりません。それが達成されれば「対になる存在」も主人公を見逃すわけにいかなくなります。

「立ちはだかる存在」があることで恋の駆け引きがより面白くなるわけですね。




バトルものなら

 バトルものでも主人公周りから見てライバルだったり競争する集団だったり「自分の流派の師匠」だったりという人物がまず思い浮かびます。

「対になる存在」周りにも「四天王」や「ラスボスが対になる存在に助力する」という「壁」も考えられるでしょう。

 マンガで堀井雄二氏監修&三条陸氏原作&稲田浩司氏作画『DRAGON QUEST −ダイの大冒険−』では「対になる存在」である大魔王バーンを倒すために、クロゴダイン、ヒュンケル、フレイザード、バラン、ハドラー、キルバーンが立ちはだかります。

 そして「対になる存在」であるバーンを倒したことで平和を取り戻したと思われたのです。そこへ死んだはずのキルバーンが現れて最後の「立ちはだかる存在」になります。

 それにより結末が読み手の予想から大きく変わりました。「立ちはだかる存在」をここまでうまく利用できたマンガも少ないのではないでしょうか。

 また恋愛もの同様に戦うための条件を突きつけられるケースも想定されます。

 現在も連載中のマンガの森川ジョージ氏『はじめの一歩』でも宿敵である宮田一郎と戦うための条件を鴨川会長から暗に提示されています。

 主役である幕之内一歩はいつでも戦いたいのだが、今の状態では負けるとわかっている鴨川会長は対戦に「うん」とは言わないのです。

 いずれもそれを越えなければ「対になる存在」とは戦えません。文字通り「立ちはだかる存在」となっているのです。

(『はじめの一歩』の例は本コラムを『ピクシブ文芸』に掲載した当時のものなので、2019年5月時点では異なる条件になっています)。




三百枚なら立ちはだかるのは二回まで

 ただこの「立ちはだかる存在」の数が多すぎると、読み手は飽きます。でもまったくないとなんの波乱もなく物語が進行してしまいあっさりとしすぎです。

 物語としてはやはり「いったん劣勢に立つもそれを逆転して勝つ」という明快な構造にしたほうが断然盛り上がります。その劣勢と逆転をどこまで引っ張るかが問題になるのです。

 三百枚の長編小説なら「立ちはだかる存在」は二回までだと思います。たいていの人は三回目から飽きが見え始めるようです。

 このへんはザ・ドリフターズや、コント55号の萩本欽一さんが「ボケは続けて三回までが最も効果的」と語っているのに似ています。

 ここでいう三回は「対になる存在」を含めた回数とみるべきです。三百枚なら「立ちはだかる存在は二つまで」ということになります。




連載も三百枚換算で

 連載小説の場合は一回の投稿ぶんで「立ちはだかる存在」一回というわけにはいきません。

 一日四千字の投稿ペースだと原稿用紙三百枚には三十回の投稿をすることになります。

 ひとつの投稿につきひとつの「立ちはだかる存在」が登場すると三百枚で二十九回も「壁」を乗り越えないとなりません。これではあまりにも「立ちはだかる存在」の数が多すぎます。

「立ちはだかる存在」より「対になる存在」との対峙のほうに重点が置かれるべきです。

「導入部」1:「立ちはだかる存在1」1:「立ちはだかる存在2」1:「対になる存在」2:「終幕部」1の割合と仮定すると「立ちはだかる存在」には連載五回ぶん(だいたい原稿用紙五十枚ぶん)を二回用意し、「対になる存在」との対峙に十回ぶん(だいたい百枚)を用いると考えてください。

 ひとつのエピソードに月曜から金曜までの連載五回ぶんを用います。

 「対になる存在」の攻略はそれだけ難しいということを示すためにも「立ちはだかる存在」よりも「対になる存在」の攻略に紙幅を費やすべきです。

 毎週土曜と日曜に一万字ずつ投稿できるようなら、土日でひとつのエピソードを書くペースにするとよいでしょう。

 どちらにしても五十枚(二万字)でひとつのエピソードを書くのが小説の基本です。そして「対になる存在」との最終決戦では二つのエピソードをまたぐ形にします。

 仮に三百枚を遥かに上回る超長編の連載小説となっても、基準はあくまでも三百枚換算で行なってください。

 ひとつのお話に区切りをつける最適な分量が三百枚なのです。

 どんなに長期連載になっても、五十枚を目安にして月曜から金曜までなら四千字ずつ(または五千字ずつを四回。四回にすれば起承転結の形がそのまま使えるので便利です)、土曜と日曜だけなら一万字ずつを書いていき、一週間で「立ちはだかる存在」ひとつをクリアしていくようにしましょう。





最後に

 今回は「立ちはだかる存在」について述べました。

 あなたはすでに「小説を書く」と決めたのです。ですが、主人公と「対になる存在」の対立が主軸(メイン)だと思い込みすぎると展開が単純になってしまいます。とても内容の薄い物語になるのがオチです。

 そこで「立ちはだかる存在」を用意すれば読み手に緊迫した状態を適度に与えてワクワク・ハラハラ・ドキドキが強まります。使わない手はありません。

 適度な「立ちはだかる存在」の配置は四百字詰め原稿用紙五十枚(二万字)に一回です。それより短いと「立ちはだかる存在」が軽くなってしまいます。長いと主人公がいかに苦労して乗り越えようとしているのかを書くことはできますが、肝心の「対になる存在」との対峙が盛り上がらないという状況も生まれてくるのです。

 この「五十枚に一回」というのは月曜から金曜まで毎日四千字の連載を続けて一週間(五回の投稿)でひとつのエピソードを終えればいいと考えると気が楽になると思います。

「起承転結」にきちんと分けたいと考えていれば毎日五千字の連載を四日間かけましょう。週末土曜日と日曜日のみの連載でしたらそれぞれ一万字を書けばいいのです。

「五十枚に一回」という適度なルールを守れば「立ちはだかる存在」による盛り上げ効果は絶大になります。

 あらすじを書いている段階でしたら、そのことを意識して構成してはいかがでしょうか。




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