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三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
発想篇〜アイデアが思いつかなかったら
455/1500

455.発想篇:危険な状況に置く

 今回は主人公を「危険な状態に置く」ことについてです。

 平穏な作品にも魅力はありますが、やはり主人公が危ない状況に陥ると物語が面白くなってきますよね。

危険な状況に置く


 主人公に出来事を起こさせようとしても、どんな出来事がいいか発想できないことがあります。

 とくに初めて小説を書こうという人は必ず悩むでしょう。

 読み手が食いつくほどの小説を書こうと思えば、まず考えたいのが主人公を「危険な状況に置く」ことです。




危険な状況なら安全を求める

 人は「危険な状況に置かれる」と「安全を求めよう」とする傾向にあります。

 どうにかして危険を脱して、安全になろうとするのです。

 だから物語を先に進めやすくなります。


 マンガの大場つぐみ氏&小畑健氏『DEATH NOTE』の主人公・夜神月は、死神のノート「デスノート」を手に入れてから犯罪者を次々と心臓麻痺で殺害していきます。そして正体不明の殺人者「キラ」の二つ名がつくのです。

 そんな月の前に、世界最高の探偵である「L」が立ちはだかります。

 「L」はTVを通じ「世界同時中継」と称して「キラ」に挑戦状を叩きつけるのです。

 すると月は画面に映る「L」を心臓麻痺で殺します。

 しかし心臓麻痺で死んだのは「死刑囚」であり、本物の「L」ではありませんでした。

 そしてこの事態により「キラ」が日本に住んでいることを突き止められます。

「L」は警察関係者の中に「キラ」がいると断定して、FBIに日本警察幹部の家族から内偵を始めさせるのです。

 監視がついたことに気づいた月は、策を用いて監視者の名前と顔を手に入れ、後日「L」の指示を受けていたFBI職員をすべて殺害してから月の監視者を殺しています。

 これにより「L」はFBIが監視していた数少ない人物の中に「キラ」がいると断定し、とくに天才的な頭脳を持つ夜神月を「キラ」の第一候補に挙げたのです。

 このように「デスノート」を手に入れてからの夜神月は、「L」が仕掛けた策に次々とハマって危険な状況に陥っています。

 月はその状況を、天才的な頭脳で切り抜けて安全を手に入れるのです。

 しかしそれは「L」を自分に引き寄せることになります。

 そして始まる「キラ」と「L」の直接対決において、両者の策略が複雑に交錯して、月が次第に追いつめられていくのです。

 月は当初身の安全を図ろうとしますが、「L」に追い詰められると「Lを始末する」ことに注力するようになります。

「L」にあれだけ迫られれば、「安全を求める」ためには「Lを始末する」以外に手がなくなったのでしょう。

 「危険な状況に置かれる」と「安全を求めよう」とする傾向をうまく活かした演出といえます。




背水の陣

 戦場で背後に水辺を抱えていると、退路がなくなります。

 つまり逃げ場がなくなるのです。

 古代中国・漢の韓信はあえて水辺を背後に布陣することで、味方の兵士に「敢闘しなければ生き残れないぞ」というプレッシャーをかけました。

 その結果、漢軍の士気は高まり、倍する精強な楚軍を蹴散らしたのです。

 このような、あえて自ら身を「危険な状況に置く」ことによって、極限の集中力を引き出そうとすることを「背水の陣」と呼ぶようになりました。

「危険な状況に置かれる」と「生を求めて敢闘する」わけです。

「安全を求めよう」とは若干意味合いが異なりますが、基本は同じだと思います。


 マンガ・車田正美氏『聖闘士星矢』でドラゴン紫龍は最強の硬度を持つとされる聖衣をあえて脱いで戦うことで不退転の決意を持って黄金聖闘士に挑んでいったのです。


 ただし「背水の陣」を布いているような状況を相手に見せつつ、逆に相手をその場に追い込む戦術もあります。

 田中芳樹氏『銀河英雄伝説』において、ヤン艦隊はブラックホールを背に布陣して「背水の陣」をとりました。

 しかしこれは擬態です。

 対戦したシュタインメッツ艦隊は包囲して艦砲射撃でヤン艦隊をブラックホールへ追い落とそうとします。

 ヤン艦隊はシュタインメッツ艦隊へ中央突破・背面展開の戦術を駆使して、逆にシュタインメッツ艦隊をブラックホールへ追い落とす好機を作り出したのです。

 このままでは中央を厚くして中央突破を許さない前面のヤン艦隊、背面のブラックホールに挟まれて壊滅は免れないと判断したシュタインメッツは、ブラックホールの重力を用いた「スイングバイ」を使ってその場から撤退することにからくも成功しました。

「背水の陣」をそのまま用いなかった点で、田中芳樹氏は戦術の幅広さを読ませてくれました。




虎穴に入らずんば虎子を得ず

「危険を冒さなければ大きな成功は得られない」という意味の故事成句が「虎穴に入らずんば虎子を得ず」です。

「背水の陣」に似ていますが、こちらは大物を得るために自ら危険を冒すこと、「背水の陣」は退路を断つことによって味方の敢闘精神を高めること、と違いがあります。

 最初から大物を得るために危険な行動を起こすのが「虎穴に入らずんば虎子を得ず」です。


 映画『007』シリーズの主人公ジェームズ・ボンドは、ラスボスを倒すために変装して敵のひとり(たいてい美女)に取り入ります。

 当然危険は付き物です。

 ですが敵のひとりを内通者に仕立てることでジェームズ・ボンドはラスボスへと近づいていきます。

 そしてギリギリの闘いでラスボスを倒し、美女を侍らせて「THE END」です。

 こう見ると「美女」を手に入れるために、悪の組織を壊滅させるようなイメージを持ってしまいますよね。

 そのくらいジェームズ・ボンドはイケメンだということです。(フォローになっていませんが)。





最後に

 今回は「危険な状況に置く」ことについて述べてみました。

「安全を求める」ため、「敢闘精神を引き出す」ため、「虎穴に入らずんば虎子を得ず」なため。

 それぞれに違いはありますが、基本的には「今より自分が得をする」ために「危険に挑み」ます。

 平穏な日常ばかりが続くような小説を書いてしまいがちな書き手にこそ、憶えてほしい発想法です。




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