表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
発想篇〜アイデアが思いつかなかったら
450/1500

450.発想篇:一点豪華主義とクセのある人物

 今日は「テーマをひとつに絞る」ことと「クセのある人物」についてです。

 小説の「テーマ」はただ楽しむだけではいけないことを教えてくれます。

 そして「クセのある人物」を登場させることで、ドラマが生まれるのです。

一点豪華主義とクセのある人物


 小説を書いていると「このテーマを主張したい」「ついでだからあのテーマも入れたい」「それならそのテーマも入れたほうが奥深くなるのではないか」そう考えがちです。

 しかし実際に複数のテーマを入れ込んでしまうと、読み手には「結局この小説はなにを主張したかったのだろう」という疑問だけが残ります。

 そうなってしまえば、あなたの作品が読み手の心に残ることはありません。

 せっかく時間をかけて書いた小説です。

 多くの方に読んでもらい、心に残る作品にしたいですよね。




主張するテーマはひとつだけでよい

 テーマが複数あると結局なにが言いたいのか読み手に伝わりづらくなります。

 戦争ものを書こうとするなら「戦争は合法的な大量殺戮である」「戦争は両軍が駆け引きするところに魅力がある」「戦争は立身出世の早道だ」「戦争は命の尊さを知らしめる」とだいたいこの四つがテーマとして浮かぶでしょう。

 しかし実際にこの四つのテーマをすべて入れ込んで作品を書いたとしても、ありきたりな小説にしかなりません。

 戦争ものであればすでに多くの作品が同じテーマを採用しているからです。

「小説賞・新人賞」への応募作に戦争ものを書いたとしても、たいていの場合は「で、結局この作品はなにを主張したいのか」という点で不利になります。


 そこで小説に書くテーマはひとつに限定してみてください。

 「ワンテーマ」に特化して小説を書くのです。

 これまで複数のテーマで小説を書いてきた人にとっては不安を覚えるでしょう。

 しかしテーマをひとつに絞り、読み手に「この作品はこれがテーマなんだ」と一読しただけでわかるのは、ひじょうに大きなアドバンテージを得られます。

 もちろん「ワンテーマ」だからといって他のテーマを限定するべきではありません。

 他のテーマの割合を減らして、余ったぶんをすべて「ワンテーマ」にかぶせてしまうのです。

 こうすることでテーマがひじょうにわかりやすいのに、重厚な作品に仕上がります。

 テーマがわかりやすい作品は、「小説賞・新人賞」でのウケもよくなるのです。

「テーマがしっかりしているので、読んでいて安定感がある」と受け取られます。

 一次選考を突破できない人は、まず「ワンテーマ」に絞って作品を書いてみましょう。

 あとはあなたの筆力次第ですが、「ワンテーマ」であればたいてい一次選考はクリアできるはずです。




一点豪華主義

 ここぞという場面は、他の部分よりも枚数を割いて丁寧な筆致で盛り上げてください。

 いわば「一点豪華主義」です。

 小説でいえば「佳境(クライマックス)」を派手に盛り上げましょう。

 盛り上げるべきポイントで盛り上がらないと、読み手はあなたの作品からなにを楽しめばいいのかわからなくなります。

 そのため、小説にはメリハリが必要なのです。

 物語開始時が「メリ」で、「佳境(クライマックス)」が「ハリ」になるようにしましょう。

 開始時の「メリ」の段階から「佳境(クライマックス)」の「ハリ」へつながる「盛り上がりそうな予感」を振り撒いてみましょう。

「起承転結」の「起」の段階から「転」の盛り上がりを予感させなければ、読み手は最後まで読んでくれません。

 読み手や下読みさんは「起」が面白くなければ後は流し読みをするかその場で読むのをやめるかしてしまいます。

 



クセのある人物

 また作中に「クセのある人物」を一人だけ加えてみるのもいいですね。

「クセのある人物」は、数が多すぎるとアクの強い作品になりやすい。

 主人公を「クセのある人物」に設定すると、読み手が感情移入しづらくなります。

「対になる存在」のほうを「クセのある人物」に設定するのが作品をいちばんコントロールしやすいのです。

 ただしその「クセのある人物」を相手にすると、主人公はかなり振りまわされることになります。

 初級の書き手の場合は「対になる存在」も「クセのある人物」にしないほうがいいでしょう。

 初級の書き手が「クセのある人物」を使いこなすには、「第三者」を「クセのある人物」に設定すべきです。

 そして主人公と「対になる存在」の間をその「クセ」で飛び交って出来事(ドラマ)を起こしていくようにします。

 主人公も「対になる存在」もおとなしい人柄なら、「クセのある人物」が出来事(ドラマ)を起こさなければ物語が先に進みません。


 たとえば神坂一氏『スレイヤーズ』は主人公を「クセのある人物」にすることで、出来事(ドラマ)を巻き起こしてそれを解決する物語になっています。

 川原礫氏『ソードアート・オンライン』も主人公のキリト(桐ヶ谷和人)を「クセのある人物」にして、出来事(ドラマ)が起こるように仕向けているのです。

 渡航氏『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』の主人公・比企谷八幡もかなり変わったというかひねくれた人物に設定されています。

 主人公を「クセのある人物」にする場合、どうしても「超人」的な存在になりやすい。

 サー・アーサー・コナン・ドイル氏『シャーロック・ホームズの冒険』の主人公ホームズもかなり「クセのある人物」です。

 アガサ・クリスティ氏『名探偵ポワロ』の主人公ポワロもかなりの変わり者となっています。

 推理ものの場合、探偵役に「クセの強さ」がなければ、淡々と謎を解いていくだけの退屈な展開になってしまうのです。

 横溝正史氏『金田一耕助』シリーズの主人公である金田一耕助もかなりの変人っぷりを発揮していますよね。

 だから推理ものは主人公の探偵がかなりの「クセモノ」として扱われることが多いのです。


「対になる存在」を「クセのある人物」にすると、主人公が振りまわされることになります。

 たとえばマンガの高橋留美子氏『うる星やつら』の「対になる存在」ラムは「雷様」の格好をした宇宙人です。

 そのため無類の女好きだった主人公の諸星あたるが、「対になる存在」のラムに見初められてさんざん振りまわされてしまいます。

 同じ高橋留美子氏のマンガ『めぞん一刻』の主人公である五代裕作は、「対になる存在」の一刻館管理人・音無響子に振りまわされるのです。

 裕作が響子にモーションをかけてもピンぼけの空振りに終わることが多いのに、他の女性と親しくしているとやきもちを焼いてきます。

 たとえば物語の「佳境(クライマックス)」で、裕作が勇気を振り絞って響子に「俺のために味噌汁を作ったください」と言ったら、その場で味噌汁を作って出してくるくらいの天然です。

 響子へ婉曲に物事を伝えても、額面どおりの反応しか返ってきません。

『めぞん一刻』は周りを固める「第三者」もかなり「クセのある人物」です。

 一刻館に限っても一の瀬花枝、四谷、六本木朱美が毎夜のごとく裕作を宴会に巻き込みます。

 裕作が響子といい感じになっているのに、場の空気を読まず宴会へ連れ出したことも一度や二度ではありません。

 主人公の裕作だけがある程度まともで、他は「クセのある人物」で固めています。

 だからこそドタバタ喜劇が長く続くこととなったのです。


 主人公も「対になる存在」もまともなのに、「第三者」が「クセのある人物」である作品は意外と多いと思います。

 マンガ・桂正和氏『I”s(アイズ)』でも主人公の瀬戸一貴と「対になる存在」の嘉月伊織はまともな人物です。

 そこに秋葉いつき、そして磯崎泉が二人の間を引っかきまわします。

 また同級生の寺谷靖雅、越苗純、森崎祐加、川崎美代子といった一見まともそうなのに、予想外の事態を巻き起こして二人を近づけたり遠ざけたりするのです。

 そしてイサイプロのカミノギイサイや古川リエが一貴を伊織から引き離そうと画策します。




小説にはドラマを

 このように主人公も「対になる存在」もまともであれば、物語は平穏で波立たない、まったく魅力のない作品になってしまいます。

 自分の作品がどうも波乱のない平穏な物語だと感じたら、「第三者」に「クセのある人物」を入れてみましょう。

 それだけですべての登場人物が生き生きと躍動してきます。

「第三者」に「クセのある人物」を配することで波乱に満ちた物語が生まれるのです。

 つまり「ドラマティック」になります。

 読み手を飽きさせない物語を作るには、ひとりでもいいので「クセのある人物」を参加させてみてください。





最後に

 今回は「一点豪華主義とクセのある人物」について述べてみました。

 あれもこれもと詰め込むのではなく「ひとつ」のことを豪華にしてみてください。

 読み手にテーマが伝わりやすくなります。

 また物語を魅力的にするために「クセのある人物」を登場させましょう。

 「クセのある人物」が出来事を巻き起こすことで、物語は「ドラマティック」になります。

 このちょっとした発想法を知っていれば、伝わりやすく魅力的な作品が必ず書けるようになりますよ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ