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三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
中級篇〜少しわかってきたら、ちょっと意識してみましょう
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50.中級篇:道具をキーアイテムに

 物語には芯になる「キーアイテム」があると断然盛り上がります。

道具をキーアイテムに


 小説ではえてして「道具」が物語の重要な役割を担うことがあります。いわゆる「キーアイテム」です。

『桃太郎』にはきび団子、『浦島太郎』には玉手箱、『花咲かじいさん』には愛犬の遺灰、『水戸黄門』には三つ葉葵の印籠のようなものですね。西洋だと『アーサー王伝説』の試しの剣カリバーン(のちに湖の妖精から「エクスカリバー」を授かります)、『聖書』の禁断の果実、『シンデレラ』のガラスの靴、『白雪姫』の毒リンゴ、『ポパイ』のほうれん草などいろいろ思い出せますね。

 マンガですと桂正和氏『ウイングマン』で、書いた夢が現実になるドリムノート、逆に大場つぐみ氏&小畑健氏『DEATH NOTE』で名前を書かれたら必ず死ぬデスノートはとくに有名です。

 北条司氏『CITY HUNTER』で主人公の冴羽リョウが持つコルト社製のパイソン357マグナムという拳銃(略してコルト・パイソンといいます)も欠かせません。

 ライトノベルにしても賀東招二氏『フルメタル・パニック!』のラムダ・ドライバ、川原礫氏『ソードアート・オンライン』のナーヴギアはとくに有名な道具です。




キーアイテムは欠かせない

 皆様がいつも読まれている小説でもなにがしか「道具」が「キーアイテム」になっていると思います。

 逆説でいうと「読まれる小説にはキーアイテムが欠かせない」ということです。

 あなたの書いている小説に「キーアイテム」はあるでしょうか。

「キーアイテム」といってもバラの花やナイフなどの小道具から、背景や木々山々などの書割(風景・気候・場所)や家具や乗り物などの大道具を含みます。

 さまざまなレベルで道具が「キーアイテム」として重要視される。小説にはこれが求められるのです。




キーアイテムが伏線になる

 小説は「主人公がどうなった」かを書いた文章であることはすでに述べました。ならば「キーアイテムによってどうなった」かという結末も思い浮かぶのではないでしょうか。

『シンデレラ』ではガラスの靴がきっかけで王子様と再会して結婚まで行きますし、『浦島太郎』では乙姫から受け取った土産である玉手箱を開けたことで鶴になって乙姫と一緒になるという説もあります。(単におじいさんになっただけという説も残っています)。

 つまり結末を導くための伏線として「道具」を使うわけです。

「道具」が「キーアイテム」となったとき、それは「伏線」になります。


 長編以上の小説には「伏線」が不可欠です。

 しかしいきなり「伏線を張れ」と言われてもどうすればいいのかわからない書き手が多いと思います。

 そのときは「道具」を「キーアイテム」にする、という単純な仕掛けを用意してみましょう。

 たったそれだけで「伏線」は完成します。


『桃太郎』のきび団子のように、話をスムースに進めるために用いられる道具もあります。

 もし桃太郎にきび団子がなければどうなるか。

 犬・猿・雉をすんなりと仲間にできないため、仲間を揃えるのにかなりの遠回りをしなければならなかったはずです。

 利害関係のない者を仲間に加えるのはかなりの難題です。

 きび団子があればこそ、それを欲しがる犬・猿・雉に「これから鬼の征伐に向かうから、付いてくるならきび団子をあげよう」と提案してこの難題を引き受けさせます。

 まぁきび団子と鬼の征伐にはかなり程度の差があるため、物語でなければこのような取引は成立しないと思われますが。


「キーアイテム」は「伏線」になります。

 本来描写する必要のない道具が「明らかに」描写されている。それ自体が伏線なのです。

 ミステリーの場合は読み手を誤った思考に陥れるミスリードにも用います。

 その伏線をどう生かすかが書き手の持ち味といえるでしょう。




キーアイテムがないと

 古くから語り継がれている物語には、作品を代表する道具が一つはあるものです。

 一つもない物語を数えあげるほうが難しいと思います。

 物語をドラマティックにするために道具が用いられているのです。


 であれば、小説にもそれを代表する道具が一つはなければなりません。

 あなたの書いている小説に「キーアイテム」となるような道具があるでしょうか。これが案外ないものなのです。

「キーアイテム」のない作品は話がぐだぐだになることが多いのです。


 三百枚の長編小説では一つの「キーアイテム」が芯を貫いていることがブレない小説に繋がります。

 連載小説でも「キーアイテム」を巡って駆け引きが行なわれるようにするだけで断然面白くなるのです。

「キーアイテム」を用いない理由はありませんよね。




商業作品だと

 このコラムで何度も引用しているマンガの鳥山明氏『DRAGON BALL』でも孫悟空が天下一武道会に出るまでの主人公はブルマでした。

 彼女が孫悟空とともに「キーアイテム」である「ドラゴンボール」を集めるのが目的だったのです。

 その過程が楽しくて読者は作品に夢中になりました。

 しかしその後の展開で、せっかくの「キーアイテム」も「人を生き返らせる」ための「ご都合主義」アイテムと化してしまい、作品の中では埋もれていってしまいました。

 バトルマンガとしては成功したといえますが、それは本来鳥山明氏が想定していた成功だったのでしょうか。

 もしバトルマンガ化していなかったら今日までの人気は出なかったのは事実でしょう。

 しかし描きたいものと描かなければならないものが乖離した状態で連載を続けなければならなかったのだとすれば、鳥山明氏が哀れに思えてきます。


 商業ベースの物語は書き手だけで成り立つことはほぼありません。

 担当の編集さんが付いて彼らとの共同作業として作品は作られていきます。

 だから書き手が書きたいものを自由に書かせてはもらえません。

 商業の書き手を目指す人はそのことを肝に銘じるべきだと思います。




小説投稿サイトだと

 その点小説投稿サイトに投稿する小説は書き手が自由に書けるメリットがあります。

 商業ベースではありませんから担当編集さんから先々の展開を指示されることもないのです。

 だから小説投稿サイトに掲載されている小説はかなり自由な書き方をされています。

 一文改行スタイルだったりスレッド形式だったり。

 物語の展開も混沌としています。いつ終わるとも知れない連載も多いのです。

 そんな中でも「キーアイテム」をしっかりと明示している小説は読み手に広く受け入れられます。

「キーアイテム」を巡る登場人物の駆け引きが面白みを増してくれるからです。

「キーアイテム」があればそれだけで小説はぐっと面白くなります。




キーアイテムは題名に使える

 また物語を代表する「道具」「キーアイテム」を設定してあると、題名に迷ったとき「キーアイテム」をそのまま題名にできるので便利です。

『DRAGON BALL』『DEATH NOTE』も「キーアイテム」の「ドラゴンボール」「デスノート」がそのまま題名になっていますよね。

 J.R.R.トールキン氏『指輪物語』もやはり「キーアイテム」の「指輪」が題名になっているのです。

「キーアイテム」があればかなり有利になる一例といえます。





最後に

 今回は「道具」について述べてみました。

 道具といっても小道具から大道具、仕掛けまでさまざまなものがあります。

 その中で物語をブレさせないために「キーアイテム」を作るべきです。「キーアイテム」があればそれだけで物語は面白くなります。

 「キーアイテム」をどこまで使いこなせるか。それが小説の出来不出来を左右することも多いのです。

 ぜひ有効に活用しましょう。




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