559.明察篇:プロットを超える
今回は「プロットを超える」ことについてです。
「あらすじ」「箱書き」「プロット」まで書いておけば、プロットが気に入らないとき「箱書き」まで戻って修正できます。
それがエピソードの結果を変える可能性があるときは、高速で筋道を計算し直さなければなりません。
プロットを超える
私の「小説の書き方」コラムでは、「プロット」に従って執筆していくことになります。
ですが、あるとき「こうしたほうが面白くなるんじゃないか」と思いつくことがあります。
私自身はこのような状態に陥りませんでした。
とくに現在の書き方になった頃からはいっさいないのです。
「企画書」「あらすじ」「箱書き」「プロット」と経るごとに物語を練って少しずつ詳しくなっていくため、プロット段階で変更する余地がありません。
異なる書き方の場合
小説の書き方は人それぞれで、私のやり方を一方的に押しつけるものでもないでしょう。
「あらすじ」から直接執筆する方もいらっしゃるはずです。
すると「あらすじ」を変えたくなることがあります。
そんなとき、その後の展開がどの程度変わるのかをまず見通してください。
もしそれほど残りを変更しなくてもよいようなら、「面白くなりそう」と思う展開に変更してみてもよいでしょう。
大半を書き換えなければならないようなら、いったん立ち止まりましょう。
「あらすじ」程度の段階であれば、大半を書き換えてもそれほど苦労しません。
心の赴くまま「あらすじ」をいじってください。
結果として「佳境」や「結末」が変わってくることもありえます。
当初意図していた「佳境」や「結末」が台無しになるのです。小説のダイナミズムのためだけに「あらすじ」から直接執筆することはオススメしません。
私の提唱している「佳境」「結末」を決めてからひとつずつ前のエピソードを確定していく方法。これなら「佳境」「結末」への伏線をどこで張ればいいのかも考えながら創作できます。
本コラム推奨の書き方の場合
本「小説の書き方」コラム推奨の「企画書」「あらすじ」「箱書き」「プロット」を経る書き方をしていて、それでも「プロット」から執筆している段階で「こうしたほうが面白くなるんじゃないかな」と思ってしまったら。
ない話ではありません。
その場合「箱書き」まで戻って、どんなシーンを追加したいのか変更したいのかを書き出します。
すでに執筆が進んでいるため、「箱書き」から「プロット」を決めるまでに時間がありません。
毎日連載なら、執筆する時間の他にルート変更に伴う「箱書き」「プロット」の確定を最低でも翌日書くぶんだけでも決めておく必要があります。
毎日連載のためにはかなり危うい綱渡りを強いられるのです。
この緊張感が忘れられずに、必要もないのに以後の作品でもルート変更をしてしまう書き手の方もいらっしゃいます。
もしエピソードそのものを変更しなければならなくなったら、「あらすじ」まで戻る必要があります。こうなると毎日投稿を続けられなくなるのです。
その場合は毎日投稿にこだわらなくてもいいでしょう。
納得の行くまで「あらすじ」を練り直し、「箱書き」「プロット」までを決めてから再度執筆と投稿を繰り返していくことになります。
とにかく何作か本コラムの推奨する「企画書」「あらすじ」「箱書き」「プロット」の順に決めていって、書き上げてみてください。
そうすればイレギュラーな「こうしたほうが面白くなるんじゃないかな」ということも思わなくなります。そのくらい緊密な「プロット」が作り出せるのです。
それでも「せっかく思いついたのに」と考えたら、ネタ帳に書いておきましょう。
次回作でそれを書けばいいのです。なにも今書いている作品で無理やり書き加える必要はありません。
プロットを超える
それでも「プロット」を超える展開をしたい場合。
まずこれだけは言っておきます。
絶対に後悔しないでください。
あなたはすでに完璧な「プロット」を持っているのに、それを壊して超えていこうとしているのです。
そのときの勢いだけで完璧な「プロット」を壊すのだと改めて自覚しましょう。
そういう意志を固めてから、完璧な「プロット」を壊していきます。
まずこれまで想定していた「佳境」と「結末」が使えなくなるかもしれません。というより、使えるように戻ってくる展開を考えるのは至難です。
だからこれまでの「佳境」と「結末」は使えないものと思ってください。
思い入れのある「佳境」と「結末」をどうしても使いたいのなら、「プロット」は変更しないようにしましょう。
「プロット」を超えるには、豊富な経験が必要です。
物語の筋を変えてしまうため、どんな展開になるのか初心者にはわからなくなります。
書き慣れている書き手なら、どんな展開になりそうか予測できるのです。
予測できたら、それに合わせて「あらすじ」「箱書き」「プロット」を修正していきます。
当初想定していた「佳境」「結末」は使えないことが多いのですが、次作に持ち越せる場合もあるので保存しておきましょう。
変更する場所が物語の前半にある場合、大量の書き換えが必要になります。
「佳境」を変更すると物語のキモが置き換わるのです。バトル小説なら腹部への前蹴りで倒していたものを、後頭部やの上段回し蹴りで倒すことに変えます。この程度なら本筋から離れることはまずありません。しかし当初はこちらが勝つ予定だったのに、負けることに変更した場合は「結末」の大幅な改定が必要になります。勝者で終わるはずが敗者で終わるのです。「結末」が異ならないはずはありません。
「ハッピーエンド」で終わるはずが「バッドエンド」になるのです。
それまでの展開で「負けるはずがない」と思わせていたのに「負けて」しまう。
衝撃的な展開ですが、「なぜ負けたのか」の説明がなければ読み手が納得しません。
もしそれまでの展開で「勝ち負け五分五分」という状況で「佳境」が変わるのであれば、読み手は「負けることもあるよな」と納得できます。
だからこそ「負けるはずがない」のに負けた場合、「なぜ負けたのか」の説明を尽くさなければならないのです。
最後に
今回は「プロットを超える」ことについて述べました。
本コラム推奨の執筆法なら「プロットを超える」必要なんてありません。
それでも魔が差して「変更したい」と思ったら、「プロット」を何度も読み返して「実現可能か」を検討してください。
わずかな変更であれば「プロット」レベルで対応可能ですが、物語の筋を変えてしまうのであれば「あらすじ」まで遡る必要があります。
できそうだと判断したら、「あらすじ」まで遡って変更し、直ちに新たな「箱書き」「プロット」を書いてください。
毎日連載を続けつつ、変更した先の展開を毎日決定していくのはギリギリの作業になります。
その切迫感がクセになって、毎回「プロットを超える」ようになる書き手もいるのです。
そんな中毒症状に陥ることなく、物語がもっとよくなるにはどうすればいいのか。
それだけを追求しましょう。