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三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
発想篇〜アイデアが思いつかなかったら
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451.発想篇:複数のテーマを一度に解決させる

 今日は「ワンテーマ」とサブテーマの同時解決についてです。

 サブテーマを解決させる過程を読むことで、「ワンテーマ」も解決させると読み手の満足度が高まります。

複数のテーマを一度に解決させる


 小説は「ワンテーマ」が基本ですが、サブテーマがいくつか設定されている小説も少なくないですよね。

 その場合「ワンテーマ」を解決させるときにサブテーマも同時に解決させられないかを考えてみてください。

 文学小説では考え方が逆で、本当に訴えかけたい「ワンテーマ」を解決させるために、あえて異なるサブテーマを解決させます。

 サブテーマ解決の過程を読ませることで、「ワンテーマ」を暗示的に解決させる手法を用いるのです。

 まぁ私も文学小説にそれほど詳しいわけではないので、ライトノベルやマンガやゲームから見ていきましょう。




ソードアート・オンライン

 川原礫氏『ソードアート・オンライン』(『SAO』)の1巻〜2巻は「アインクラッド編」です。

 シリーズ通しての主人公であるキリト(桐ヶ谷和人)はあることをきっかけに人付き合いを厭い、日々VRMMORPGに勤しむようになります。

 そしてベータ版から正規版が開始された「ソードアート・オンライン」をプレイすべくナーヴギアを身に着けてダイブしていくのです。

 そうして集められた一万人は、誰かが浮遊城アインクラッド全百層を攻略しないかぎりログアウトできない、またゲーム中に死んでしまうと現実世界でも死んでしまう「デスゲーム」へと強制参加させられます。

『SAO』における「ワンテーマ」は「人間関係のたいせつさ」であり、サブテーマが「生きてデスゲームを攻略する」ことです。

 ですが『SAO』はサブテーマ「生きてデスゲームを攻略する」ことに注視しつつ、キリトをさまざまな状況に置いています。

 あるときは他プレイヤーと協力し、あるときはパーティーを離れて単独で攻略していくのです。

 とくに最強ギルド「血盟騎士団」の副団長アスナとの関係は、キリトに「人間関係のたいせつさ」を刻みつけるほどに強固なものがあります。

「ソードアート・オンライン」ゲーム内でキリトとアスナは結婚し、AIのユイを娘として迎え入れて、しばし結婚生活を楽しんだのち二人は第七十五層の攻略へ向かいます。

 これは二人の心に「いつ死んでも悔いはない」という覚悟を固めさせたと言えるでしょう。

 そしてキリトがヒースクリフの正体を看破したことにより、キリトとヒースクリフによる全プレイヤー解放を賭けた一対一の「デュエル」が始まるのです。

 キリトがこの「デュエル」を奇跡的にとはいえ勝利したことによって、浮遊城アインクラッドは第七十五層攻略時点でサブテーマ「生きてデスゲームを攻略する」ことを達成しました。

 これで『SAO』はひとつの終局に到達したのです。

 サブテーマを達成した頃には「ワンテーマ」である「人間関係のたいせつさ」をアスナとの交流によって描ききっています。

 こう書くと「『SAO』は「生き残ってデスゲームを攻略する」ことが「ワンテーマ」で、「人間関係のたいせつさ」がサブテーマではないのか」という方がいらっしゃるでしょう。

 しかしすべての小説において、「ワンテーマ」は「人生に関係するもの」と規定されています。

 つまり「生き残ってデスゲームを攻略する」ことは「人生に関係するもの」ではなく、ひいては「ワンテーマ」とは呼べないのです。

「人間関係のたいせつさ」は「人生に関係するもの」であるため、「ワンテーマ」となりえます。

 つまりどちらが「ワンテーマ」で「サブテーマ」なのかは一目瞭然なのです。




ウイングマン

 マンガの桂正和氏『ウイングマン』を見てみましょう。

 主人公の広野健太は「無敵のヒーローであるウイングマンになりたい」という夢を抱いた中学生でした。

 帰宅時に突如謎の美少女が意識を失った状態で健太に降りかかってきます。

 美少女は異世界ポドリムスの住人であるアオイです。

 健太は彼女が持っていたノートについウイングマンの絵と変身するときのかけ声「チェイング」を書いてしまいます。

 そうしてからいつものように「チェイング」と叫ぶと全身を激しい苦痛が襲ってくるのです。

 痛みがとれたとき、健太はウイングマンの姿に変身していました。

 アオイが持っていたノートは「ドリムノート」といって「書いたものが現実のことになるノート」なのです。

 そして健太は「ドリムノート」を狙うポドリムスのリメルからノートとアオイを守るためにウイングマンとして戦うことになります。

 しかしウイングマンに変身したものの武器もないし体力もない。

 健太の思い描いた「無敵のヒーロー」には程遠い状態です。

 そこで健太は体力の強化と技の開発に勤しむことになります。

 とここまで書いたらたいていの方が「無敵のヒーローであるウイングマンになりたい」が「ワンテーマ」のように感じられますよね。

 実際には「すべてを懸けてでもたいせつなものを守りたい」という想いのほうが「ワンテーマ」なのです。

 これは『ウイングマン』のラストに明確な形で示されています。

 サブテーマである「無敵のヒーローであるウイングマンになりたい」によって、健太はリメルやライエルといった巨悪を倒し、正真正銘「無敵のヒーロー」となったのです。

 しかしそれが悲劇を呼びます。

 その悲劇を克服すべく健太は手を尽くすのです。

「すべてを懸けてでもたいせつなものを守りたい」という「ワンテーマ」が如実に表れた部分であり、このシーンがあるからこそ『ウイングマン』は名作たりえます。

 今は電子書籍で手軽に買えますから、未読の方はぜひ読んでみてください。

 胸を打たれるラストシーンは、感動なしでは語れません。

 これほどのクオリティーを持つアクションマンガはなかなかお目にかかれないでしょう。

 今なら作画レベルだけで言えば、上を行く作品はいくらでもあります。

 しかし物語レベルで言えば『ウイングマン』はとても高い位置にいるのです。

 読んでおいて損はないと思います。





最後に

 今回は「複数のテーマを一度に解決させる」ことについて述べてみました。

 小説は基本的に「ワンテーマ」で書くべきです。

 しかし直接「ワンテーマ」について書くのでは芸がありません。

 サブテーマを解決する過程を読んでもらって、結果として「ワンテーマ」が解決するようにしてみましょう。

 サブテーマは何本あってもよいのですが、あまりに多くなると解決させる「転結」部分が冗長になりやすいので、せいぜい三つくらいまでにしてください。

 そしてサブテーマの解決で「ワンテーマ」も解決させるようにするのです。

 それだけの発想の工夫をすることで、小説はいっそう奥深くなります。

 これまで書いてきた小説が味けないと思っているのなら、「ワンテーマ」とサブテーマを同時に解決させてみましょう。




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