452.発想篇:現世の物を別世界に持ち込む
今日は「現世の物を別世界に持ち込む」ことについてです。
「剣と魔法のファンタジー」の世界に「エレベーター」を持ち込んでみると面白いかも。
そんなことが実際にあります。ゲームのSir−Tech社『Wizardry』には「剣と魔法のファンタジー」でありながらも「エレベーター」が存在します。
現世の物を別世界に持ち込む
「異世界ファンタジー」はおおかた「剣と魔法のファンタジー」ですが、なにもかも魔法で成立させようとすると、発想の泉が尽きてきます。
そこで、現世の物を異世界に持ち込んで、発想を豊かにしてみましょう。
たとえば異世界に「エレベーター」「エスカレーター」があったとしたら。
動力が電気というのは「剣と魔法のファンタジー」にそぐわないと思いますので、魔法の動力によって動くように設定を変えます。
つまり「魔力で動くエレベーター」「魔力で動くエスカレーター」を作るのです。
こんな簡単な発想法で、多彩なアイテムを創ることができます。
異世界にLINE
そういった意味では、「異世界ファンタジー」に「LINE」があってもまったく問題ありません。
今までそんな「異世界ファンタジー」はあったでしょうか。
最近では冬原パトラ氏『異世界はスマートフォンとともに。』のような作品もあります。
そのうち「異世界でLINE」ができる日も来るのではないでしょうか。
まぁさすがに「LINE」という名称は商標権があるので使えません。
ですが同じ機能を別の名前で出すというのは、どの著作物もやっていることです。
そうなると異世界人はなにがしかの「媒体」を持っていることになりますよね。
それが現実世界の「スマートフォン」や「タブレット」などのように、さまざまな情報にアクセスできるようになっていたら。
ちょっと面白い世界が創れそうですね。
少し前の「異世界ファンタジー」では「電話」のようなマジックアイテムを登場させたものがありました。タイトルは忘れてしまいましたが。
たとえば遠隔地と会話ができるマジックアイテムは、魔法を舞台とした封建社会には必須ではないでしょうか。もちろん国宝級のお宝アイテムとしてですが。
そして『異世界はスマートフォンとともに。』が生まれましたから、これからの異世界には「スマートフォン」「タブレット」は生活必需品になっている可能性も否定できません。
以前「時代を映す鏡」として小説の可能性に言及しましたが、今の時代に書かれた小説は、今の時代を投影した作品となるのが一般的です。
携帯電話市場の半数以上が「スマートフォン」となった現在。
これから書かれる「異世界ファンタジー」には「スマートフォン」のようなマジックアイテムを皆が持っていてもおかしくありません。
これから流行りそうなマジックアイテム
この先、流行りそうなマジックアイテムは「AIスピーカー」「ドローン」「VR」といったものでしょうか。
「AIスピーカー」なんて、現実に使ってみるとまるで自分が魔法使いになったかのような体験を味わえます。
声ひとつで電気をつけたりエアコンを切ったりとリモコンを使わず家電が動かせるのですから、まるで魔法を使っているような感覚がするのです。
であれば「異世界ファンタジー」に「AIスピーカー」があっても不思議ではない。
むしろ魔法使いは皆「AIスピーカー」をつねに持ち歩いてもいいくらいです。
「ドローン」は偵察としてもオトリとしても使えます。
これらは今までフェアリーのような小型妖精の役割でしたが、「ドローン」のようなマジックアイテムがその役割を果たしてもいいでしょう。
なにより「安全に偵察やオトリに使える」というのは利便性が高く、応用も幅広いと思います。
また荷物を運ばせるアイテムとしても使えるので、『三国志』で諸葛孔明が発明したと言われる「木牛流馬」は「ドローン」と言えなくもないですね。
「VR」は今多くの書き手が「VRMMO」という形で用いています。
しかし「異世界ファンタジー」の中に「VR」を直接持ち込むパターンも「あり」なはずです。
今までその発想がなかった方も、本コラムをお読みいただいたのでアイデアのひとつになりましたよね。
「VR」については水野良氏『魔法戦士リウイ ファーラムの剣』の最終巻『魔法の国の魔法戦士』において、魔精霊アトンを倒すためのマジックアイテム「ファーラムの剣」が主人公リウイに課す試練という形で「VR(仮想現実)」が出てきます。その内容の詳しい描写はありませんでしたが。
このように時代の最先端を行く科学技術を「異世界ファンタジー」に持ち込んでみましょう。
「その発想はなかった」ではなく、「この技術を持っていったら」と考えてみるのです。
現世にあるアイテムは持ち込める
極端な話、現世にある道具や装置はすべて「異世界ファンタジー」に持ち込めます。
銃器たとえば拳銃、ピストル、マシンガン、ライフル、バズーカ砲、ロケットランチャー、カノン砲などの火薬式の兵器だって「異世界ファンタジー」に出すことができるのです。
世間で話題の北朝鮮が保有する弾道ミサイルだってあっていい。
核兵器があってもいい。
「異世界ファンタジー」に「合わない」ものなどありません。
現世のアイテムはなんでも「異世界ファンタジー」に持ち込んでしまいましょう。
実際問題、中世ヨーロッパの末期には、火縄銃・マスケット銃が登場して騎士が身に着ける全身プレート鎧を貫通するようになったため、いっぺんに防具が軽装となりました。
その証拠に、中世末期を描いたアレクサンドル・デュマ氏『三銃士』に登場する人物は、急所を分厚い金属プレートで覆っている以外、軽装で動きやすい鎧を着ているのです。
最後に
今回は「現世の物を別世界に持ち込む」ことについて述べてみました。
異世界だけにとどまらず、宇宙などのSFにも現世のものを持ち込むことができるのです。
もちろん現世のものをSFに持ち込むと、とても古びた技術になってしまいます。
ですが現世の「最先端技術」や「理念」だけのものを、さも当たり前のように使っているさまを読ませるだけで解決です。
現世で普及していないものが普及しているからこそ「空想科学(SF)」と呼ばれます。
だからこそ、小説を書くのなら「最先端技術」や「理念」を知識として持っている必要があるのです。
勉強もせずによい小説が書けることなどありません。
つねに最先端の技術を収集するクセをつけましょう。